中庭のある家

 

 

■新婚家庭のための小住宅              ■12年後の増築

新婚家庭でまだ子供がいないので、30坪程度の小規模な住宅の希望であった。
共有スペースの他に二つの個室を今回予定し、家族構成の変化に対応した子供部屋の増築や車庫増築を将来構想に盛り込んだ。

 
敷地は北道路で南北に細長く、配置計画としては南面の日照を十分に確保すること、将来の増築スペースを道路側に確保すること、などを考慮した。

 
南側の空地距離は現況の周辺建物の日影をチェックして、冬至でも計画建物の1階床面に影が当たらないように計画した。

平面計画では、細長い敷地形状の特徴を生かして中庭を設け、それを挟んで南北2ブロックに分けて計画した。
中庭に面して玄関を配置し、南側は平屋建てにしてLDKなどの共有スペースをとり、北側は2階建てにして寝室と子供部屋を計画した。

 

玄関戸を開けると、ホール正面にある窓からは中庭の植栽がよく見える。明るい玄関を希望していた建築主にとって、満足のいくものになったと思う。

この中庭の植栽は和室や寝室、子供部屋からもよく見える。
とりわけ2階の寝室やベランダからは手に取るように眺めることができ、季節の変化と共に成長を身近に感じ、楽しむことができると思う。

 

日当たりの良い南側に居間、食堂、キッチンをとり、居間に続いて4.5畳の和室を配置した。


中庭を挟んで寝室・子供部屋を配置することで、各室への日照を確保すると共に風通しも良くなっている。

 

併せて、中庭を通して寝室と子供部屋の気配を察することもでき、ブロック分けによる適度な距離の確保と同時に一体感を持てる住宅になっている。

和室は、普段は3本引き戸を開けて居間と一緒に使うことができ、来客の時は閉めれば独立して廊下から出入りできる客間にもなる。
工事中にも感じていたことだが、中庭に抜ける風通しは特に良く、出来上がってより一層快適性を実感できた。

 

居間・食堂については天井を屋根勾配に合わせて勾配天井にしている。壁は真壁にして柱を表し、露出された小屋組と共に木の質感を楽しめる空間を創造している。

 

ベランダは2階の個室専用の屋外スペースとして、部屋の延長として使えるように工夫してある。

ベランダの南側は、小屋裏物入れのある屋根が手摺壁を兼ねて立ち上り、西側の手摺壁と共に視線を遮り、風を和らげてくれる。

東面は格子の手摺により中庭に開放されていて、季節によりふんだんに日射を取り込んだり、緑陰の快適性を味わうことができる。

この住宅は木造の軸組工法で計画し、木の素材感の出た木造の良さを実感できる住宅が目標であった。
露出度の多い木構造を手間を惜しまず丁寧に仕上げてくれた大工さんと、手際よく指示を出してくれた監督さんに感謝したいと思います。

そして、小住宅でありながら、このように変化に富んだ質感豊かな住宅ができたのは、立地条件の良さにもまして、建築主の理解があったからだと思います。

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