エジプトリクガメ



 オレンジ色に近い黄色の背甲は均整のとれたドーム型で、いかにも「リクガメ」と言う姿をしています。
 ただし、リクガメの「大きい」と言うイメージとは逆に、最も小型のカメの一つです。

 背甲の色彩は、産地によって若干の違いがあり、淡い黄色のものから、濃いオレンジ色のものまで様々です。これは、生息地の土の色に関係があるようです。砂漠地帯のオアシス周辺に棲むかれらは、周囲の砂の色に近い保護色をしていると思われます。同様の色彩パターンが、「アラブギリシャガメ」にも当てはまるようです。

 エジプトリクガメの特徴の一つに腹甲に「ヒンジ(蝶番)」を持ったリクガメであることがあげられます。明確なヒンジのあるリクガメは非常に少なく、殆どが小型種のようです。
 同属のギリシアリクガメにも同じ位置にヒンジがありますが、ほんの僅かに動くだけなので、ギリシアリクガメの腹甲にヒンジのあることを知らない飼育者も多くいます。
 エジプトリクガメのヒンジは腹甲の腹甲板(abdominal)と股甲板(femoral)の間にあり、かなり大きく動かす事ができます。彼ら(彼女ら)は、体の大きさに比べて大きな卵を産みます。このためにヒンジが無い(動かない)と卵が産めないとの推測もできます。

 エジプトリクガメは飼育が非常に難しいカメだと言われ続けてきました。特に、飼育下でのエサ喰いの悪さは折り紙付きで、死なせてしまう最大の要因は餓死ではなかったかと思います。
 数年前に発見したのですが・・・
 このリクガメは、決してエサ喰いの悪いカメではありませんでした。
 餓死させた最大の理由は、「食べたい時間にエサが無い。」もしくは「食事の時間が与えられない。」ということだったのです。
 彼らは、日中の気温が非常に高くなる地域に住んでいるため、この酷暑の日差しを避けるために早朝の涼しい時間帯だけ活動していたのです。それ以外は殆ど物陰に隠れて眠っているということだったのです。しかし、飼育下でエサを与えられる時間は、日が昇って明るくなってからが多く、食べなければそのエサはかたづけられてしまい、食べることが出来ないのです。また、室内の日当たりの悪い場所で飼育される場合は、「照明器具」で太陽の代用がなされるため、「夜」から、いきなり「昼」になってしまうために活動時間が無くなってしまって、結果、絶食状態に陥って行ったわけです。
 この事に気が付いて、飼育方法を変えたところ、非常に飼育しやすいカメであることが判りました。

 しかし・・・。

 時すでに遅し。環境破壊なのか?内戦の余波なのか?北アフリカの野生のエジプトリクガメの個体数は風前の灯火となり、SITESTになってしまっていました。現在では、ヨーロッパの動物園かファームで殖やされた養殖個体が売買されるのみです。一度の産卵で1〜2個しか産まない彼ら。永久に「希少なカメ」になってしまったと言うことなのです。
関連ページ [ギリシアリクガメ]
 



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