「ディスカス エイズ」、「グッピー エイズ」のホントのトコロ。


 昭和の後半から猛威をふるい続けている「ディスカス エイズ」、「グッピー エイズ」。特に、「ディスカス エイズ」には痛い思いをした飼育者も多いことだと思います。
 これらは、感染すると、急速に魚の体力が衰え、次々に死んでいく病気で、既存の治療法がまったく通用しない奇病です。長い間、原因が解らないままでしたが、最近の研究で「ウィルス」が原因であることが解ってきました。
 しかし、原因が「ウィルス」だと解ったところで、問題が解決したわけではありません。ウイルスは、宿主の細胞内で増殖するために、薬品などの対処療法では太刀打ちできないのです。

 これらのウイルスに共通するのは、最初に取り付くのが「腎臓」の細胞であることです。魚類の多くは「腎臓」で血液を生産しているために、腎臓がウイルスに侵されると、急速に「貧血状態」に陥ります。「ディスカス エイズ」に感染すると、エラに異常がないのに非常に呼吸が速くなるのはこのためです。また、血液中の酸素量が激減しますから、各鰭の先端部の毛細血管まで酸素が行き届かず、「壊死」をはじめるのです。「尾腐れ病」と間違うのはこの為ですが、原因がまったく違うことから、投薬しても無駄で、逆に強い薬品を使うと副作用で魚の死を早める結果にもなります。
 ただ、このウイルスそのものは、それほど寿命が長くはなく、魚自信の免疫がフルに働いていれば、およそ2週間で体内から排除されてしまうと言われています。

 したがって、対応策は治療ではなく、検疫を強化するしかありません。
 まず、ウイルスを持ち込まないこと。
 可能性がある時は、最低2週間、できれば1ヶ月間、他の健康な魚から完全に隔離することです。この時、重要なのは、ほんの僅かな量でも飼育水が混入すると感染が拡大するので、水槽は別の部屋に置き、飼育器具や道具類は絶対に共用しないことです。
 一番簡単なのは、このウイルスについて充分理解したショップで、検疫が完了した個体を買うことだと思います。一般家庭で、これらの検疫作業をするのは、あまりにも大変ですから。

 もう一つ注意!
 ディスカス意外のシクリッドにも「ディスカス エイズ」は簡単に感染します。アピストグラムマやペルビカクロミスにも感染します。
 そこまでは、容易に理解できるのですが、この「ディスカス エイズ」のキャリアが存在しますから注意してください。
 「コリドラス」です。
 彼らは、このウイルスに感染していても、ほとんど発症しません。したがって、外見では安全か否かは判断できませんから、感染の可能性があるシクリッドと混泳しているものは避けることが賢明だと思います。

 「グッピー エイズ」は原因ウイルスの種類が違うものの、「ディスカス エイズ」とほぼ同じ対応が必要だと思います。「グッピー エイズ」に関しては「コリドラス」はキャリアにはなっていないようです。ただ、ほとんどのメダカ族が感染しますから注意してください。

 数年前にイスラエルで発見された、「HCV(春・鯉・ウイルス)」が中国を経て日本に上陸している形跡もあり、金魚や錦鯉にも同様の病気が発生する可能性があり要注意です。
平成13年2月

< トップページへ