アジアアロワナ今昔


 このHPを見渡すと、アクアセンターくらはしの店長は、大型魚は嫌いなんじゃないかと思う人もいるんじゃないでしょうか?
 ・・・。
 ん。・・・決して嫌いじゃないんですよ。商売上、苦手なだけです。(店が小さいのでねぇ。)

 特にアジアアロワナは好きな魚です。
 ただし、昔のアジアアロワナ・・・。

 え?今のと昔のと違うのかって?
 違うんですよ、コレガ。
 今のアジアアロワナはSITES(ワシントン条約)の批准以降、養殖化が表面化して品種改良に走った結果、非常に美しくなった一方で本来の形態や性質が失われつつあるんです。
 「養殖化が表面化」って変な表現ですよねぇ。実は、SITES批准以前からアジアアロワナは養殖されていたんです。ただ、養殖化が表面化すると価格の暴落をまねくので秘密にされていただけなんです。アジアアロワナがSITESTに入り野生個体の国際商取引が禁止された事で「養殖」そのものが価値を生むことになり、一気に表面化したわけです。

 現在、アジアアロワナは色々な品種名で販売されていますが、いったい何種類に分けることができるのでしょうか?
 答えは「1種(亜種は無し)」です。あくまで公式見解なのですが。
 もし、亜種分離されると、現在販売されている殆どの個体はSITESTから外れてしまう事になり、一部の国(何処とは言いません)の税収がガタ落ちになりその利権に群がる金の亡者どもは大損をします。また、これらの個体を輸入している日本の政府の登録機関も大パニックになってしまいますし、そんな前例が出来ると今後のSITESの運営にも影響が出かねないので、しばらくは亜種分類されないでしょうね。
 では、ホントの所はどうなんでしょうか?
 実際にはアジアアロワナは明確な4個体群に分けることができます。これらは生息域が完全に分離しているのと、明らかな形体的な差異があるので少なくとも「タクソン」以上の分類学的分離が可能なはずです。
 それら4個体群は次のように呼ばれています。
  1. グリーンアロワナ(青龍)
  2. レッドアロワナ(紅尾金龍)
  3. オレンジアロワナ(紅龍)
  4. マレーシアゴールデンアロワナ(馬来金龍)
 カタカナはSITES以前の日本でのインボイスで、漢字は華人(華僑の人達)の呼び名です。英名では「2.」が「Golden」、「3.」が「Red」でした。また、漢字名は多種類あり、全てを把握していません。(あしからず)
 現在の「過背金龍」はマレーシアゴールデンの別名で、元々は背部の鱗まで完全に金色に縁取られた個体に使われていた名称のようです。アジアアロワナがSITESに入った経緯は、このマレーシア個体群が環境破壊と人為的な捕獲によって激減したのがきっかけだったと言われ、他の3個体群は絶滅の危機には無かったとも伝えられています。
 事実、SITES以前にはマレーシアゴールデンは殆ど輸入されておらず、「幻のアロワナ」と呼ばれていて、すでに絶滅していると噂されたほどです。
 しかし、当時、これら4個体群の識別方法を知る人物が少なかったのと、生物学者でもない税関の担当官ではマニュアルだけでは幼魚の識別が困難であることなどから、亜種分離をすることを断念し、亜種を持たない単一種としてしまったらしいのです。何か、すごく政治的な臭いがプンプンします。

野生4個体群の見分け方。(あくまでも私が見てきた個体での話です。学術的裏づけはありません。)

1.[グリーンアロワナ]
 ヒゲは4個体群中最も短小で、ヒゲのウイングの幅が狭い。尾鰭はラウンドテール(うちわ状)。
 成魚のサイズは4個体群中最大。80cmオーバー。成魚の体色は緑がかった銀色。尻鰭側の小鱗列に金色の縁取りが無い。老成個体は鱗の反射層が消失して光沢の無い薄紫色になるものと、金粉をまぶしたようなプラチナ化するものとが居る。生息域はマレー半島を中心としたアジア大陸。

2.[レッドアロワナ]
 ヒゲは4個体群中最も大きく、ヒゲのウイングの幅も広い。尾はスペードテールで、アフリカのパントドン(バタフライフィシュ)の尾の形状に似ている。
 成魚のサイズは4個体群中最小で、60cm以下。成魚の体色は、頭頂から背部、背鰭、尾上部(1/3)が緑褐色で、それより腹側の頭部と胴はオレンジがかった金色で鱗の中心が暗色、縁取りは金色。尾の下(2/3)と尻鰭、腹鰭、胸鰭はレンガ色。成熟すると尻鰭側の小鱗列に金色の縁取りが現れる。

3.[オレンジアロワナ]
 形態的には、1.のグリーンに酷似する。生息域がインドネシア諸島で、1.とは完全に地理的に分離される。
 成魚の色彩は、全ての鰭が濃いオレンジ色。性成熟を完了すると鱗と鰓蓋が濃い赤色に染まる。より濃い発色をするもの程、幼魚期のヒゲの付け根が赤い。尻鰭側の小鱗列に金色の縁取りが無い。

4.[マレーシアゴールデンアロワナ]
 形体的には、2.レッドに酷似する。生息域はマレー半島南部で、2.とは地理的に分離。
 成魚の色彩も、2.に似るが、各鰭は濃い褐色で、緑色に光る。成熟すると背部の鱗にまで金色の縁取りが伸びる個体がいる。老成化すると、鱗の反射層が消失し、濃青色になる個体と、金粉をまぶしたようなプラチナ化する個体がいる。尻鰭側の小鱗列は幼魚期から金色の縁取りがある。幼魚期の個体は4個体群中、もっとも暗色で、灰褐色。

 以上の判別方は、SITES以前に華人の友人(熱帯魚のシッパー)や先輩から教わった事をもとに自分なり解釈した結果です。相当数の個体に接触した結果、得た判別法なので、おおむね正しいと思いますが、当時、本物のマレーシアゴールデンだけにはお目にかかっておらず、「4.」だけは教わった内容の受け売りと言えます。

 この判別方、平たく言うと、「金龍」と「青龍」の2形体と「赤系」と「緑系」の組み合わせだと考えると判り易いと思います。

 さて、21世紀になった現在、これらオリジナルとも言える野生の形態を完全に踏襲した養殖個体を日本で見ることができるでしょうか?
 一見すると、それらしい個体に出会うこともありますが、殆ど無いに等しいように思えます。
 グリーンは巨大化しても鱗が透明鱗になるものは殆ど無く、銀色のまま。レッドは、それっぽい物が多くいますが、たいていは尾鰭が真っ赤で、ラウンドテール。逆に、オレンジにっスペードテルがいたり・・・。オレンジ(紅龍)は以前より赤い個体が増えてきましたが。マレーシアゴールデンも鰭が赤い物が目立ちます。
 紅龍と呼ばれる個体群は生息地(産地)の違いで何タイプかがあるのは事実ですが、中間的な個体が非常に多く見うけられるのは事実です。

 なぜ、このような交雑めいた個体が多いのでしょうか?
 これは日本人には理解しにくい「宗教的」な理由がうごめいています。
 アジアアロワナの最大の消費者は日本人ではなく、「華人(華僑)」です。彼らには「風水」を深く信じる人が多く、アジアアロワナを「龍魚」と呼んで大切に飼育しています。特に、全身真っ赤な「紅龍」は商売繁盛の、濃青色の「過背金龍」は子孫繁栄の象徴として珍重します。これらを手に入れるために彼らは法外な代金も惜しまずに支払うのです。「法外っていくら?」かって???新車のフェラーリと同じくらいでしょうか。したがって、これらを養殖できれば、「まごう事なき大金持ち」になれるわけです。そこで、「品種改良」が始まったわけです。ただ、マレーシアゴールデンは既に消失しかかっていた為に、僅かに生存していた個体を類似個体群(レッド)と掛け合わせ、戻し交配で復活を試みたわけです。しかし、そんな個体は、そうザラには居ませんし、例え繁殖できても「出来損ない」が大量に生まれてきます。そんな出来損ないは華人達には売れません。
 そこに現れたのが何も知らないジャパニーズ・バイヤー。バブリーな「円」をちらつかせ、「沢山買うからディスカウントしろ!」の連発。もともと、最上級個体は言い値で売れるシロモノで、わざわざディスカウントするワケがありません。以前、香港のシッパーがグチをこぼしていました。
 「日本人は、スグにディスカウントと言い出すから、良い個体を見せられない。日本人に龍魚を売りたくない。」と。
 結局、日本人のバイヤーは良い魚と粗悪な魚の区別がつかないと判り、名前だけそれっぽくして駄物を売りつければイイ。と言うことになってしまったのです。実際に現地で買いつけをしても、見せられた個体と梱包した個体が入れ替わっていても全く気がつかないそうです。アジアアロワナの輸出業者の多くは「日本人は金を持ってるが、使い方を知らない。」と言い切ります。(ナサケナイ・・・)
 ここ数年、アジア諸国で経済的な危機状態が頻発し、ようやく日本人もお客扱いされるようになってきたらしいのですが、本当に美しい個体は、日本人には手が出ないようです。

 ただ、我々日本のアロワナファンは、風水を信じてアジアアロワナを飼育している人は殆どいないはずで、正しく飼育すれば代金以上の美しい魚には育てられるはずです。ガンバリましょう!

 あ。ちなみに私は、レッドアロワナ(紅尾金龍)が一番好きです。シブイでしょ。
関連ページ[アジアアロワナは、体内カレンダーが狂うと発色しない?]

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