証明と描写 混合と還元に対する抽象的なアプローチが存在する。 それは美しい。 テキストにおいて、密度マトリクスの還元のところでよく見られる。 エベレットによって示された簡単な道筋を 彼の解釈にかかわらないようにおってみよう。 断り書きがない限り、基底は全て単位ベクトルからなる。 ベクトルzがH1の中にあり、{xi}がH1の基底であるなら、 zは次のように書ける。 (1) z=Σ(xi・z)xi すなわちzは基底ベクトルに沿った射影の和である。 同様に、さらに{yj}がH2の基底で、φがH1*H2にあるなら、 それは次のように記述される。 (2) φ=Σ(xi*yj・φ)(xi*yj) cij=(xi*yj・φ)とおくと、 ふたつのやり方で要素を集めておくことができる。 (3) φ=Σxi*Σcijyj=Σxi*v(i)      =Σ(Σcijxi)*yj=Σu(j)*yj それらのグループ分けが、還元された状態が何であるかを教える。 φと上記のような基底をおくと、次の結果になる。 (4)一般的還元:上記のようなφとして、 #φ[1]=Σ|u(j)|2Iu(j) #φ[2]=Σ|v(i)|2Iv(i) |u(j)|2=Σicij*cijで|v(i)|2=Σjcij*cij そうすると、含まれている全ての数とベクトルは、 与えられた基底を用いてφの記述から読まれる。 しかし、ベクトルu(j)とv(i)は一般に単位ベクトルではないし、 直交する基底を形成してもいない。 還元された状態は、明確に記述できるが、直交分解はされない。 状態φにあるときのI1*Bの期待値を計算し、 状態v(i)にあるときのBの期待値と どのように関係しているかを理解しましょう。 (φ・(I1*B)φ)=(φ・Σxi*Bv(i))            =Σ(xi*Bv(i)・Σxk*v(k))*            =ΣΣ(xi*Bv(i)・xk*v(k))*            =ΣΣ[(xi・xk)(Bv(i)・v(k))]*            =Σ(v(i)・Bv(i)) v(i)は一般に単位ベクトルではないから、 v(i)にあるBの期待値は、(v(i)・Bv(i))を その長さの二乗|v(i)|2で割ったものに等しい。 だから、次のことを演繹する。 φにあるI1*Bの期待値は、ようそ|v(i)|2によって重みづけられた、 v(i)にあるBの期待値の平均である。 これが一般的な還元の結果が還元された状態#φ[2]について 述べることである。 同様の演繹で還元された状態の他の主張を生み出す。 直交分解についての有益な系を得ることは助けになるので、 マトリクスの表現を見てみよう。 前の章で、エルミート演算子Aは、次の場合に、マトリクス[amn]によって、 基底{xi}に相対的に、表現される。 (5)全てのベクトルzにたいして、Az=Σamn(xm・z)xn 知らなければならないことは、還元された状態のマトリクス表現である。 上記のようなφにたいして、H2にたいして計算する。 #φ[2]z=Σ|v(i)|2Iv(i)z      =Σ|v(i)|2(1/|v(i)|2)(v(i)・z)v(i)      =Σ(v(i)・z)Σcikyk      =ΣΣcik(Σcijyj・z)yk      =ΣΣ(Σcij*cik)(yj・z)yk #φ[2]はマトリクス[bjk=Σcij*cik]によって、 基底{yi}に相対的に表現されている。 同じやり方で、#φ[1]はマトリクス[aij=Σcik*cjk]によって、 基底{xi}に相対的に表現されている。 前の章で、演算子は次の場合にその基底の直交分解を持つことをみた。 表現しているマトリクスがdiagonalの場合。 そのことは対角要素aiiだけがゼロではないということを意味している。 次の結果を証明するすべを今手に入れた。 (6)φが上記のようなもので、#φ[1]が基底{xi}の直交分解なら、 #φ[2]の状態v(i)への分解も直交している。 その場合、式φ=Σ|v(i)|xi*v(i)/|v(i)|を φのカノニカルな記述と呼ぶ。これは完全に相関した形である。 明らかに#φ[1]は少なくとも一つ直交分解を持たなければならないから、 φは常にこのようなカノニカルな形で書くことができる。 これは、節の終わりで記述されたフォンノイマンの結果だ。 これを証明するために次のことが必要だ。 ベクトルv(i)が各々直交していることを示す。 v(i)・v(j)=(Σcikyk・Σcjmym)          =Σcik*Σcjm(yk・ym)          =Σcik*cjk しかしこれは、基底{xi}に相対的に#φ[1]を表現する マトリクスの要素である。 仮定によって、i=jでない限りその要素は0である。 それゆえ、ベクトルv(i)は直交している。 この結果から、#φ[S']と#φ[S−S']の分解は同じ次元のイメージ空間を持つ。 他方、そのようなカノニカルな記述は真ではないだろう。 はじめに、これは驚くべきことだ。 たとえば、もしH1、H2、H3が同じ次元を持つなら、 H2*H3はH1より大きい次元を持つ。 そうして、それぞれの固有ベクトルの集合がH1、H2*H3をはる W1とW2の混合を選ぶ。 しかし、そのとき、その定理は次のことを示す。 W1=#φ[S']でW2=#φ[S−S']のような、 H1*H2*H3上の純粋状態φは存在しない。 大きな複合系Sはある混合状態にある。 終わりに、還元の重要な関係と状態の間の重要な関係を結びつけよう。 相対的可能性。 前の章の節1と4から、次のような場合に、 状態W'はWに対し相対的に可能である。 前者が確率1を、後者が確率1を与える全てのものに付与する場合。 この関係は二つのステップで結論づけられる。 Wに相対的に可能な純粋状態は、そのイメージ空間中のベクトルによって表現される。 WがW'のような純粋状態の混合であるなら、 すなわち、W'のイメージ空間はWのイメージ空間の部分であるなら、 W'がWに対して相対的に可能である。 (7)φはWに対して相対的に可能であるなら、 #φは#Wに対して相対的に可能である。 これは、いかなる部分系に対応する還元に対しても成立する。 証明は3段階である。 全体系Sがヒルベルト空間Ha*Hb*Hc上の状態Wを持つとしましょう。 一方で、その部分系S'が状態空間Hbをもつとする。 Pをその空間Hb上の射影演算子であるとしましょう。 Pが、#W[S']にある時、期待値1を持つ。 定義によって、状態Wにある時のIa*P*Icの期待値に等しい。 W=ΣwiIx(i)で、φ=Σcixiとします。 そうすると、φはWのイメージ空間にある。 そうすると、各々のiに対して、(Ia*P*Ic)xi=xi なぜなら、Wの各々の要素にあるとき、Ia*P*Icは 期待値1を持つからだ。 しかし、そうすると、(Ia*P*Ic)φ=φ それゆえPは#W[S']においても期待値1を持つ。 いま、特殊な場合として、#W[S']のイメージ空間上の射影Pをとる。 その状態で、それは期待値1を持つから、#φ[S']にある時もこの期待値を持つ。 そうすると、後者が混合ΣvjIy(j)であるなら、 各々のインデックスjに対してPyj=yj そうすると、Pが射影する#W[S']のイメージ空間に、 #φ[S']の全ての成分がある。 それゆえ、それらの要素で張られる#φ[S']のイメージ空間は、 #W[S']のイメージ空間の一部である。 これが証明されるべきことだ。 3.相互作用と混合状態の無知解釈 量子力学の混合状態は、古典物理で使われている確率分布のようなものとして、 示唆される。 すなわち、真なる状態の無知を表現している。 それは次のことを意味する。 全ての状態は常に純粋状態にあるが、そのどれにあるかは我々にはわからない。 この混合状態の無知解釈は、ライヘンバッハによって、 測定や遠距離相関を解釈するキーとして、提出された。 他方、Hans Margenauと彼の学生は、純粋状態は特殊な部分クラスであって、 系は純粋状態にはないという全く反対の考えを提出した。 目先をかえて、これは相互作用と非常に関係がある。 しかし、それより前に、この無知解釈がいくつかの問いにこたえるべきことは明らかだ。 もし系が混合状態W=bIx+(1−b)Iyにあるときに、 系Xが入っている純粋状態はなんであろうか? 第一の答えは次のものだ。 xは確率bをもち、yは確率(1−b)をもつ。 b=1/2なら、この直交分解は一意ではない。 もし[z,w]=[x,y]でz⊥wなら、W=1/2Iz+1/2Iwでもある。 確立1/2をz、w、x、yに振り当てることは出来ない。 ここで、我々は選択に直面する。 全ての直交分解が等価であるか、一つが特権をもつかである。 もし後者であるなら、量子力学は不完全である。 なぜなら、どちらが正しいかを我々に教えないからだ。 もし前者なら、なぜこれが直交分解に対して特権を持つのか? 前の章を思い起して、Xに対する可能な純粋状態の集合を、 全ての要素(可能な非直交分解の)の集合に広げるか、 Wのイメージ空間全体に広げるかは出来るであろう。 この最後のバージョンを擁護しようとしたとしよう。 Wに相対的に可能な純粋状態xにXがある場合にかぎり、Xが混合状態Wにある。 そうすると、どのようにして、 同じイメージ空間を持つ違った混合状態がどのように出てくるのか? 答えは次のようなものになるだろう。 それは、確率を付与するやり方の我々の無知を反映するものの一部であろう。 完全な答えを与えるためには、もう少し多くのことが必要だ。 しかし、大きな困難がある。 もしXが純粋状態φ=(1/√2)(x*y+x'*y')にあるX+Yの部分とし、 W=#φであるなら、 Xがxかx'になければならず、Yもyかy'になければならない。 ここまで、無知解釈は、Xがx'でYがyのような コンビネーションを排除する理由を与えていない。 それでも、Ix*y'の測定がが値0を持つことを、確実に予測する。 Xの混合状態が大きな系の純粋状態の還元であるような場合にたいする特殊な付加で、 無知解釈が修正されうるであろうか? たしかに、この確率上の推論がどこからやってくるのかは不思議である。 もし、実際の状況が、(XがxでYがy)か(Xがx'でYがy')であるなら、 なぜ、正しい測定結果の予測が、混合状態W'=1/2(Ix*y+Ix'*y')にある X+Yに対するものと同じではないのか? 無知解釈が次のようなまちがった結論を導くとしばしば言われる。 Xが状態Wにあるなら、それは状態W'にある。 上記の修辞的な問いは、reductio ad absurdumに目が向けられる。 擁護者達が指摘するように、これは論理的には正しくない。 一般に、もしXとYが純粋状態xとyにあるというなら、 X+Yは状態x*yを持つものとして表現される。 しかし、もし部分の状態の知識が全体の「真の」状態を一意に決定できないなら、 これは、それを行なう場所だ。 それは藁をもつかむようなことに見える。 もし無知解釈に対する動機が、ミステリーを解くということにあるなら、 この動機づけは失われた。 この問題についていくらか大きな展望をえるために、 状態の概念を顧みましょう。それは少なくとも三つの側面を持つ。 (T)状態は(統計的)予測に対する基礎である。 (U)状態は、物理的準備もしくはフィルターを通す手続きによって、準備される。 (V)状態は、環境や系の性質とつながった制限に基づいて、展開する。 この章において、我々は第四の側面を見る。 (W)複合系の部分の状態は、一般には決定されないが、 関数的には全体の状態によって決定される。 (T)にだけに注目するなら、いくらか明かなものとして、 無知解釈を考えることが出来る。 (W)は(U)をつよく制限する。 完全に分割された他の系との過去の相互作用によって、系はある状態に準備されるだろう。 他のやり方で見てみると、相互作用した二つの系は、ともに一つの全体系である。 それら自身の状態は、全体系の還元でしかない。 その全体の状態における統計的相関が完全にもつれあっている部分を持つ。 実際に、二つの系の相互作用は、もつれあい、はなれ、再びもつれあうことが出来る。 単純で有益な例がベルトラメッティとカッシーニによってあたえらえている。 力学的展開において、部分系は純粋状態と混合状態を行ったり来たりする。