ゲーム

・マイナーRPGに光を:六・
私の印象に残っているマイナーRPGを挙げてみます。
今回は「リンダキューブアゲイン」・・・鬼才・桝田省治が贈る、早すぎてグロすぎたポケモソです。

リンダキューブアゲイン
 リンダキューブアゲイン、PCEでエ○さでなくグロさで18推指定を受けたリンダキューブのPS版である。
ストーリーは、 『八年後、巨大隕石の衝突により全ての生き物が全滅するので突如地中から掘り起こされた箱舟に 出来る限り多くの種類の生き物をつがいで保存すること。尚、箱舟を起動させるには手形を登録した主人公・ケンとリンダが必要』 という部分が常に根幹にあるA、B、Cの三つ(おまけでD)のシナリオで構成されている。
 つまり基本的には動物集めが主なのであるが、その種類・生態と捕獲の自由度の高さはハンパではない。
基本は戦って弱らせれば捕獲できるのだが、あまりに弱い敵だったりすると粉々に潰してしまい捕獲できない。
また動物によってはある時期を境に絶滅したり、特定の時期・場所にしか現れなかったり、オスが沢山いてもメスが希少種だったりと 考えなしに戦っているだけでは絶対に捕獲できないものも多いのだ。
そこで弱い武器で攻撃する、弱い特殊攻撃で攻撃する、猟犬をけしかける等戦闘レベルでの工夫から、 ワナを仕掛ける、ハンターに頼む、オークションで金に物を言わす、動物を解体して体内から取り出す、 落ちていた卵を孵化させるなど幅広い方法がある。
 ちなみに捕獲した動物は箱舟に登録する以外に武器・防具の材料や食材加工、売却等幅広い使用方法がある。
そして、早すぎたポケモソの名のとおり戦闘中に「キミに決めた!」とばかりに敵にけしかけることも可能なのだが ・・・三つばかり問題がある。
まずあまり強くないことと先のように他に使用用途が多いため戦闘で使う意義が薄いということ。
そして、一番の問題点は・・・ポケモソと異なり見た目がかなりグロいということである。
どれ位グロいのか、一応絵で示そう。
下の絵が何の動物かわかるだろうか?
謎の生物  謎の生物










実はコレ、ブタイカなのである。
ただブタはあまりにアレだったのでPS版ではもうちょっと可愛い感じに変更されていたが。
大体がこれよりもっと濃い感じの生物である、ポケモソのラブリーさとは対極に位置するといっても過言ではない。
 そんな感じで目的である動物がコレであるが、それ以上にグロいのはA、Bのシナリオ自体である。
もっともネタバレになってしまうので印象的な部分だけ挙げておこう。

【シナリオA】
『死体は探すよりも作る方が簡単なのさ』
という主人公の双子の弟の台詞が霞む位のインパクトがあるのが
ヒロイン・リンダの父にしてハンターであるヒュームの
『愛し合う二人はいつも一緒。
そいつが何よりだ、そうだろう?』
である。
銀英伝のヤン提督の『正しい認識が正しい行動に結びつくとは限らない』を体現した台詞であるといえる。
ヒントは“いつも”一緒。

【シナリオB】
いきなりリンダの一家が襲われ、両親の命と箱舟起動に必要なリンダの左腕が奪われてしまう。
そして、リンダの左腕にはゴツイ父親の腕が取り付けられることに。
このページの最初のリンダの絵はそれをイメージしたものだが、『左腕が父親のもの』なんてものが霞む位 このシナリオも狂気に満ちている。
個人的に興味深かったのは、
腕を失くし入院したリンダに代わりパートナーを務めることになったサチコに対して、 その父親でリンダの主治医のエモリが言う
『サチコ!ケン君には「A」までだよ。「B」は 慎みなさい』
という台詞。普通そういう意味にとるが、実は・・・というのがミソ。

 実はこれを書いた後、改めてシナリオA、Bをプレイしてみた。
どちらも慣れていたので(といっても以前は兄のプレイを見ていただけだが)4時間ちょっとでクリアできたが、 相変わらずのシステムと台詞回しの妙にうなってしまった。
そして、シナリオのグロさの中に一本ちゃんと筋が通っていることを伝えていなかったことを感じ、追記しようと思った次第。
基本的にシナリオA、B共に根底に流れるのは『愛』である。
『家族愛』『親子愛』『夫婦愛』『兄弟愛』・・・ただしどれにも『歪んだ』が頭につくが。
顕著なのが、男親の子供へのやり場のない愛。
これは桝田省治がこのゲームの製作時に父親になったことに起因すると思われる。
 シナリオAのリンダの父親ヒュームの
「強いなぁ、リンダ…やっぱりおまえは俺の子じゃないのかなぁ…
(中略)リンダと俺の肌の色が違っても俺はリンダのことも愛してた」
という台詞から「男親は生まれた子供が本当に自分の子供なのか確証が持てず疑い続ける」というコンプレックスを感じるし、 そしてリンダが実の子であると証明されるのがシナリオBにおいて死んだヒュームの左腕がリンダに拒絶反応なく接合された時であるという皮肉もまた凄まじい。
 またシナリオBのエモリが言い放つ
「娘を持った親なんてな!!裏切られるためだけに生きてるようなモンだよ…」
という台詞は将来、娘が嫁ぐ時の男親(桝田省治)の気持ちの発露とみてとれる。
 しかし、一番強く感じるのは、
奥さんの出産に立ち会った桝田省治が感じた『母(女)は強い!』である。
主人公ケンの義母は見た目と声こそジャ○アソの母だが、その愛は大海よりも深く広い。
シナリオAの陰惨な出来事を
「うまいモン食って、いいウンコして、元気な子をいっぱい産む。
百歳まで生きて『あー 面白かった!』って思い出し笑いしながら死ぬ
女の人生なんて これでOK!他のことはその時悲しくても結局大した問題じゃないんだ」
で締めくくってしまう位の肝っ玉母さん、ある意味無敵である。

 と動物のグラフィックやシナリオについてばかり説明しているが、 このゲームの本来の魅力は、先に挙げた動物捕獲における創意工夫と王道RPGに対するアンチテーゼ故にしっかりRPGになっているところである。
普通のRPGであれば星を消滅させる巨大隕石を何とかするのが目的であり、実際何とかなってしまうものである。
だがリンダの場合、巨大隕石はどうしようもならない。きっちり八年後、星は消滅してしまうのである。
ここから一人の人間の限界というか神(製作者)の見えざる手には逆らえないというゲームのメタ的な部分が感じられる。
 『製作者の用意したシナリオ』をなぞるという現在の多くのRPGに見られるものでなく、 『製作者の用意したシステム』の中で自らの遊びを見つけられるのがリンダの魅力といえるのかもしれない。
何でリンダ『キューブ』なの?
三つのシナリオ毎にそれぞれ違うリンダやからだったと思うで。
リンダの三乗、リンダキューブっちゅうわけや。
ああ、ルービック・・・
あんさん、ホンマ11歳か?
ダ・マ・レ

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