砂漠の女豹

その人物は突然現れた。女だ。
さらに色々と掘り下げると、色白で髪はロング。サングラスにアロハシャツ。趣味の悪い高そうな時計。首に花なんかもぶらさげている。
微妙に来る場所を間違えて無いかと問い詰めたい所だが有無を言わさず口を挟んで来た。
「ちょっと待った〜! これにはヨーグルトでしょやっぱり」
「何だお前は。大体これにはタバスコってのが王道だろ」
「何言ってるの、彼女まで邪道に堕すつもり?」
「まぁまぁ」
「そっちこそヨーグルトなんざ薦めてるんじゃねぇ!」
「あ、あははは」
キア・ヤマト嬢、彼女はかなり不幸だ。幸せを掴み掛かった所で何時も見放される。
ボーイフレンド? との楽しい食事、それすら彼女には許されない。
現在の彼女はと言えば前述の謎の女とボーイフレンド? に板挟みに遭っている。どうすれば良いのかわからずにいがみ合う両者を交互に見比べただあたふたした。
「こうなりゃ実力行使だ。この」
「舌戦で負けたからってそりゃ無いでしょ」
「んな事言うならその手を放してヨーグルトを置いてから言え」
「「ぬぐぐぐ〜」」
銃声。
「危ない!」
「ひゃ」
またしても災難。キアは頭からケチャップの雨を浴びる。
「やってくれたわね。ノシイカにしてやるから覚悟なさい」
取り出したるは護身用具のミリオンセラー。彼の有名なスタンガンである。で、それだけ持って敵陣へと向かって行った。
キアはまだケチャップの件すら飲み込めていなかったが、思わず声をあげた。
「だ、大丈夫なんですかソレだけで」
「大丈夫大丈夫。それより、用が済んだら改めてコーヒー奢ってあげるからそこにいなさいよぉ〜」
脱兎の如く走り去って行った。

十分程して、無傷で彼女が戻って来た。
今度はサングラスを外していた。掛けていた時は解らなかったが、とても若い。まだ十代なのでは無いだろうか。
「あの、ボク一つ質問があるけど良いですか?」「俺も」
「はいどうぞどうぞ。あ、ただし質問は三つまでねお姉さん忙しいから」
「倒したんですか?」
「そうよ」
「ホントにか?」
「そうよ」
「「…」」
「はい終了。じゃ予告通り私の家にご招待よ」
ビシッとポーズをつけて言った。本当はもう帰りたいのだが、どちらも切り出せない。
「あの…そろそろ」
「ああそうそう。名前まだだったわね。アン・バルトフェルドよろしくね」
「てめぇ。砂漠の女豹だったのか!」
はははと彼女は明るく笑っていたが、ボーイフレンド? の方は激しく怒っていた。
「関係ない。その手を放せ」
「そろそろおいとまさせて貰いたいんですが」
「あらあらカタイ事言わない。ホントコーヒー奢るだけだから」
いい終わると同時に拉致同然で引きずって行かれた。

作:33さん


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