SEED ANOTHER

 「イザァラ−怨恨の炎」

「115ミリレールガン『シヴァ』……互いのビームライフルが切れても、
こいつで止めをさせる」
 カタタタタタタタタタッ タン
「そしてこのアーマー……PSダウンを起こした時には、こいつがモノを言う」
 カタタタタタ カタカタカタッ タン
「完璧だ!見ていろよ、ストライクめ。このオレは受けた借りは必ず返す!」
 タカタカタカタタタタタタタ……
 ザフト戦艦・ナスカ級高速戦艦『ヴェサリウス』における病室で、キーボードの
シンフォニーが鳴っている。
 ベッドの上から聞える音であった。
 正確には、そのベッドの上で痛々しい包帯に顔を包んだ十代半ばの少女が、
ひたすらに目の前のキーボードを叩いている音だ。
 均一にカットされた、輝くような銀髪。猫科の動物のように鋭い眼差しと、
包帯の上からでも判る整った面持ちは、彼女の誇り高い本質をありありと見せ
つけていた。
 感情的な正確の彼女の表情を見れば、今彼女がおかれている立場が、第三者にも
嫌でも判る。まるで己の胸の内に燃えさかる、激情をキーに叩きつけるように、
彼女は何らかのプログラミングを続けていた。
 その内容を見れば見る程「こんな少女が?」と信じられなくなるようなハイ
レヴェルのデータである。
 しかし彼女の素性を知れば、誰もが当然だと思い得心のいく事だろう。
 彼女が、人為的に遺伝子を操作された人間、コーディネーターだと知れば。
 そのコーディネーターの中でも、群を抜いたエリート中のエリート。地球連合軍
との圧倒的戦力差を物ともせず、11ヶ月間戦線を維持し続けているザフト軍でも
名高い、ラウ・ル・クルーゼ指揮下のモビルスーツ・パイロットと知ったなら、
こんな離れ業ができたとしても、何もおかしくなどはない。
 イザァラ・ジュール。
 それが、彼女の名前。
 だが今の彼女にとって、その輝かしい肩書きは、重苦しいプレッシャーとなり
つつある。
 現在彼等の任務である、連合軍の新造戦艦・アークエンジェルとの戦闘において、
クルーゼ隊は煮え湯を飲まされ続けている状態であるからだ。
 遺伝子操作の行われていない、ナチュラルの軍隊に、である。
 そして、先の戦闘で、イザァラは、連合から奪取した高性能MS『Gタイプ』の
一機、『デュエル』に乗り込み、敵側の持つGタイプ『ストライク』に、撃墜されて
しまったのだ。
 今の傷は、その際に負ったものである。
 ナチュラルを下等種と見下してきたイザァラにとって、それは如何なる物にも
換えがたい屈辱の傷であった。
 そして、彼女はここで大人しく引き下がるような性格の持ち主ではなかった。
 プシュ、と音がし、病室のドアが開く。
「イザァラ……何をしているんだ?」
 驚いたような顔をした少年を見て、イザァラは顔を露骨にしかめ、嫌悪の表情を
隠す事無く見せた。
「フン、誰かと思えば貴様か!」
 黒髪の少年の名は、アスラン・ザラ。彼女と同じクルーゼ隊のメンバーであり、
Gタイプ『イージス』の搭乗者である。
 そして、イザァラがこの世でもっとも疎ましく思う人間の一人であった。
 アスランはいきなり拒絶をしめされ、だがある程度予想していたためか、言葉を
続けた。
「見舞いだよ、お前のな」
「ほーぉ!オレはまた、てっきりこんな惨めな姿を晒しているオレを、あざ笑いに
来たのかと思ったがな」
 イザァラの刃物のような眼差しを流すように息をつき、アスランは腰に手をやる。
「で?お前は絶対安静と聞いたが」
「借りてきた猫のように、ただ寝ているなど、オレのプライドが許さん」
「―――お前の気持ちは判るが、今は傷を」
「気持ちが判るだと!?貴様にオレの何が判る!」
 噛み付くようにイザァラはアスランの言葉を遮った。
「ナチュラル如きに傷を負わされたオレのこの気持ちが!貴様なんかに判る訳が
ない!」
「……!」
 アスランは、言葉に詰まった。明らかに冷静さを欠いている。
 彼女のプライドの高さを考えれば、当然だろう。自分が女である事を自覚し
柔軟に振舞えるニコンとは違い、イザァラは常に自分を含めた他人に対して、
自分を上の位置に置かねば気がすまない性格なのだ。それは彼女の男のような
言葉使いからも伺える。
 そしてイザァラは、あのストライクに乗っている相手をナチュラルだと思い
込んでいるために、その憤りを抑える事すらできないようだ。
 だが、事実は違う。
 あのストライクに乗っているキア・ヤマトは、アスランやイザァラと同じ、
コーディネーターなのだ。
 そして、かつてのアスランのガールフレンド。
 だが、そんな事を言えるはずがない。
 真実を知っているのはクルーゼ隊長しかおらず、そしてその事は口外するなと
釘を刺されているのだ。
 それに、それを知ったならば、イザァラのプライドはかえって傷つく事になる
かもしれない。
 『ストライク』が、ナチュラルでもこちらを陵駕する高性能機などではなく、
単に自分以上のコーディネーターが乗っているゆえの性能なのだと知ったら。
 口を結んだアスランを睨んでいたイザァラは、すぐに肩を竦め、ベッドの側の
モニターを見せびらかす。
 それは、イザァラが前もって設計していたらしいデュエルの換装パーツだった。
「見ろ、こいつを。その名も『アサルトシュラウド』だ」
「アサルトシュラウド(死体袋)とは、縁起の悪い名前だな」
「フッ!発想が常に後ろ向きな腰抜けにはそう聞えるのだろうさ。このアサルト
シュラウドは、愚かなナチュラルどものための死体袋という意味なのだ」
 シニカルに口の片端を上げて、データを打ち込み続けるイザァラ。
「この格段に上がった装甲と火力!ストライクを倒すのは、このアサルトシュラ
ウドだ!」
 胸を張って得意そうに叫ぶ少女をアスランはどこか冷ややかにモニター見つめて
いたが、じきに口を開く。
「イザァラ。お前の気持ちは判るが、今は休んでおいた方が良い。今のお前では、
キ―――いや、ストライクには勝てない」
「何ィィィ!?」
 歯を剥いて、包帯で包まれた顔を上げるイザァラ。
 視線を落して、
「いや、お前だけじゃあない……誰も奴には勝てないかもしれないんだ。ニコンも
ディアッカも、俺も。クルーゼ隊長ですらな」
 ピクッ
 イザァラの目付きが、急激に変貌する。
「だ……黙れぇぇぇ!」
 イザァラは、ベッドの側にいるアスランの胸元を掴んだ。彼女が尊敬以上の
思いを抱くクルーゼの事を貶されるのは、彼にとって自分が言われる以上に怒りに
値する事なのだ。
「黙れ黙れ腰抜け男!クルーゼ隊長を愚弄する事は、許さんぞ!」
「腰抜けで結構だ!」
「!?」
 言い返したアスランは、イザァラの手からキーボードを取り上げると、彼女を
ベッドに横たえた。
「こんな無駄な事をしている暇が有ったら、傷を治して万全に戻せ。
それがベストだ」
「……クッ!む、無駄な事だと!?貴様ぁ!放せ!」
 腕を抑えているアスランを振り解こうともがくイザァラだが、アスランは
びくともしない。
「判ってるだろ?お前が俺に、筋力で勝てる道理はないんだ。ましてこんな
状態ならな」 コーディネーターは、あらかじめ遺伝子情報によって、互いの
能力を熟知している。だから相手に何ができて、自分よりどう優れているかも
判ってしまう。だが、頭でわかっていても素直に認められないのがイザァラの
性格だ。
「う、煩い!」
 じたばたと暴れるイザァラ。だが、その時。
「もうこれ以上、俺は仲間を失いたくないんだ!」
 イザークに覆い被さっていたアスランが声音を強めて、言った。
「なんだとぉ!?―――?」
 言い返そうとして、はたとイザァラは動きを止めた。
 アスランの手の震えが、自らの腕を通して伝わってきたからだ。
(こ、こいつ?)
 アスランはイザァラに説くというより、半ば自分にでも言い聞かせるように、
彼女に向けて言葉を紡いだ。
「ラスティも、ミゲルも、散っていってしまった。その上、お前まで死んだら、
俺はどうすればいい?」
 なんて顔をするんだ、こいつは。
 そのあまりに辛そうな顔は、まるで兵士の……まして、ザフトでも選ばれた
トップ・ガン、クルーゼ隊の一員とはとても思えない。
 これは、ただの子供の顔だ。
 自分以上の能力を持ちながら、こんな弱音を吐くこの男が、彼女には理解でき
なかった。
 ―――腰抜けめ!
 胸の内で、イザァラは侮蔑の言葉をアスランに吐き捨てると同時に、焦燥感を
おぼえる。その腰抜けに、エース・パイロットの座を奪われたのは、他でもない
自分なのだから。『腰抜け以下』。そんなレッテルが自分に貼られたようで、
それが彼女の自尊心を痛く傷つけた。
 いや、本当に彼女の心を痛めているのは、その事ではない。
 何より彼女の対抗心を煽るのは、彼―――アスランが、彼女のもっとも評価を
受けたいと願う人物から寵愛を受けている事だった。
(隊長!隊長は、なんでこんな奴の事を!)
 そこまで思いを馳せた時、ハッ、と気付く。
「おい!顔を近づけ過ぎだ!」
「え、あ、ああっ」
 何時の間にか、触れるほどの距離まで互いの顔が近づいている事に気付くと、
跳ねるようにアスランは手を放して起き上がった。
 イザァラは乱れた服を直しながら、軽蔑しきった眼差しを向ける。
「腰抜けの上に助平までが付くのか?貴様はっ」
「いや、ご、ごご誤解だ!俺は別に、そんな」
 人が変わったように必死に弁解するアスランを見、イザァラは少し溜飲が
下がった。
 せせら笑って、キーボードを膝の上に置きなおす。
「オレの事ならば心配は無用だ。貴様は自分の事だけ考えていろ」
「……そうか」
 ようやくアスランが諦めたように俯いたので、イザァラは再びプログラムに
戻ろうとした。
 しかし、続くアスランの言葉が、彼女の指を止めた。
「だがイザァラ、そのアサルトシュラウド、欠点があるぞ」
「!?」
「デュエルは確かにGタイプでも汎用性の高い機体だが、俺の見る限りでは
接近戦闘に秀でた機体だ。上げるなら機動性と反応速度だろう」
「あ……う……!」
 イザァラは言葉に詰まった。落ち着いて見直せば、全くもってアスランの
言うとおりだったからだ。復讐の感情に捉われすぎてデュエルの本質を見落として
しまっていたとでもいうのか?この自分が?
 しかし、彼女はそんな事実は認めたくはなかったし、更に言うなればアスランの
アドバイスなど肯定する事はそれ以上に嫌だった。
 そんな彼女を余所に、アスランはベッドに手をついて、イザァラの側にある
モニターを覗き込む。
「例えば、ここの脇周りの装甲を削って燃料に回せばバーニアを30%は増設
できる。それとこの辺りに、ビーム・コーティングシールドを……」
 すらすらと簡単にアサルトシュラウドの欠点を補っていく言葉に、イザァラは
細い指で拳を作り、ぎりりと握り締めた
「―――や、やかましいぞ!オレに命令するな!アサルトシュラウドはオレの
機体なんだっ、オレの好きなように設計する!」
 アスランの手を払って、イザァラは叫び―――アスランの表情が硬直したのに
眉を寄せた。
「なんだ……?ッ!?」
 アスランの視線を辿って自らの身体を見ると、理由が判った。先ほどもつれた
拍子に、シャツの胸元のホックが外れてしまっていたのだ。
「き、貴様ぁぁぁっ……!」
「ち、違っ、誤解だ!」
 顔を染めて首を振るアスランの言葉など聞く耳もたず、イザァラは有らん限りの
声を叩きつけた。
「出て行けぇっ!この腰抜けの助平男!!人を呼ぶぞ!」
 非難されたアスランは、一目散にその場を去って行った。
「くそぅ、クルーゼ隊長にも見られたことが無いのに、あんな奴に……!」
 ベッドの上で、胸元を抑えながらイザァラは悔しそうに口を尖らせる。
 と、やがて、モニターとアスランの出て行ったドアを交互に見比べて、
視線を落す。
「……フン!」
 悪態をつくと、イザァラは、ほんの少しだけアサルトシュラウドのデータを
修正する事にした。
 ストライクを倒すためなら、なんだって利用してやる。そう、これは別に言う
事に従っているのではない。ただ、奴の言った事を利用してやっているのだ。
 そう自分に言い聞かせて。
「アスラン―――クルーゼ隊の真のエースは誰かという事を、思い知らせて
やるぞ!」


 一方、病室を出て行ったアスランは、息をついて自分の手元を見下ろした。
「……軟らかかったな、あいつの手」
 感触を確かめるように、掌を開閉する。
(キアの手も、あんな感じだったろうか)
 そう考えてから、アスランは、自分の頭をブルブルと振った。
 ―――これじゃ本当に助平男だぞ、俺は。
 そんな自己嫌悪を抱きながら、アスランはイージスの調整の為に格納庫に
向かうのだった。

 「キア−偽りの温もり」

「トリィ!トリィ!」
 キア・ヤマトが眠りから醒めると、真っ先にトリィの声と姿が映ってきた。
「気が付いたかい?」
 自分が寝ているベッドの側で、誰かの微笑みがキアに向けられる。
 赤い長髪。すらりとした長い手足に、モデルのようなルックスの少年。
 キアは彼の名前を呼んだ。
「フレア!」
「ああ、ほら。駄目だぜいきなり起きちゃあさ」
 飛び起きたキアの肩を、フレア・アルスターはそっと抑えて、また横たわ
らせた。
「艦の医務室。着艦の時には気を失ってたっていうから、憶えてないんだろ?」
「え……と、じゃ、ここって」
「地球だよ。砂漠って、砂ばかりの所さ。昨日の夜降りたんだ」
 と、キアはフレアの手にあるタオルに気がついた。
「あ、それ……」
「今新しいのに代えたから、汚くないよ。安心して」
「う、うん」
 もしかすると、昨日からずっとタオルで拭っててくれたのだろうか。
(そして、ずっと、寝顔を見られていたのだろうか)
「どうしたんだい?キア」
 自分に背を向けるように寝返りをうったキアに、フレアは問う。頬を桃色に
染めた顔を見られたくないなどと、言えるはずもなかった。


「フレア……ありがとう」
 キアは火照った顔を見られないようにして、心からそう言った。フレアは
「いいんだよ」と即答した。そして、白い歯をほころばせて、言った。
「お前が元気になってくれなきゃ、俺が困るんだからさ」


 食事用のトレイを持ってラウンジに入ってきたフレアへ、テーブルを囲んで
いたヘリオポリスの元・学生達が談笑を止めて声をかけた。
「キアはどうだった?」
「あー、もうすっかり元気だな。昨日の騒ぎが嘘みたいな状態だよ」
 ミリアリアの問いにトレイを片付けて答えるフレア。その明るさは、先日父の
死を目の当たりにして取り乱した少年のそれとは思えない。
「食事もキッチリ食ってるし。先生の言ったとおりだったぜ。やっぱり違うよ
なァ。凄いもんだよ」
 だが、彼が言ったその一言だけは、込められた感情がまるで違っていた。
「―――コーディネーターは」
 さらりと出てきた言葉に、一同は一瞬ぎょっとなって彼を見直す。だが、
上機嫌そうなフレアを見て、すぐに気のせいだと考える事にした。
「フレア、もう疲れたでしょ?キアの具合が私か見るから、もう休んでいいよ」
 色眼鏡をかけた少女、サニー・アーガイルが、そんな彼の様子を疲れのせい
だと心配してか、率先して声をかける。サニーとフレアの仲睦まじさを知って
いるミリアリア達にも、彼女の行動に何の疑問も持たなかった。
 しかし。
「さーて!キアに水でも持っていってやるかな」
 サニーの言葉が終わらないうちに、フレアは水をコップに注いでトレイに
乗せた。
「フレア、聞いてる?」

「キアには、早く元気になって欲しいよなぁ」
 ニコニコと笑顔を崩さず、だが、サニーの方は見ようともしないで、
踵を返すフレア。
 その態度に違和感を感じたサニーは席から立ち上がって、フレアに追いすがる。
「フレア?ねぇ、あたしが」
「―――しつっこいよ、お前」
「えっ?」
 固まるサニー。
 フレアは、トレイを片手に「なんで空気読めないのかなぁ……!?」と、
至極面倒そうに目をつぶって大仰に息をついた。
「あ、あの……あたしは、ただ」
「サニー、勘違いすんなよ。お前との事は、ママが勝手に決めた事なんだぜ。
そして、そのママはもういない。判るよな?俺の言いたい事」
「!」
 頭を掻きながら、サニーと目を合わせようともせずに、フレアは語る。
「話だけの関係だったんだし、状況も変わったんだからさぁ。そんな昔の事に
縛られる事はないと思うんだよね、俺」
「は、話だけって……そんな!だってフレア、あたしの事を……」
「まぁお互いその辺は柔軟に行こうって事で、さ」
「……」
 捨て台詞を吐いて、フレアは背を向けた。
 サニーは、まだ信じられないような表情のままで、彼の背中を呆然と
見送っていた。


(好きな人から優しくされるって、こんなに嬉しい事だったんだ)
 キアは個室のベッドに腰掛け、そんな事を思う。
 以前は遠巻きから眺めているだけだった。
 優しそうな笑顔と、大きな瞳がとても印象的な彼、フレア・アルスターに、
キアはいつしか憧れを抱くようになっていた。

 でも、自分には吊り合わないだろうな、ということも自覚していた。
 自分はナチュラルとは違う『コーディネーター』。みんなちやほやして
くれるけど、それは自分の能力を頼っての事だ。親しいと思っていた相手が、
自分の陰口を叩いている事など数知れない。そんなことを繰り返している内に、
やがて自分から相手に距離を置く様になった。そして、キアは益々自分の心が、
皆から孤立していくことが実感できた。
 そんな女に、人気者のフレアが振り向いてくれる筈がない。ましてや、彼と
同じような皆に好かれているサニーと付き合っているのなら。
 案の定、彼とはこの船では色々なトラブルを起こした。
 だが、それは全て自分の責任だ。フレアは何も悪くない。
 それどころか、フレアはそんな自分を許してくれたばかりか、励ましてくれて
さえいるのだ。
 やっぱりフレアは優しい人なんだ。キアは、そう思うだけでとても暖かい
気分になった。
 そして今、彼は自分の側にいてくれている。
 一緒に食事をして、彼の持ってきてくれた水を飲んで、楽しくお喋りをして。
 この時間だけは、大切にしたい。たとえ、フレアが自分の看病のために
側にいてくれるだけだとしても。
 そういえば。
 と、キアは、フレアの事でひとつ大切な事を思い出した。
 第八艦隊と合同での戦闘の際、ストライクに乗り込むキアに、フレアがした
行為を。
 自分にとって、初めての、キス。
 思い出しただけで、キアは頭の中を真っ白にしてしまう。
 彼にとって、あれは何だったのか?ただの『おまじない』のようなもの
だったのだろうか?いや、ひょっとすると。
 と、キアは必死でその発想を消去しようとする。

 それはない。
 フレアは、サニーと恋仲なのだ。
 そんなやましい考えをするのは彼の好意に対する侮辱というものだ。
 感謝しよう。ただ純粋に、彼の気持ちに。
 そうキアは結論付けた。
 プシュ
「フレア!」
 ドアが開く音を聞いてキアは顔を上げて、彼を呼んだ。
 彼に会えるだけで嬉しい。彼と合うだけで、話せるだけで嬉しい。
 キアにとって、フレアはそういう存在になりつつあった。
「どうしたの?ボクに何か用?」
「ああ。ちょっと頼まれてたのを思い出してさ」
 ポケットを探ると、フレアはキアに何かを差し出してきた。
「ほらキア、これ、整備の人に渡してくれって頼まれてたんだけど。ほら、
ストライクのコックピットにあったからキアのだろうって」
「……!」
 折り紙で作られた花を見た途端。
 キアの笑顔が、ガラスのように砕け散った。
 ド クンッ
 心臓が止まりかけ、眼前がブラックアウトする。
 そして、その暗闇に、強烈なビジョンが交錯した。
 宇宙空間。
 脱出カプセル。
 ドクンッ
 少女の笑顔。
 少女が渡してくれた、折り紙の花。
 ドクンッ ドクンッ

 脱出カプセルに向かう、タイプ『デュエル』。
 照準されるデュエルのライフル。
 追いすがる自分。
 ドクッ ドクッ ドクッ ドクッ
 無情に放たれる閃光。
 爆裂の、輝き。
「う……ッ」
 心の奥底に封じ込めていた記憶が、怒涛のように押し寄せる。
 自分の耳の中に響くほど動悸が急激に速まってゆく。かく、かくとキアの
身体が小刻みに震える。
「えっ?どうしたんだい、キア?俺、悪い事したのか?」
 自分の肩を掴んでうずくまったキアに、フレアはびっくりした顔でベッドに
近づくと、折り紙の花をキアの眼前に差し出した。
「これ、君のじゃないのかい?……おかしいな」
 キアの反応を不思議がりながら、フレアは腕を組んで、言った。
「じゃあ、誰 の 物 な の か な ?」
「っ!!」
 まるでそのちっぽけな折り紙に、触れれば死ぬような呪いでも篭められているか
のように。キアの表情がありありと脅えに染まる。
 そして、くしゃっと顔をゆがめると、キアのまなじりから粒のような涙が
ぽろぽろと溢れ出した。
「っは……う……ぅっううっ」
「キア?ど、どうしたんだい!」
 こみ上げてくる感情を涙とともに噴出させながら、キアはすがるように、
フレアの手の中の折り紙を両手で包む。
「ボ、ボクは……ボクはァ……」
 悲しみと、罪悪感と、そして自分の無力さへの憎しみ。押し潰すように、
そのプレッシャーがキアの心に襲い掛かった。
「あ、あ、あの子をッ……あの子をっ守れ……まもっ」
 赤ん坊のように涙で顔を濡らす少女の姿を、フレアは冷めたまなざしで見下ろし
ていた。ひどくつまらなくくだらない何かを睥睨する、氷の様な眼だった。

 だが、すぐに微笑を浮かべて屈みこみ、自分の片手を握っているキアの手の
上にもう一方の掌を重ねた。
「キア」
 そして彼女の頭をそっと撫でなから、囁く。
「君は一人じゃあないよ。俺がいる。大丈夫だ……俺が一緒にいてやるからな」
「フレア……あ、ああっ……」
 その言葉に、キアが助けを求めるように顔を上げた時。
「ん……!?」
 暖かく、濡れた何かが、キアの唇をふさいだ。
 ほんのわずかに触れただけの『それ』の衝撃は、キアの激しい脅えすらも瞬時に
掻き消してくれた。
 唇が離れ、互いの息のぬくもりが当たる。
 キアは、顔を真っ赤にすると唇を押さえ、フレアのから目を逸らした。
「ダ、ダメ。フレア、こんなの駄目だよ。こんなのって」
「駄目?」
「う、うん。だって、だってフレアは―――サニーとフレアはっ、そのっ」
 しどろもどろとしながら、キアはなんとか言葉を形にしてみる。頭が混乱し
かけて、自分が何をいているのか判らない様な状態だ。
「バカだなキアは。そんな噂を信じていたの?」
「えっ、うわ……さ?」
「彼女はただの友達だよ。俺の一番大切な人は、ここにいる」
「えっ、ええっ?」
 頬に添えた指で、戸惑うキアの涙を拭い、フレアは真摯な眼差しでキラに
語りかけた。
「俺は君の代わりにMSの操縦はできないけど、でも―――君の心は俺が守る。
たとえ誰が君を疎外しても、俺だけは、俺の心は、いつでも君と一緒だ」

「え……」
 その、フレアの言葉。
 その言葉こそ、キアがいくら望んでも誰からも聞かされてくれなかった言葉
だった。キアの瞳を、また涙が濡らす。だが、それは先ほどの涙とは違う質の
涙であった。
 歓喜の涙を溢れさせて、キアはフレアの胸に顔を埋めた。
「フレア、フレアぁ……」
 しがみ付いてくる少女を、フレアは幼子のように抱きとめて、頭を撫でる。
「キアは、いい香りがするね」
「今、シャワーを浴びたから……だよ……」
「そうか……」
 フレアは、もう一度、今度はゆっくりとキアの唇に己の唇を寄せる。
 キアも瞼を閉じ、フレアを受け入れた。
 もう、彼を拒む理由はどこにもなかった。


 ヘリオポリスの元・学生組の一人であるカズィ・バスカークは、その訪問者に
声をかけた。
「あれっ、どうしたの?フレア。こんな夜中に」
 軍服の前をはだけたままで、どこかだるそうな様子でラウンジに入ってきた
フレアは、食堂で座っているカズィにそっけない視線を送った。
「……カズィか」
「うん、オペレーターの訓練の休憩中でさ。お茶でも飲もうかと思って」
 興味無さそうにカズィの言葉を聞くと、フレアも問いに答える。
「こっちも似た様なもんだ。『休憩時間』さ。てっきりケダモノみたいに求めて
くるかと思ってたんだけど、どうやらあっちの方はコーディネートされてない
みたいでな。すぐにグロッキーになっちまった」

「え?なに?」
 小声の早口で呟くフレアの言葉が聞き取れず、カズィは聞きなおした。しかし
フレアはにべもなく手を振ってよこす。
「こっちの話だよ。お前にゃ関係無い」
「?ふぅん」
それ以上追求しないカズィを余所にフレアは紙コップに飲み物を入れ、
満たしたカップを二つ持って食堂を後にした。
「あっ、フレア。何か落したけど」
 カズィはフレアのポケットから落ちたそれを拾って声をかける。何かの
正方形の紙束のようだった。
「ん、それか。ただの折り紙の紙だよ」
「折り紙?」
「そう……ただのな」
「ああ、この前の?フレアまだ持ってたんだ」
 拾った折り紙の束を渡そうとすると、フレアは面倒そうに首を振った。
「いやぁ、もう要らねーよ。カズィにやる」
「僕だって要らないよ……こんなの」
 フレアはカズィに向けて「そういうなって」と愉快そうにいった。
「意外と便利だぜ?」
 そういってからフレアは、プッと噴き出し突然笑い出した。楽しくて楽しくて
たまらない、極上のコメディでも見てきたかのように。
「?」
 何がおかしいのか、爆笑し続けているフレアを、カズィは不思議そうに
眺めるのだった。

 「ザフト隊−ふたりとふたり」

 揺れる。
 意識が揺れる。
 ぐらり、ぐらり、闇の中で自分の体が揺れるのをイザァラ・ジュールは
感じていた。
 揺れるのは、コックピットの中で慣れている。別にどうって事はない。
 そうだ。耐えられないのは、屈辱。自分に傷を負わせた相手を倒せぬ、苛立ちだ。
 いくら撃ってもかわし、いくら斬っても避け、そしてこちら以上の攻撃を
返してくる。
 全く以って気に入らない。
 何故貴様は落ちない!?何故貴様はオレに立ちはだかる!?何故貴様はオレの
邪魔をする!?
 おのれ、おのれ、おのれ―――
「ストライクがぁぁ!」


「―――あ?」
 目が醒めると、宇宙の闇ではなく、明るい光が視界に飛び込んできた。
 どこまでも広がる荒れた岩や土ばかりの風景は、プラントなどでは見る事の
できないものだ。
「地球……。ここが……?」
「よお、イザァラ」
「!」
 生まれて初めて目のあたりにする広大な景色へ意識を奪われていたイザァラの
意識を、その声が現実に戻した。

 そうだ。イザァラは思い出した。
 自分は、地球連合軍第八艦隊とアークエンジェルを巡っての戦闘で、スト
ライクと戦っているうちに重力場に捕まってしまい、大気圏突入せざるを得なく
なったのだった。
 どうやら大気圏突入中に意識を失った自分は―――どうやってかは知らないが
無事に地球に降下し―――コックピットから救出され、誰かに背負われて移動
している状態にあるようだ。
 イザァラは状況分析を済ませると、自分をおぶっている男に目を向ける。
 褐色の肌とブロンドの髪を持ったその少年を、イザァラはよく知っていた。
「ディア……ッカ?」
 そう、ディアッカ・エルスマン。
 クルーゼ隊のチームメイトであり、Gタイプ『バスター』に乗り込む男。
 イザァラを背負って荒野を歩いている人物は、彼女の戦友であったのだ。
 敵に捕まるという最悪のケースはまぬがれたらしい。
 とりあえず安堵する。
 が、しかしあの状態でよく助かったものだ。胸の内で自分の運の良さを讃える
イザァラ。
 ふと。
(―――そういえば)
 イザァラは重力に惹かれて落ちていきながら意識を失う前の事を思い返した。
強烈なGと振動の中で、自分の機体目掛けて一機のMSの姿が追ってきたのを、
イザァラは視界に映していた気がする。
 大気圏に飲み込まれる自分を護る様に、デュエルを受け止めたバスターの姿を。
「おい!お前、あの時―――」
 思い出すと同時にディアッカに尋ねようとしかけ、イザァラは口ごもった。

 刹那に自分の考えを否定したからだった。
 いくらなんでもそんな馬鹿がいるはずがない。他人の為に、自分の命を省みず
助けにくるような奴など。口にしたら自分が自意識過剰な人間と笑われるだけだ。
「ああ、まったくあの時はヤバかったなぁ。俺とした事が重力圏に引っかかる
時間を間違えるとは、とんだミステイクだったぜ」
 イザァラが口ごもっていると、ディアッカが自嘲するようにそう言った。
 やはりそうか、とイザァラは彼の言葉に納得する。
 ディアッカは突出しすぎて重力に巻き込まれた。自分と同じ過失をしただけ
なのだ。
 そう考えれば自分の失態も少しは軽くなった気がした。
「しかしイザァラ、無茶なのはお前もだぜ。そんな体で出撃なんてな」
「フン!後一分でもあれば奴をこの手でヴァルハラに送ってやったものを。実に
惜しい事をしたものだ」
 そんないつもの調子で会話をしてから、イザァラは尋ねた。
「そう言えば―――デュエルとバスターはどうした?」
「海面に落ちたよ。大気圏突入時に受けた機体の損傷が酷くて操縦もままなら
なくてな。その前に俺達は空中で脱出したが……」
「……そうか」
「まあ、機体は後で引き上げればいいさ。ザフトの勢力圏を通りかかるような
連合の船もいないだろうしな」
 と、イザァラはある事に気がついてディアッカの背中から離れようとした。
「お、おい、降ろせ!ダメージがあるのはお前も!……つぅっ!」
「大声を出すなよ。怪我人なんだから」
 よっ、とディアッカは体を浮かせて背中のイザァラを抱えなおす。
「なぁーに、俺のバスターはお前のデュエルと違って十分エネルギーが残って
いたからな。大気圏突入にそれ程影響はなかったよ」
「し、しかし……!」

「それに、忘れたのか?このディアッカ様はクルーゼ隊でもナンバーワンの
パワフル・ガイなんだぜ。女の一人や二人、ノープロブレムさ」
 ペラペラと軽口を叩いてはいたが、ディアッカの褐色の肌に、うっすらと
汗が滲んでいるのを判らぬほどイザァラは鈍くはなかった。
 イザァラはすぐにでも降りたかったが、その意思に反するように体の自由が
効かず、大人しく従うしかないと自覚させられた。
「―――すまん、助かる」
 素直にイザァラは謝罪し、感謝する。自分の情けなさよりも、まずそうする
べきだと彼女は確信したからだった。どうも自分はこの男の前だと素直に
なれるらしい。
「二、三十キロも歩けばジブラルタルに着くだろうさ」
「ストライクは……どうなった?」
「さあな。俺たちが生き残ったんだ。おそらく生きている可能性の方が高いだ
ろうな。できればあのままおっ死んでて欲しいがね」
「くそぅっ。クルーゼ隊長に会わせる顔がない」
 歯噛みして吐き捨てるイザァラ。
 するとディアッカが声のトーンを落して、彼女へ言った。
「なあ、イザァラ……お前さ」
「な、なんだ」
 真面目な声に、イザァラがいぶかしむと、ディアッカは続ける。
「思ってたより、重いんだな」
「……!それは重力のせいだ!」
 銀髪の少女は、この上なく失礼な事を口にした少年の金髪を、今の時点で
出せる限りの力で殴りつけてやった。


 ザフト戦艦『ヴェサリウス』のブリッジの中で、萌黄色の髪をした少女が、
明るい声をあげた。

「こんな所にいたんですか、アスラン」
 アスラン・ザラは、無重力の慣性を利用してこちらに飛んでくる少女―――
ニコン・アマルフィに目を向ける。
「イザァラ達、無事に地球に降りたようです。さっき連絡がきました」
「……そうか」
 小柄で上品な仕草の、どこかの良家の箱入り娘といった風体の少女。だが、
コーディネーターはけして外見で判断する事はできないという、象徴的な
例でもある。
 このひと蹴りでへし折れそうなたおやかな娘が、クルーゼ部隊のMSパイ
ロットである事を知らぬものは、この艦内でいない。
 そしてつい先日、連合側の難攻不落として知られた要塞『アルテミス』陥落の
きっかけとなったのは彼女の乗るGタイプMS『ブリッツ』だという事は、
じきにザフト中に轟くだろう。
 だが、ニコンにとっては、そんな事はどうでもよいようだ。彼女は自分の
功績をひけらかしたりはせず、あくまで謙虚に振舞ってみせる。
 そんな彼女の性格をイザァラやディアッカには疎ましがったが、アスランは
好感を持った。スクールクラブの後輩のように可愛がり親しくしているうちに
二コンはやがて、すっかりアスランに懐いてしまうようになったのである。
「でも、帰頭は未定ですって。しばらくジブラルタルに留まるようです」
 あたかもアスランと会話するだけで幸せだとでもいうように、ニコンは
上機嫌で報告する。きっと仲間思いのアスランは、このグッドニュースに安心
してくれるだろうと期待して。
 だが、アスランがそれほど喜んでいないようなので、ニコルは言葉をとめた。
「イザァラの傷の具合は、どうなんだ」
「さァ……それはなんとも……」
 アスランのセリフを聞いたニコンは、少しムッとしたように表情を変え、
どうという事もないようにすましてみせる。
「でも心配ないですよ!あれだけの戦闘をやってのけたんですから」
「え?あ、そうだな。ニコンの言う通りかもしれない」

「そうですよ。私としては、今回の件で隊長が責められないかの方が不安です」
「それは心配ないだろう。クルーゼ隊長の功績を考えれば、隊長ですら落とせ
なかったと見る方が正しいと判る筈だ」
(そう―――クルーゼ隊が束になってすら、勝てない相手)
 自分の言葉にアスランは、その『相手』を思い浮かべる。
 どこかボーイッシュで、大人しいくせに変なところで意地っ張りな少女の事を。
 彼女の性格から軍籍にいた経緯など考えられないし、MSの操縦ができる事すら
信じられない。
 コーディネーターといえど人間だ。ナチュラルとの相違点は『才能が生まれ
つき備わっている』というだけである。学習もせずに、技術は使えない。
 しかし、あの少女は、おそらくは全くの素人同然だったにも関わらず(少なく
とも、ヘリオポリスで見たときはようやっとMSを動かせる程度だった)。我が
軍の誇るMSを次々に討ち破り、あまつさえ同等の性能を持つMSに乗り込んだ、
トップ・エースの自分達をも上回る戦闘能力をまざまざと見せ付けてくれた。
 この事実は何を表しているのだろうか。
(キア。お前は一体……?)
「アスラン?」
 顔をしかめていると、ニコンがひょいと覗き込んできた。なにか猜疑心に
包まれた、いつになくけわしい顔つきだ。
(まさか、自分とストライクの関係を疑われてしまったのか?)
 しまったと聞えぬ舌打ちをするアスラン。
 だが。
「そんなにイザァラが心配ですか?」
「―――え?」
 むくれたニコンが言及したのは、そんな予想だにしないセリフだった。
「アスラン、彼女と最近仲がいいですよね……」
「ちょ、ちょっと待てよニコン」

「駄目ですよ!ラクス・クラインって婚約者がいるっていうのに変な気を
起こしちゃ!」
「待てって!何、言ってるんだ?俺とあいつが?」
「だって、よく言うじゃないですか。『喧嘩するほど』って」
 よくわからないが、奇妙な言いがかりをつけられたアスランは、口を尖らす
ニコンへ、しきりに両手を胸の前で振ってみせた。
「ないない、それはないって!」
「本当ですか?」
「お前の勘違いだ」
 はっきり言ってやると、途端に「なぁんだ!」とようやくニコンは満開の
笑顔に戻る。
「てっきりアスランって意外と浮気性なのかな、なんて思っちゃいましたよ!」
「そんな事あるわけないだろ?イザァラに限って」
「ですよねえ。あ、そうだ!私のブリッツの事で、アスランに聞きたい事が
あるんです。一緒に来てくださいよ」
「お、おい……!」
 腕を抱えるように組まれ、アスランは強引に引っ張られていくのであった―――

作:◆8y2tpoznGkさん


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