【悪女(ワル)志向〜キア・ヤマト〜】

ボクはキア。
ナチュの親の気まぐれからこの世に生を受けた、
第一世代のコーディネーター。
ナチュとコーディーが傍迷惑な戦争を始めてくれたおかげで、
微妙な出生の私は、とばっちりは御免とばかりに
中立コロニー、ヘリオポリスに戦術的撤退(疎開とも言うね)してたの。
キャンバスで必要最低限の『優良な』交友関係も築き、
『人当たりの良い優等生』としてまあまあの生活をエンジョイしてた。
・・・まあ、優秀ゆえに、教授に頼りにされすぎるのは弊害かな。
でも、そんな及第点の日々もあの日メチャメチャに壊されちゃった。
それも、二度と顔すら見ないはずだったあいつに・・・
アスラン・ザラ、ボクと同じ(と言うのすらアレだけど)コーディネーターにして、
ボクの幼い日の黒歴史。
親ぐるみの付き合いなので無下にもできず、
『泣き虫キャラ』を演じて授業のレポートからパンの買出しまでパシらせていたボンボン。
他に友達もいないのか、やたら付きまとってウザかったから
プラントに越して行った時には一人祝賀会までやっちゃった。

すっかり記憶のシュレッダーにかけ、
忘却の因果地平の彼方に追いやってたのに、
わざわざ人の平穏な生活を破壊しに舞い戻ってくるなんて…
しかも、「これぞ運命の再会」といわんばかりに瞳をキラキラさせちゃって。
キモすぎます。超嫌いです。
と、いうわけで勘違い電波ストーカーから逃れるため、連合の戦艦に乗り込んだ今日この頃。
で、ボクの能力はパイロットにも素晴らしく適正があったらしく、
ここでもボクはいつも通り頼られる側。
まあ、時にはゴネたり、悩んでる振りしてありがたみも忘れさせない。
「パイロットは少尉待遇ですよね?」と数か月分から遡って給料払わせる約束もキープ。
上手くいけば、連合とザフトの間でボク(とストライク)の値段を吊り上げさせられる。
そのためにインパクトを与えつつ、恨みは控えめにしときたいので
ヘタレGパイロット達を撃墜してしまわないようにするのも一苦労。

それにしても、コーディーもピンキリだけども
職業軍人4人がかりで同系機種に手も足も出ないあいつらには呆れて声もないよね。
…デュエルのパイロットは真性粘着ぶりを見るに、絶対女。間違いない。
でもイージスだけはなんとしても墜とす!
あのキモい変形ぶりはパイロットの変態性を反映してるに違いない。
そういえば、変態の婚約者とも会った。
天然ぽい顔して、Gパイロット達の4倍は頭の回転が速そう。
変態の本性にも当然気づいているようで、ボク達はお互い
アレと係ってしまった不幸を相憐れむ良い友人になった。
ザフトにそれとなくこちらの「本意」を知らせるべく人質返還に向かった際も、
指名もしてないのに変態の機体がやってくるから、うっかり撃墜するとこだった。
そして人質を返しても、「お前も来るんだ!」などと婚約者の前で電波を飛ばすキティぶり。
ほら、隣で婚約者が呆れ顔だよ、ボクと同じように。
「あの船には…ボクの大事な人がいるんだよ!キミは、キミの大事な人を連れて帰りなよ!」と、
ダブルコンボで諦めさせようとしても、
「いいから来るんだ!3人で仲良く暮らそう!」などと平気で言い出す始末。
…はぁ?このボクを、妾に飼おうっていうの?
フラガ大尉が止めてくれなかったら、間違いなくイージスのコックピットは
『ミンチより酷い』状態になってただろう。

ザフトに自分を売り込むシナリオを残すためには、
なんとかして殺さずにあのキティを諦めさせないと…
そこでボクは『既成事実』を作ってしまうことにした。
となると、相手になる男が必要なわけだけど…
AAクルーには正直ろくな男はいない。
フラガ大尉は合格点だけど、あの手合いはボクみたいな年齢の子には
まず手を出さない。
となると、学生組から選ばないといけない。
唯一の一人身はカズィだけど、これは論外。
ボクとラクスの話を盗み聞きしてたDQN。
…なんで知ってるかって?
あの変態がボクに押し付けた出来損ないのロボット鳥『トリィ』。
僕の手によって、カメラとマイク内蔵の便利なスパイに生まれ変わった。
ボクは普段、トリィを使って自分の「敵」「見方」を見分けてきた。
まあ、あのヘタレから流れるであろう情報は、
ボクが悩みながらも、かっての親友(笑)と戦っている可愛そうな女の子って宣伝に利用させてもらうけど。

で、トールはミリィ一筋だから望み薄。嫌いじゃないんだけどねー。
となると、メガネの彼氏、遊び慣れてそうなあのフレア・アルスターがいいな。
コーディー嫌いの上、この前変態撃墜に執念を燃やしてたら、うっかり
友軍の艦(たしかフレアのお母さんが乗ってたんだっけ?)の救出が間に合わなかったのを
怨んでるみたいだけど、ある意味一番『割り切った』関係が期待できそう。
イケメンだし、まあ実際メガネには不釣合い感アリアリだし、
正直初体験そろそろ済ませときたいってのもあるしー(ミリィにその点で自慢されっぱ無しなのもね)
さて、そうと決まれば善は急げ。
トリィを通じて、廊下をこちらにターゲットが接近するのを確認と、
大気圏突入時の高熱でいまだ寝込んでることになってる(ホントは全然へーきだけど)
ボクが「悪夢にうなされてるかのような」悲鳴を上げたら十中八九
この部屋に駆け込んでくるだろう。
さて、トリィにはちゃ〜んと一部始終、録画しといてもらわないとね…
ボク、キア・ヤマト。
(便利な)友達たちを守るため、
幼馴染の親友(藁)と、戦い、葛藤する悲劇のヒロイン(んーいい響き♪)。
で、今日はフレア・アルスターの来訪(@初H予定)を待ちつつ、
前回の大気圏突入時の戦闘の、
ストライクのカメラ記録の改竄が上手くいったか、
絶賛確認中。
まあ、大気圏突入中の作業だったから・・・
スーツの中は蒸れるし・・・
そもそも、デュエルが逃げ回るからこんな面倒な・・・
っていうか、戦闘中にボクの射線に入ってくるのがいけない・・・
なんだって、ボクがわざわざこんな・・・ブツブツ
映像再生、と………ん〜よしよし!カンペキ!
ふふ、酷いなァ♪デュエルのDQN女パイロットは。
民間のシャトルを撃ち落すなんて、最低ー。
まったく、こんな悪いパイロットがいるから、
ボクみたいな正義のヒロインの出番が尽きることがないんだよね〜♪

・・・これまで、ボクっていう人間の本質を他人に見抜かれたことはない。
そうやって、ナチュラルのなかで暮らすコーディネーターという
微妙な立場から自分を守ってきた。
この生き方は変えるつもりもない。
ヘリオポリス組は、トール、メガネは問題外。
除き趣味のDQNは、それとなく流す「ボクの顔」を鵜呑みにしてくれるから
まだ容易い。
一番の強敵は、ミリィ。
あれで落ち着いた観察眼を持っている賢い子。
自分が好意を持っている、トールの方から告白するように仕向けた「上手い」子。
まあ、女の子の内3割は持っている程度の賢さだから、多少気をつける程度。
アークエンジェルの軍人達も、ほとんどは大丈夫。
艦長も副長も、それぞれ違う意味で視野が狭いから、
そんなことまで頭が回らない。
今のところ、二人のバランスの悪さが艦の運行にプラスに働いてるけど、
あれはいつか破綻するだろう。
ボクも、その時までには身の振り方を見極めなきゃ。
・・・艦で一番手強いのはフラガ少佐。
正直、あの手合いに100パーセント誤魔化しきれるなどと過信はしてない。
そこで、少佐の前では多少情緒不安定気味な、扱いづらい女の子を演じている。
これなら、どれが本当のボクかは見極めきれない。

ン・・・?
あ、フレアが来たみたい。
 「熱、大丈夫か?・・・ほら、新しい水」
 「ん、ありがと。あ、フレア・・・」
小動物のように、弱弱しく・・・
 「どうした、キア?」
ボクに微笑みかけ・・・目が笑ってないよ、フレア。べつにいいけどさ。
 「その・・・ありがと」
 「いいんだよ、キアには元気になってもらわないとな!」
そこだけ笑っていない瞳に、復讐心がありありと。
フレアって、本心隠せないタイプなんだね・・・
ボクが見た目同様のお人よしだったら、それでも気づかないんだろうけど・・・
 「そうそう、整備の人からお前にこれ渡してくれって・・・
 ストライクのコックピットにあったからキアのだろうって」
 「! ! !」

あ、あれは・・・
フレアがポケットから「それ」を取り出した瞬間、
ボクは言葉を失い瞳を見開いた。
あれは・・・
あれは・・・
あれは・・・
・・・なんだっけ?
それが民間人の名も知らぬ子供に、
いつぞや押し付けられた折り紙だと気づくのに数秒の思考を要した。
捨てたと思ってたのに・・・
とりあえず、これでようやくフレアの意図は理解した。
そういえば、あの子が乗ったシャトルは、
『ボクの救助が間に合わず、デュエルに撃墜された』んだったね。
・・・まあ、そういうシチュエーションも悪くないかな?
ご期待通り、動揺した様子で泣き出してみせるボク。
・・・人間の身体で鍛えられない箇所はない。
涙腺だって、例外じゃない。
コーディーだって、才能を伸ばす努力を怠れば凡人と変らない。
ボクとヘタレGパイロット4人組の違いは、そこにもあるんだろうけどね。

泣きじゃくるボクの顔に手を沿え、額を合わせるフレア。
 「俺が、君の支えになる。俺が・・・君を守る」
・・・恥ずかしいことを平気で言うなぁ。
まあ、こういう状況じゃこれくらい歯の浮く科白の方が効果高いもんね。
そして、ゆっくりと近づいてくるフレアの顔。
唇が触れるだけの軽いキス。
ミリィが、「気持ちが移るみたいで好き」と言っていたように心地良い感触。
嫌いじゃない。
一度唇を離し、ボクの瞳に微笑みかける。
そして、今度は下唇を、上唇を交互に唇で優しく挟み、味わうようなキス。
左腕でボクの腰を少し乱暴に抱き、右手は後ろ髪を優しく撫でる。
 「あ・・・?」
突然の舌の進入に怯んだボクを抱きかかえ、ベッドに押し付ける。
・・・こうやって慣れた手つきで扱われるのも、悪くない。
弱弱しく、抵抗する(ポーズの)手を端に置き、
ボクの上着に手をかける。

まあ、それから先は多くの女の子の通る、
ありふれた『初体験』の模様なのでここではあえて語らない。
ただ、一つ重大な発見が。
どうも、ボクは「そっち」用にもコーディネートされていたらしい。
・・・コーディーの一世代目を産み出すのは無料じゃない。
ボクくらい、秀でたコーディならば、
費用に対する見返りも当然必要だろう。
そのことで、両親をどうこう言うつもりもない。
ただ、ボクはそれを自分のために楽しませてもらう。
それだけ。
抱かれた今でも、フレアに対してはいかなる感情も持ってはいない。
酒や煙草を楽しむ者が、その「酒や煙草自身」に特別な感情は持たないだろう。
もちろん、中には特別な感情を込めて、それらを嗜む者もいる。
ただ、ボクはその中の前者だ、ということ。
お互いベッドの中で背中を向け、
ボクはモニターの中一面に広がる砂漠を見ながら、まどろむ。
めんどくさいことを考え出す前に、寝てしまうに限る。
この砂漠で思わぬ再会が待っていることを、ボクはまだ知らない。

作:・・・・ ◆iFt60ZwDvEさん


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