「おらならだまされんぞ、こういうふうに、キツネの首の根っこを
ぎゅうっとつかまえてな、肥だめに突き落としてやるわい」

村一番の力持ちで、すもう取りの男が、首の根っこを
つかまえたように、両手の指を鷲の爪のように曲げて
力を入れると、ポキポキと指がなりました。

 「ヒャー、あんな大きな手でつかまえられては、ほんとに
首の骨が折れてしまうわい」太郎作は、思わず首をすくました。

                           つづく ↓   むかし、森前の秋葉神社の裏の森に、キツネが住んでいました。

お風呂に入れてもらおうと、近くの家へ出かけた太郎作がなかなか
帰ってこないので、家の人が探しに行くと、畑の肥だめに入って、
「いい湯だなぁ~」と鼻唄を歌っていました。
キツネにだまされていたのは、太郎作だけではありません。
村では何人も何人も、キツネにだまされていたのです。
きつね と すもうとり
 
      
 

 「おい、おすもうさんよ、なにしておいでじゃ」おすもうさんは答えました。
「キツネめを、ここへ落としてやるのじゃ」太郎作は「アッハッハッハ」と
大声で笑いました、「なにがおかしいんじゃ」すもう取りはムッと怒った顔をしました。

でも太郎作の笑いは止まりません。「おすもうさんよ、よう目を開いてみなされよ、
お日さまが、もうあんなに高いぞぇ」といいながらも、太郎作は笑いつづけました。
お相撲取りは、一晩中、肥だめをかき回していたのです。
お相撲取りが、野道で出会った和尚さんは、キツネでした。

                                おしまい 「そうだ、和尚さんの言うとおり、キツネは悪がしこいから気をつけにゃいかん、
でもさ、おらだまされんぞ、首の根っこをぎゅうッとつかまえて
肥だめに突っ込んでやるわい」
 すもう取りは、近くの大きな肥だめのある畑に入って、肥柄杓でかき回しました。
くさい匂いがプンプンとします。「これならキツネめも閉口するじゃろう」と
すもう取りは、また、くるくるとかき回しました・・・・・。  夜になって、すもう取りは、キツネの出る秋葉神社の方へ歩いて行きました。
「おすもうさんよ、こんなに遅くどこへおでかけじゃえ」野道ですれ違った
和尚さんが声をかけました。「へぇ、悪いキツネが出るからのう、
とっちめてやるつもりだ」「そうかえ、気をつけて行かっしゃれよ、
キツネはなかなか悪がしこいからのう」と和尚さんは、おすもうさんの
肩をポンとたたいて、「しっかりやりなされ」とはげまして行きました。