DVD/LD リスト:オペレッタ(初演年代順)

なお、モーツァルトとヤナーチェク以外の殆ど全てが、ここに上げたLD/DVDが唯一の手持ち全曲盤です。という人間のコメントであることを予めご承知ください。( )内はこのリストに載せた日です。  

オッフェンバック作曲「天国と地獄」(1858)DVD
ミンコフスキ指揮リヨン国立歌劇場管弦楽団
主役のデッセイはブックレットの写真より遥かにきれいでスタイルも抜群ですが、肝心な音楽の方は余りにも有名な「カンカン」を除いて取るべきものがありません。その「カンカン」にしても「こうもり」と比べたら生気に乏しいと思えます。見た目優先の歌手陣で、歌の方も主役級はまずまず以上ですが、端役はかなり落ちると見ています。(02.07.13)
オッフェンバック作曲「美しきヘレナ」(1864)DVD
アラーズ指揮シュトゥットガルト放送交響楽団、モッフォ、コロ
ユニテルのオペレッタシリーズの映画仕立て。パリ初演の作品ですが、このDVDはドイツ語版です。本来(仏語版?)では、乱れた貴族社会への風刺のピリリと効いた作品、らしいのですが、このDVDでは余りにも馬鹿馬鹿しい筋立てになってしまっています。音楽が実は弱いのも、脇役陣の歌が弱いのも、「天国と地獄」と同様です。ドタバタ芝居と割り切ったコロとモッフォが「チャルダッシュの女王」よりも生き生きとした表情で演じているのが救いでしょう。(08.10.19)
J.シュトラウス作曲「こうもり」(1874)DVD
ボニング指揮コヴェントガーデン。
英語版と知らずに購入。梅田のディスクピアなどという品揃えの少ない店に入ったのが運のつき、そうでなければ当然クライバー指揮のを買っていたでしょう・・・とはいいながら、まあこんなものでしょう。いずれにせよ非常に好む作品とはなりそうにありません・・・というのはクライバー盤を見るまでの感想です。「こうもりの復讐」とは何だったのか、今一つよく分からない第3幕です。サザーランドの引退披露になったガラの場面は正直な所、長すぎます。(01.07.15)
J.シュトラウス作曲「こうもり」(1874)DVD
クライバー指揮バイエルン国立歌劇場
リージョンコード0の輸入盤ですが日本語訳なし、日本盤があるからでしょうが、それにしても半値以下なので買う気になりました。これはいい! コヴェントガーデンの英語板が細かい説明を加えているのが、結局様式を外していてそれが流れを絶っていたのが良く分かりました。同じストーリーのはずなのに、これなら「こうもりの復讐」が腑に落ちるのです。わざわざ同じ迷い道に来ることはありません、このクライバーの日本盤をお勧めします。
歌手ではファスベンダーが、オルロフスキーってこういう役だったのか=たとえ上手くてもカウンターテナーの役では無い=と思わせてくれたし、ブレンデルのファルケも力量の違いを見せつけてくれました。他も軒並み素晴らしい!(01.12.08)
J.シュトラウス作曲「こうもり」(1874)DVD
ベーム指揮ウィーンフィル、ヴェヒター、ヤノヴィッツ、ヴィットガッセン
ユニテルのオペレッタシリーズの映画仕立て。クライバー盤と同じシェンク演出なので、あちこち違う中で頻繁に既視感に襲われます。歌手ではヤノヴィッツがなんともお綺麗で、ヴィットガッセンの怪しい雰囲気もいいです。ヴェヒターはクライバー盤より少し若いですが、白黒の「ダントンの死」(未紹介!)での格好よさにくらべるとやはり年を取っています。クライバー盤に慣れているとベームの指揮がかったるいです。ボニング盤よりはいいと思いますが、普通にはクライバー盤を先に視るのでしょう。(08.09.14)
ヨハン・シュトラウス作曲「ヴェネツィアの一夜」(1883)DVD
グルント指揮ミュンヘン放送管弦楽団
ユニテルのオペレッタシリーズの映画仕立て。「ジプシー男爵」とは違って、著名オペラ歌手は余りいない様子、「オペレッタ歌手」で揃えたのでしょう。チボレッタ役のミゲネスが後にミゲネス=ジョンソンの名で映画版「カルメン」で出ていますが、この人も主にオペレッタ/ミュージカル畑の人だったはず。映画仕立てだと声の大きさは殆ど関係ないので大歌手である必要性は薄いのですが、それにしても全般に歌手陣というか役者陣の演技が軽量級のような気がします。それもこれも無理のありすぎる台本が一番いけないのでしょうか。ドタバタ喜劇とはいえ不自然すぎる展開で時々白けてしまいます。以上否定的な書き方から入ってしまいましたが、シュトラウスの音楽が十二分に豊かなのが救いです。「ジプシー男爵」よりはずっと楽しめました。(08.10.05)
ヨハン・シュトラウス作曲「ジプシー男爵」(1885)DVD
アイヒホルン指揮シュトゥットガルト放送交響楽団 ジークフリート・イェルザレム、ジャネット・ペリー、ウォルフガンク・ブレンデル
ユニテルのオペレッタシリーズの映画仕立て。著名オペラ歌手が多数出演しているのはご覧の通り、ヒロインのエレン・シャーデ(ニューヨーク人なのだから”シェイド”のような気もするが)の名前も私には「フィエラブラス」で見覚えがありました。但し、皆さん舞台で歌うようには歌っていません。特にイェルザレムの声の出し惜しみが目立ちます。ストーリーも「この人物は実は・・・」の連発で進める実に強引なもので、ハンガリーでのロケのリアリティとは思い切り合いません。音楽の方もウィーン風味(と私が思っているもの)の部分は良いですが、ハンガリー風味(同)の部分は一段落ちるように思っています。「こうもり」「ウィーン気質」の方が楽しめました。 (08.09.28)
ホイベルガー作曲「オペラ舞踏会」(1898)DVD
マッテス指揮 クルト・グラウンケ管弦楽団
ユニテルのオペレッタシリーズの映画仕立て。「コジ・ファン・トゥッテ」を男女逆にして、人数も増やして、でもあっけなく浮気に走るので手短に済む、という風情のドタバタ劇。音楽も歌唱もあまり印象に残りません。オペラ歌唱からはかけ離れています。ヒロイン二人が美人なのが取り柄でしょう。 (09.03.08)
ヨハン・シュトラウス作曲「ウィーン気質」(1899)DVD
パウリク指揮 クルト・グラウンケ管弦楽団、コロ他
ユニテルのオペレッタシリーズの映画仕立て。オペレッタの場合は比較的映画仕立てでも受け入れ易いような気がしています。但し舞台で「メリー・ウィドウ」を演じた時には生き生きしていたコロの眼が死んでいるのが残念、舞台上でないと燃えない根っからの舞台人なのでしょうか。このDVD入手のきっかけとなったメルビッシュ音楽祭ライブ(BS放送)と比べると、そのコロはトロストより良いとはいえませんが、カリアリ嬢役がバレリーナにちゃんと見えるところでは勝っていて、筋立てもこちらの方が多少は自然です。メルビッシュライブ共々十分楽しめます。 (08.09.07)
ヨハン・シュトラウス作曲「ウィーン気質」(1899)DVDで出ています。BS2から録画したので、この(←)パッケージは持っていません 。
ビーブル指揮 メルビッシュ音楽祭管弦楽団、トロスト他
米amazon.comからリージョンフリーDVD(英仏伊西語字幕付き)として出てます。出演者も同じようなので、多分同じ収録だと思います。オペレッタシリーズ購入のきっかけを作った、大のお気に入り映像です。同じメルビッシュ音楽祭でも「メリー・ウィドウ」よりずっと良く出来ています。マイクは胸元ではなく頭に固定するタイプ、アップになると目立ってしまいますが、オペラ歌手の声を聞く快感が感じられる音で録れています。何より出演者の「華」に大差があります。
男声陣で、まず主役のトロストが格好良いです。「元堅物の女たらし」役を、どちらかというと「只の女たらし」寄りですが、生き生きと演じていてコロより遥かに良いです。侯爵と従者をセラフィン父子が演じていて、これもユニテル盤よりずっと良い。女声陣では、ガブリエーレ役のナーデルマンは貫禄美人で、ユニテル盤の人以上に良いです。ペピ役はどちらの盤もそれぞれ良いですが、カリアリ嬢役だけは、どうみてもバレリーナに見えない非筋肉質体形のクロプチャールではユニテル盤のコラーの勝ちです。踊れるカリアリ嬢であれば当然踊りを披露する演出としたのでしょう。
ただ、ガブリエーレがペピの方をバレリーナと思い込んでしまう、というストーリー展開の邪魔をしないようカリカリ嬢には踊らせなかった、という深読みも出来ます。このガブリエーレの誤解はそれでも釈然としませんし、そもそも話全体が無茶苦茶ですが、映画版なら気になり勝ちなリアリティの欠如も舞台上映では気になりません。そんなものだ、と受け入れてしまえば、シュトラウスの名曲ばかりをつらねた超豪華メドレーの音楽を堪能できます。制約の多いはずの演出も舞台の広さを生かした豪華なものです。(09.04.25)
レハール作曲「メリー・ウィドウ」(1905)DVD
コンスタンティン・シェンク指揮ブラティスラヴァ・フィルハーモニー管弦楽団
オペレッタの名作の、原語版としては初のDVDが出たので即買いましたが、メルビッシュ音楽祭の屋外ライブ、残念ながら声は胸元のマイクで取っているらしく、音場も何もあったものではありません。実力ある歌手達が歌っているようですが、本気で出している声ではないのでオペラ/オペレッタを観ている気になれません。なまじ実力通りの声を出すとマイクがクリップしそうな感じです。これではミュージカルだぁ・・・。全体に美形だし踊りも上手いし、ミュージカルでも一向に構わない方にはお勧めしてもいい一枚なのでしょう。私としてはちょっと・・・(05.04.24)

レハール作曲「メリー・ウィドウ」(1905)DVD
リヒター指揮ベルリンドイツオペラ
屋外ライブに少々がっかりしたので、ルネ・コロのダニロにギネス・ジョーンズのハンナという夢のような組み合わせの1979年ライブ(HouseOfOpera盤)を買ってみました。この両人だけでなくカミーユもやたらと立派だと思ったら、ジークフリート・イェルザレムでした。こういう人たちが劇場で本気で歌っているのです、歌という面では屋外ライブに圧勝です。しかし、殆どモノラルのような音と貧弱な画質で、これはこれで欲求不満になりそうです。(05.07.24)
←オペラシェアで遥かに優秀な音と画質のを手に入れています。
レハール作曲「メリー・ウィドウ」(1905)DVD
W=メスト指揮チューリヒオペラ
リージョンコード0の輸入盤で日本語対訳つき。これ最高です。オペラ的声楽の見地からは、ベルリンドイツオペラ盤のコロ/イェルザレムの男声陣には分が悪いし、ハンナ役も高域が苦しい分ギネス・ジョーンズにはちょっと勝てません(ヴァランシェンヌ役はこの盤が一番いい)。が、両方の舞台を実際にいい席で観ることが出来たなら、そんなのは「重箱の隅」で、「どちらも文句無く最高!」だったろうと思うのです。どちらの歌手陣もオペラッタとして最高の楽しさを満喫できるだけの声・容姿・演技・動きを提供してくれます。ジョーンズの古風な美しさにも文句のつけようが無いのですが、こちらの女声陣の現代的な美しさも素晴らしい。それなら画質音質が大幅に良く−−何といっても録音上手のチューリヒの収録です−−、字幕まで付くこちらの方が労せずして幸せになれます。(05.10.10)
ファル作曲「ドルの女王」(1907)DVD
グルント指揮クルト・グラウンケ管弦楽団
ユニテルのオペレッタシリーズの映画仕立て。オペレッタとミュージカルは多分境目なく繋がっているのでしょうが、この作品は作品年代とドイツ語であることを忘れてしまえれば、ミュージカル映画にしか見えません。(どこまでがこのDVDでのアレンジなのか知りませんが)この年代でこうもミュージカルを先取りしていた点で音楽劇史上で注目すべき作品なのかもしれません。主役の華とちょっとした毒がないのを除くと、「マイフェアレディ」と同じような感じで見ておれます。見栄えまあまあの歌手陣も全てオペラ風の発声ではなくミュージカル風の発声で揃っていて、むしろ違和感がありません。
たわいも無いお話で予定調和的展開にも無理は無く、「後期レハール」の一部のように見ていて辛くなることは全然ありませんが、しかし繰り返し見るほどのものでもないような気もします。(11.04.09)
レハール作曲「ルクセンブルク伯爵」(1909)DVD
ゴールドシュミット指揮クルト・グラウンケ管弦楽団、ヴェヒター、クンツ、スーキス
ユニテルのオペレッタシリーズの映画仕立て。「メリー・ウィドウ」の次のレハールのヒット作ということですが、音楽もストーリーも「メリー・ウィドウ」には一歩譲るように思います。
しかし、この一枚、スーキスの美しさに尽きます。パッケージ写真でもこれしか知らなければ十分に美しいと見えるかと思いますが、実は映像中には遥かに美しいカットが無数にあります・・・ヴェヒターと二人並んでカメラ目線のカットはこれしか無かったのかな?。夫唱婦随風の、オードリー・ヘップバーンよりもイングリット・バーグマンよりも古風な美人で、この人を見ているだけで幸せになってしまいます。声の方はオペラ歌唱としてはどうか、ということになってしまいますが、音声の編集が自由に出来る映画仕立てのお陰でかなり助けられているようです。こういうところは映画仕立ての利点と言えるでしょう。全体に美男美女を揃えていて、ヴェヒターも期待を裏切らない格好よさで、こちらは歌唱も立派です。(08.09.21)
レハール作曲「ジプシーの恋」(1910)DVD
ヴァルベルク指揮ミュンヘン放送交響楽団、ベリー
ユニテルのオペレッタシリーズの映画仕立て。「ジプシー男爵」と対比しますと・・
「ゾリカは自分の婚約パーティーの晩に、自由なジプシーの生き方にあこがれ出奔して飛び込んでみたものの、盗みや物乞いを強いられ、あこがれの男には貞操を誓ってもらえず、で絶望したが、実は全て夢でございました」、で締めてしまう強引なストーリーは「ジプシー男爵」のさらに下を行きます。このDVDでは原作と違うところがあるというので調べてみましたが、夢で締めるのは原作どおりで、これでは台本作者が何を言いたかったのか、さっぱり分かりません。
主役のジャネット・ベリーは貴婦人役より「ちょっとかわいい小娘」が断然似合ってしまう人で、服を着たまま川で泳ぐシーンではちょっとにやついてしまいます。「ジプシー男爵」ほど有名ではない歌手陣はあちらよりしっかり歌っていますが、映像と響きが全然合わないのは同様です。
ロケ風景の「肥やし臭さ」は多少マシですが、似たようなものです。レハールが付けたハンガリーないしルーマニア風音楽は「ジプシー男爵」のそれよりもサマになっていて、都会風音楽との対比もきれいです・・・しかし、このストーリーではどこを楽しめばよいのか良く分からない、というのが正直なところです。(09.04.19)
カールマン作曲「チャルダーシュの女王」(1915)DVD
グルント指揮クルト・グラウンケ交響楽団、 モッフォ、コロ
ユニテルのオペレッタシリーズの映画仕立て。オペレッタから良質のミュージカル映画にかなり近づいたところにあり、中々楽しめます、と最初に断っておいて、、、
主役二人には何かそぐわないものを感じます。モッフォから見ると、気の強そうな堀の深い美人顔とオペラ歌手にあるまじきスタイルを生かした好演なのですが、ミュージカル映画としてみると、モッフォとコロだけが妙に重たいのです。コロの方はベルリンの「メリー・ウィドウ」の基準からでは好演とも呼びにくいです。オペラ歌手の声量を全く要求せずにミュージカル映画として撮るのなら、オペレッタ/ミュージカル畑の名手達と思しき共演陣だけで揃えた方が統一感があったような気がします。「美しきヘレナ」より全体としての出来が遥かに良い分、そぐわなさも目立っているようにも思えます。「ウィーン気質」のバレリーナ役のコラーが準主役のスタージをここでも好演しています。(08.10.26)
カールマン作曲「マリッツァ伯爵令嬢」(1924)DVD
エーベルト指揮ウィーン交響楽団、コロ、エルツェベト・ハジ、コラー
ユニテルのオペレッタシリーズの映画仕立て。私には好きになれる面となれない面がどちらも強く出ている一枚でした。オペレッタにはシャンペンの香りが似合うという思い込んでいる私には、「ジプシー男爵」と並んで家畜多数出演の「肥やし」の臭いがしてきそうな画面はどうにもピンと来ません。少なくともホールの残響たっぷりの音の響きは屋外の風景とは全く合っていません。ストーリーに無理があるのはオペラ/オペレッタの常とはいえ、マリッツァ伯爵令嬢の心理の変化にも無理があり過ぎて付いて行きかねます。逆に良かったのは、期待していなかったコロの歌唱です。この一枚だけは本気で歌っていて、しかも「そぐわない感じ」にもなっておらず、立派なものです。タイトルロールはモッフォでも似合っていたでしょうが、ここでのハジもしっかり歌っていてこれも立派、このシリーズでは常連のコラーも安心して見ていられます。(08.11.03)
レハール作曲「パガニーニ」(1925)DVD
エーベルト指揮クルト・グラウンケ管弦楽団、ストラータス、コラー
ユニテルのオペレッタシリーズの映画仕立て。「ロシア皇太子」と同じく受け入れ可能な「後期レハール作品」でした。「ロシア皇太子」と似た設定で貴賎が男女で入れ替わったようなものです。
ただ、「ロシア皇太子」では、出てくる音楽の変化の大きさが全てプラスに聞こえていたのが、この作品では不自然と思えるところがあります。いつものレハールの語法が性格破綻者パガニーニに合わないとも思えますし、パガニーニのヴァイオリン演奏といつものレハールの音楽が違いすぎるとも思います。ので、「ロシア皇太子」の方が少し好き。
ストラータスが出てくるたびに「合う」「合わない」と拘っている気がするのですが、この役は珍しくも「中くらい」です。声の調子は良い方でしょう。脇役のコラーと二人、割と似たタイプの美人です。パガニーニ役も性格破綻者の天才に見える容姿と演技です。この人がヴァイオリンをかなり弾けるのも間違いなく、それなのに姓名以外の正体が何も分からなくなっている、というのは不思議な話です。その他大勢の歌手にかなりの下手が混じっているのはご愛嬌でしょう(09.06.21)
カールマン作曲「サーカスの女王」(1926)DVD
ベールケ指揮クルト・グラウンケ管弦楽団、ハルシュタイン、ショック
ユニテルのオペレッタシリーズの映画仕立て。映画版の方の「ウィーン気質」でヒロインを好演していたハルシュタインが、メイクの違いで一段と奇麗に見えます。どちらでもタカビーな貴婦人の雰囲気を良く出しています。「ジュディッタ」では単なるオッサンにしか見えなかったショックが「軽業師に身をやつした侯爵」役ですが、肉体労働者的雰囲気と体形がこの役には比較的合っていると思います(ショックが「マリッツァ侯爵令嬢」に出演している映像があり、そこではコロよりずっと農場管理人らしく見えていました)。
音楽はほぼ印象に残っていません。歌の上手下手も関係なく歌付き映画として見てしまったような気がします。しかしそのストーリーは私には受け付けがたいものでした。無理のありすぎる心境変化の連続に鼻白んでしまいます。それぞれ種類は違いますが、「ジプシー男爵」「ジプシーの恋」「ジュディッタ」と並ぶ最低ランクと思います。「メリーウィドウ」ばりのヒロイン登場シーンはともかく、ショック演ずるミスターXの登場シーンでは「道化師」の「衣装を着けろ」みたいな歌詞から入ってびっくりしますし、その先もミスターXの心理描写には付いて行き難いものが続きます。罠にはめられた結婚式のシーンで、隣の一組が誓いの言葉の前に正体を明かしているのですから、ミスターXも同じように正体を明かして本名で愛を誓って大公の鼻を明かす、で終わらせればオペレッタとしてはまあまあだったのに、と思ってしまいます。映像としては奇麗な方だけに、このストーリーが残念です。(09.06.28)
レハール作曲「ロシアの皇太子」(1927)DVD
マッテス指揮クルト・グラウンケ管弦楽団、ストラータス
ユニテルのオペレッタシリーズの映画仕立て。「ジュディッタ」でびびって避けていた「後期レハール作品」の一つですが、これは受け入れ可能でした。ハッピーエンドとは言えませんが、これなら見ていられます。
にぎやかなところ、しっとりしたところ、シーンに応じたメロディがすいすい出てくる感じでレハールの音楽が豊かです。ロケでなく、野外シーンもセットで録っているのですが、この方が室内収録の音響とのミスマッチがなく、むしろ自然に聞こえます。
ストラータスが「耐える美少女」を好演しています。ストラータスはこうでなくては。カバー写真で見比べても「ジュディッタ」よりずっときれいです。但し声の調子は良くありません。皇太子役のオックマンも憂鬱な皇太子に見えます。ストラータスが「身分違いの恋」に夢中になってしまうのを納得させるまでの魅力というには無理がありますが、やむを得ないでしょう。最初の方に出てくるコサックダンスが凄い迫力で、これだけでも十分見物です。(09.05.05)
レハール作曲「微笑みの国」(1929)DVD
エーベルト指揮シュトゥットガルト放送交響楽団、コロ、コラー
ユニテルのオペレッタシリーズの映画仕立て。「後期レハール作品」の中でも、私には「ジュディッタ」に次いで厳しい方になります。主役の描き方を始めとして、ちぐはぐ感が強いです。
コロは「マリッツァ伯爵令嬢」に次ぐ熱唱なのですが、歌っている歌詞は「私達はいつも微笑んでいる」・・・。控えめで耐えるキャラのはずなのに、破局の瞬間は男尊女卑丸出し・・・。減五度の不吉な音形が、東洋人が仮面を脱ぎ捨てて本性がキバを剥く場面を意味していた、らしいことは事後的に分かりましたが、その音形が東洋的でもなんともない・・・。
いいところも多々あります。コロ、このシリーズでは常連のコラー、若き日のハインツ・ツェドニク、ヒロインのヴィルギット・ピッチュ=サラータ、と歌唱の水準がこのシリーズではかなり高い方です。このヒロイン、ブックレットによると詳しいことが分かっていない方らしいですが、「ルクセンブルク伯爵」のスーキスに次ぐ美貌で、歌はスーキスを上回ります。カバーの写真よりさらにお奇麗です。原作が北京が舞台のところを架空の国ブラトンガに移していて、これが何とも国籍不明なのですが、「蝶々夫人」みたいな日本の要素は無さそうな点だけでもほっとしました。レハールの音楽は申し分なく美しいのですが、それでも全体として余りいただけない、と思っています。(11.03.19)
レハール作曲「ジュディッタ」(1934)DVD
エーベルト指揮ベルリーナー・シンフォニカー、ストラータス、ショック
ユニテルのオペレッタシリーズの映画仕立て。これだけ暗い話をオペレッタと呼ばれても困ってしまう・・・と、解説を読んでみると、作曲者も「オペレッタ」ではなく"Musikalische Komoedie"=「音楽喜劇」と名づけているそうで。それにしても喜劇ではないだろう、これは。。。
最近でこそスタイルの良い美人オペラ歌手も珍しくなくなりましたが、ストラータスはその先鞭をつけた一人でしょう。ヴィオレッタ(椿姫)やネッダ(道化師)のような「薄幸の佳人」で高い評価を受ける一方で、サロメやこの「ジュティッタ」のような「魔性の女」役でも出ています。で、私見では後者は「製作者の勘違い」です。ストラータスに似合うのは「薄幸の佳人」であり、断じて「魔性の女」ではない、と信じています。カバーの写真でもストラータスってもっと美人のはずなのに、と思ってしまいますが、映像中でもこんなものです。
収録当時32歳だったストラータスの相手役のショックが55歳では、アップの多い映画仕立てには幾らなんでも視覚的に無理がありすぎます。ロケにも金をかけた映像なのでしょうか、モロッコの砂漠の風景も私がオペレッタに期待するものからはかけ離れています。(09.04.12)

TOPへ戻る