第2巻:バラード、伝説曲、ポロネーズ お勧め度:B

有名曲が並んでます。第1巻に続き題名からしてショパンの影響がはっきりしているという以上に、内容的親近性では第1巻の比ではありません。良くも悪くもショパンと露骨に比較されてしまいます。春秋社から楽譜が出ていれば有名という規準にすると、伝説は2曲とも、バラードとポロネーズは各2番、ですか。この「各2番」についてfj.rec.music.classicalで論戦に参加したことがあるのですが、全参加者とも「2番」を余り評価しない、で一致していたのです。お一人の意見はバラードもポロネーズもショパンに挑戦して敗れた記録に過ぎないというもの、別の方は1番はどちらも素晴らしいという意見。そして私は当時も今もバラード1番は取らないけれどポロネーズ1番は取ります。

バラードだと直接ショパンと比べてしまいます。「バラード第1番」(1845-1848)は気楽に聞き流せばいいのですが、構えてかかると冒頭から調子が狂います。ショパンのバラード第1番に似ているかな、と思った次の瞬間にずっこけてしまうのです。これよりはまだ「バラード第2番」(1853)の方が好きです。きれいなところも沢山あります。しかし冒頭を始めとして鈍重なところも多く、12分も続けられるとややうんざりすることも否めません。悪い曲ではないけれど、もっと注目すべき曲は沢山あります。先を急ぎましょう。

2曲の伝説曲、「アシジの聖フランシス:小鳥への説教」「波をわたるパウロの聖フランシス」(1860-1863)は通俗性と内容の両立、素人でも努力すれば手に届くところにある難易度(と思いますが?弾こうとしたことは無い)からしてリストがもっと知られるためには最も重要な種類の曲と思います。このページを御覧の方でまだこの2曲をご存知無いとすれば、一聴をお勧めします。・・・ですが、ここでのハワードさん、少しそっけない。この先でもしばしば有名曲になるとそっけなくなる傾向のあるハワードさんです。勿論その分非常に上品でもありますが。特に第2曲など、もう少しゴリゴリやって欲しいとも思うのですが、これがリスト・アレルギーが無いとはいえない現代に対するハワードの説教姿勢なのでしょうか。

Berceuse(子守歌)」(1863、第2稿)、同名のショパンの曲に挑戦というより本歌取りしたようなきれいな曲です。多分ショパンのに比べると弾くのは難しいのだろうな。「即興曲」(1872)は後期ロマン派色が強く、ショパンとは似ていません。「子守歌」の第1稿(第26巻)は1854年、いわゆる中期の真っ只中に成立しているのに対し、「即興曲」はいわゆる後期に入ろうかというところの作曲、という差が出ているのでしょうか。短いですが佳作です。次に入っているこの巻唯一の世界初録音作品「Klavierstuck」(1866)は、とくにどうというところのない普通の作品。

・・・こんな調子ではお勧め度Bも危ないのですが、「ポロネーズ第1番(憂鬱なポロネーズ)」(1851)には賛辞を惜しみません。思わず練習し始めたくらいに好きです。短調ポロネーズ同士ということでショパンの5番と比べると、クラシカルな美感を保ったショパン vs 根っからのロマンティストリスト、という感じですが、ウツボツとした主要楽想(どちらも)にはリストの方がよりフィットしていると思います。

せっかくの数少ない弾いてみた曲、それも有名曲ではないですから、そちらからの感想も述べますと、、、まず、人前では弾きませんよ。これは一流プロの領域。何より弾けないのが、副主題(聴いていても少々長いが弾くともっと長い)が続いた後、主要主題がパワー全開で還ってくるアレグロエネルジコの所ですが、その魅力には抗しがたい物があります。全然似てないのだけど、パワー全開!でベルリオーズのレクイエムのラクリモサの最後を思い出しました。ここはやっぱりハワードさんで聴いていただきましょう。中間の主要主題によるラプソディックな展開と聞こえるところ、なんと4/4で書いてありました。各小節に字余り風に1拍入っていて、結局かなり延々と4/4なのです。ポロネーズなのに、とびっくりしました。

この1番と比べると「ポロネーズ2番」(1851)は形式ばっているというのか、無性格というのか、立派な音がしているのだけれどそれだけ、と思えてしまいます。不思議なのは2番の方が有名だということ。本領を発揮したのは断然第1番のはずなのですが。これだから旧来のリスト紹介姿勢は困る。

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