やってみました「鮟鱇(あんこう)の吊るし切り」

2008年末はあれやこれやで一度も鍋をすることなく暮れてしまいました。
年明けても先週は馴染みの魚屋に地物の鮟鱇が無く、ホウボウ3匹で鍋にしました。

これはこれで素晴らしく美味しかったのですが、実は解体を頼み損ねて
丸のままをもらう羽目になり、魚のさばき方の動画サイトを参考に「鱗取り」「お腹出し」
をやってみたら、意外と上手くいった、というおまけがついたのでした。

このサイトでは鮟鱇の「吊るし切り」も紹介されています。
穴子など到底真似できないと思う一方で、鮟鱇なら、見れば見るほど、
やれば出来そうな気がしてきました。家内にそのことを言うと、
「やってもいいけど3月まで鮟鱇あるし・・」
と言います。

「それって、この冬最初の鮟鱇はまともなのを食べたいってこと?」
と聞くと、「そういうこと」と言います。
少々カチンと来たので、手頃なのが見つかったら絶対丸のまま買ってやる!
と勇んで朝に市場まで見に行ったら魚屋のお兄ちゃんが私の顔を見るなり、
「今日はおるよ」。

三河湾の地物が3kg4000円、この時期としては割安のような気がします。
大きさも手ごろです。勿論丸のままで持ち帰りました。

ブツを眼にしては、家内も張り切ってカメラを担当してくれました。
上記サイトの参考動画を見ながらの「吊るし切り」の開始です・・・・・。


1) 尻尾の先までで55cm位、以前魚屋の兄ちゃんが俎板で捌いていたのを撮影した
(解体の様子はこちら)のと同じようなサイズです。

 

2) 下あごにS字フックを
引っ掛けて持ち上げます。

この前段階で口を開けるところは、
歯が怖いので緊張しましたし、
ヌルヌルの鮟鱇を持ち上げて
S字フックを引っ掛けるところも
ヒヤヒヤもの、
とにかく最初が一番緊張しました。

 

3) 流しの上の釣り戸棚の取っ手に
回した紐にS字フックを引っ掛けて
吊下げ完了です。

ここまでくれば一安心。

 

4) 歯は常に要注意ですが
吊るしている間は触る必要が
ありません。

 

5) 大きなひれを落とすのが
最初の工程です。

次に口の周囲に包丁を入れて
皮をはがしていきます。
背側の黒い皮は迷わず出来ます。
腹側の白い皮と内側の膜との境は
良く分からないのですが、
こちらも適当に切っていきました。

 

6) 子供が寄ってきました。

 

7) 参考動画によると
眼をかわしたあたりで
ずるずると剥けるみたいですが、

今回はひれの穴を過ぎて
ようやく引っ張れました。

 

8) 腹側から。

皮剥きの段階では
下あごから腹膜までは
繋がったまま、とします。

 

9)10) 腹膜?に取り掛かります。まず下あごから胸骨?まで取り除きます。

 

11) 12)えらの周りの骨を外します。
参考動画ではここで翼のように見えている骨ごと断っていたようですが、気にしないことにします。

 


13) えらを肋骨?ごと外し終えたら、いよいよ腹腔にかかります。ピンボケですが、肝や胃が見えています。

 


14) 肝を外します。この時期でこのサイズでは「外れ」でしょう。値段に反映されている?

 

15) 胃を外そうとしたのですが、
腸?が先に出てきました。
これを先に外しました。

 

16) 胃を外します。

中に見えているのは、
ピンクの大きいのが卵巣、
赤い小さいのは腎臓、
と推定しました。

腎臓は背骨の脇、脳の
直ぐ下に2個あります。
この画像でも左奥に
血の色の塊として
見えています。

卵巣は「ぬの」と呼ばれる
膜状の時と塊状の時が
あるのですが、時期なのか
成育程度の違いなのか、
は存じません。

卵巣の横の血の色のは
分からないのですが
消去法では膵臓か脾臓
ということになります。
脾臓のような気がします。

 

17) パンパカパンの胃の中身を
流しにぶちまけると・・・・

出るは出るは、

です。

 


18) 20cmを越えるカレイが一匹、その他体高の低い魚が15匹、エビ3匹、イカ1匹、出てきました。
消化が始まっており、人間の食用に回すのは諦めました。この胃の状態も値段に反映されていた?

 


19) 胃を裏返して掃除します。この後さらに、水洗い→内側を包丁でこそげる→水洗い、と掃除しました。

 

20)21) 内臓を全て取り出した後、えら後方の周方向で一番大きな骨というと「かま」になるのでしょうか、
この腕のように見えていた骨を外し、それにぶら下がっていた腹膜を除くと、骨と身だけが残ります。

 

22)23) 刺身を最大限取りたいので、身を取った後は背骨だけです。その前に頬肉も取っています。

 


24) フックから下ろして、俎板上で尻尾と下あごを取ったところ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・画像はここまで。

ここから先では、骨をぶつ切りにしていきます。骨はすかすかで簡単に切れます。
内臓を鍋に入れるサイズに切り分ける、というあたりは既に慣れたものです。

子供の相手をしつつ参考動画をチェックしつつ、でトータル2時間かけてやりましたが、
実質1時間くらいだったでしょうか。

これで刺身&鍋を一家四人で2回分になります。半分は冷凍、半分は早速食しました・・・・・
全く問題ありません。例年通りの美味なる鮟鱇でした。
刺身は喧嘩にならぬよう最初から小分けにして鍋の前に出すのですが、
例年通り子供達もあっという間に平らげました。

魚屋の兄ちゃんがいつも廃却しているエラも鍋に入れましたが、これは家内は見た目だけでパス、
私が全部食べました・・・不思議な食感で悪くはありませんが、無くても構わない代物ですね。
腎臓(推定)も初めてですが、こちらは小さいながらも普通に美味しくいただけました。

吊るし切り自体が非常に楽しいものでした。家内も
「今度また手頃なのがあったら私もやってみたい」
と申しております。

・・・・・おしまい。

 

 

(12.03.11追記)

2001年に刈谷に越してきて以来、色々教えてもらった近所の魚屋さん(こちらでも登場)が昨年5月に廃業してしまいました。ここ以外でも三河湾の地の魚を扱う店が近くにあるのですが、魚の種類がどうしても限られてしまいます。この夏もマコガレイにもコチにも出会えませんでした。

2009年から毎年3,4匹捌いていたアンコウにも、今シーズンずっと出会えなかったので、3月4日に意を決して一色さかな広場まで片道30km走っていきました。ここに行くのは実は2回目で、2週間前の1回目は「海が荒れててこの一週間船が出てないから鮮魚は無いよ」と言われて生簀のマコガレイに切り替えた(これはこれで旨かった)のですが、前日から当日朝まで天候が穏やかだったので、これなら大丈夫だろう、と踏んで出かけました。

・・・今度は無事ありました。左の写真は実際に購入した、めのこ3kgくらいの4000円のものですが、10kg近そうな8000円のが1匹の他、1000円、800円のミニチュアが多数並んでいました。

左の写真は自宅で写していますが、その前に、口の中から色々出てきていたのでした。

 

イカが見えていたので、引っ張り出してみると・・・イカの足にヒトデがついていたり。

 

 

左の写真が、口の中から引っ張り出した全てです。

ヒトデを捕まえていた?イカはしょぼいし、鮮度もあやしいような気がした・・・もしかして、胃袋に一旦落ちたのが、出てきたのかも?と思った・・・ので廃却しました。

なお、過去にはアンコウから出てきたイカを刺身で食したこともあります。アンコウからの出物としては、ヒトデは初めてです。勿論廃却しましたが、こんなものをアンコウが消化できるのでしょうか?

手前の20cm弱の魚は、頭を落として内臓を出して、鍋で一緒に食べました。白身でこれも旨かったです。ただし、小さい割りに小骨がしっかりしていて、本来は鍋で食べるのには全然向いていないです。模様はクラカケトラギズに似ているかな、と思いましたが、まるで違うかもしれません。ただ、白身を食した感じはキスに似ていて、骨を外して天ぷらにするのに向いていそうでした。

 

 

今回は胃袋は空に近かったのですが・・・

カレイ類の食べかけ、みたいに見えますが、この状態で胃から出てきました。消化途中だったとしても、片身だけきれいに消化して、反対側がこれだけ残るものでしょうか?

アンコウの巨大な口に入るものは全部丸呑みにするのでしょうが、この骨でも腸は通れそうに見えません。まとめて吐き出すのしょうか?

解体の度に毎回結構楽しめます。

 

 

’19.03.10 追記

2012年以来、丸のままアンコウを手に入れるのに多少苦労していたのですが、隣の大府市のアピタに高頻度で出没することが分かりました。

この日は夫婦で買い物に出ましたが、近くの魚屋には「そそられる」魚が全く無かったので、大府のアピタまで足を伸ばしてみました・・・と、ありました。

 

重さはちゃんとは量れませんでしたが、8kg近く、長さは80cmほどあります。

我が家で仕入れたアンコウとしては史上最大です。

吊るすのも大変で、私が両手でアンコウ本体を支えているところで、家内に踏み台に乗ってもらい、S字フックに下顎を引っ掛けてもらいました。

吊るせたら、まず、口の周りから皮を切っていって、皮を引っ張って剥いでいきます。

左の写真は、鰭のところを剥がしているところです。

 

(グロ画像かもしれません)

皮を剥いだら、お腹側の上から処理していきます。

鰓蓋を外してから、鰓と喉の奥の歯?(剣山みたいで、けっこう邪魔)を、ひとまとめにして外します。

そこまでできたら、鎖骨?(左画像では腕木みたいに写っている)の間を割って、そこから腹膜を上から下に切り開いていくと・・・

内臓がベロロンと出て来ました。

鎖骨?の少し下の薄黄色がアンキモです。

アンキモの上に乗っかっている、先端に固まった血が黒く付いている赤と白の塊が心臓です。

アンキモの下の肌色の太いソーセージのようなもの、は内蔵物で膨れ上がった腸で、これは廃棄しました(内容物を奇麗に処理すれば食べられますが、面倒な割りに、そんなに美味しくもない)。

そして下の方に垂れ下がっているのが、卵巣です。これまで見た卵巣とは桁違いの大きさでした。

 


胃を切り出して、裏がえしてみたら、小アジが出て来ました。
見たところ消化された様子は全く無かったのですが、廃棄しました。

上画像の、手にはめているミトンのように見えているのが、裏返しにした胃です。

隣の赤いのは、一まとめで外した鰓です。これだけでもデカイです。


巨大卵巣です。

 

内蔵を全部外してから、鎖骨と腹膜とをまとめて外します。
そして、いわゆる「身」の部分を吊るしたまま三枚下ろしの要領で骨から外すと、ようやく吊るしての作業は終了です。

頭蓋骨から尻尾まで、ほぼ骨だけの状態は、妙に表情がありました(左画像)。

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この8kg弱を2回に分けて食べようとしましたが・・・

キモは酒蒸しにして、今日全部いただきました。身は半身を刺身で、胃は半分弱を湯引きにして、いただきました。ここまではいいのですが、

鍋の方は食べ切れませんでした。特に巨大卵巣が、味は決して濃くはないのですが、そんなに多くは食べられません。半分のそのまた半分までも食べられませんでした。

冷凍庫に入れていた半分と、食べ切れなかった分とをあわせて、残り2回で食べられるように、小分けをやり直しました。