防磁長男製作記

フェイさん設計の「防磁長男」、詳しくはこちらを見て下さい、この「パーツセット」がイーディオさんから通信販売されています。これが私の第7作にして、脱フォステクス第1弾ということになります。その製作記です。なお、このスピーカーは「あっと驚く安易なバスイコライザ作成計画」で大活躍しています。

いきさつを手短に書きますと・・。そもそもはフェイさんのサイトを熟読しているうちに、ヨーロッパ製ユニットの3WAYを作ってみたい気になったのが発端です。フェイさんにメールで相談したところ、いきなり3WAYではなく、2WAYからステップアップしては?という助言をいただきました。イーディオの飯田さんともメールで相談した上で、発注ということになりました。発注自体はごく簡単、イーディオさんとメールで合意に達したら後は銀行に振込みに行くだけです。

パーツセットの内訳は、
ウーファ=SEASP14RC/TV(@8,500円)、
トゥイータ=SEAS/EXCEL:T25CF001(@10,500)、
ネットワーク=Madisound製(@5,000)、
に送料・消費税を加えてステレオ2台で5万円強、です。防磁にしないのならウーファがP14RCYに替わって、@6,500円になります。

ネットワークはイーディオさんがMadisound社にその組み合わせ用に設計依頼したものだそうです。キャパシタはSolen=高域用とBennic=インピーダンス補正、抵抗はEagle=高域用とセメント=インピーダンス補正用、コイルはMadisound製、とのこと。写真で分かるように基板上に組み上げられている扱いやすいものです。

板取図と組立図はこちらになります。徒歩1分のところにあるホームセンタで直線だけ切ってもらいました。ラワン合板910×910が2120円で、格別安くはないですがカットは全部で300円、これは安いはず。それ以上にこの店の板は東急ハンズのラワンやシナ合板に比べて非常に硬いのが好みです。問題は穴あけで、手引きで切ってますから、硬いのは大変なのです。フォステクスのESのように余裕がなくて精度の要る穴あけになる場合は東急ハンズを頼るしかないのですが、このSEASはどちらも縁に余裕があるので安心して切れました。

2001年3月末にパーツセットも板も揃ったのですが、工作は5月連休となり、5/2時点で一応音が出せるようになりました。

左:フォステクス2WAYの上に載せています。大分小さい。奥行きはありますが、テレビの横という本来の使い方では全然問題にならないでしょう。ところで、なぜウーファが上かというと・・私がフロントバッフル取り付け時に間違えたからです。これでは本当は防磁長男を名乗れません。左右2つとも揃って間違えたことが救いです。

右:上から写しました。ネットワークはまだ外に出しています。そのうちにトゥイータ逆相も試してみます。今は同相です。ユニットとの接続、ネットワークとの接続とも今はファストンの205というのを使っています。配線は小判の1.25sq、掃除機の電源線などに使うことになっている線です。
本来は天板後方に大型のスリット上ダクトが開くのですが、試聴の結果早速ウレタンで塞ぎました(後述)。(その更に後方に見えているのはスーパースワンのユニットです。)

インピーダンス測定結果

測定方法はこちらを御覧ください。まず8Ω基準抵抗(と言っても精度未確認のセメント抵抗です。この後に出てくる抵抗値にもこの誤差は含まれます)。

 

次にウーファト単品を裸で測ってみました。

裸のF0が52Hz(31Ω)、規格では40Hzとなっていますが、新品では高く出るようです。

 

このウーファをバスレフ箱に入れるとこうなります。吸音材無しです。

F02が31.5Hz(29Ω)、Fdが55Hz(6.7Ω)、F01が87Hz(35Ω)、となり、模範的なバスレフの設計と思われます。フェイさんの計算でFd=54Hzですからピッタリです。実はもっと低くなることを予想していたのですが。
250Hz付近では6.1Ωまで下がっています。公称8Ωのユニットですが、メーカーの発表データでもインピーダンスはちょっと低めになっています。高域の上昇は10kHzで29Ωと穏やかです。

500Hz付近にわずかに曲線の乱れがあります。多分吸音材で収まるのでしょう。このままでも気にしなくて良い水準のようにも思えます。

 

しかし、このバスレフの音は好みではありませんでした。フォステクスの2WAYを当初受け付けなかったのと同じ嫌な響きを感じて、ダクトをウレタンで塞ぎました。フォステクス2WAYの場合はダクト塞ぎを思いつくまでにネットワークを3回変える回り道をしましたが、その経験が生きました。密閉箱としてのインピーダンス測定結果がこれです。トゥイータつき総合特性で、ダクトのウレタン以外の吸音材は入れていません。

バスレフの気配のまったく残っていない、完全な密閉の特性になっています。F0が71Hz(31Ω)と、F0だけ見ると妥当に思える水準です。ただ、裸のF0から1.3倍になっているということは、Qも1.3倍になる、で正しいのでしょうか?(ネットワーク他の電気抵抗分で、スピーカーシステム組み込み時のQは意外と上がってしまうものなのだ、という御説を拝見したことがあります)。規格ではQtsが0.21ですから、1.3倍になっても0.28、これでは全然低音が出ないはずですが、私の耳では気になりません。バスレフの響きが消えたメリットのみ感じています。どうも私はBH:OK、密閉:OK、バスレフ:NGのようです。

この状態では、柔らかい控えめな音と感じました。控えめなようでも、ヴァイオリンの高音が見事に伸びます。フォステクス2WAYとは全然違う音(FW168+FT48Dも結局フォステクス/長岡先生路線の音だというのが逆によく分かりました)で、これほど違うものかという驚きもありましたが、どちらもそれぞれ好きになりました。追々いろいろ聞いてみます。実験メニューもまだありますし・・・こんな調子ではいつ塗装できるのやら。

 

 

(01.05.05追記)
GW中に塗装まで済ますことにして分解しましたが、そうなるとまたすぐ聞きたくなるのが人情です。結局5月4日の一日で、各辺ラウンド化→ペーパーがけ→とのこ塗りこみ→オイルステン着色→クリアニス塗り→再組立、までやってしまいました。急いても事を仕損じるまでは行かず、塗りむらはありますが安物デジカメではわからない範囲、とのこが効いたのか平滑度では一番の仕上がりです。やっぱり塗装した方が格好いいと一人悦に入っております。

音はどんどん変わっています。一時右側のトゥイータから割れた音が出ましたが、原因がわからないまま徐々に収まってやがて全く出なくなりました。中域に余分な音が少し付いている気がしますが、箱とユニット双方のエージングが進んだ時点で吸音材の使用を検討してみたいと考えています。

 

 

(01.05.20追記)
F特測定結果:正相 vs 逆相

相変わらずのマイクですが、正相 vs 逆相でF特測ってみました。6dB/octですから、理想的なクロスができればF特は正相でも逆相でもフラット、ただし位相特性(群遅延特性)は正相が有利、クロスが理想から外れる場合のF特の安定性では逆相が有利、というのが理論になります。ですが、クロスが3kHzくらい、波長で10cm程度ですから、マイク位置ひとつで何が出ても不思議ではありません。以上を承知でとにかく測ってみた、というだけです。

これが正相↓

これが逆相↓

ほんの気持ち程度逆相のほうが暴れが少ないような気もしますが、手持ちのマイク位置が同じとも限らず、この程度の差は気にしないことにします。中域以上だけしか当てになりませんが、どちらでもかなりフラットに見えます。

となると聴感勝負ですが、差が出るのは音場感かな、というわけで試してみました。音場感テストCDとしては、FMfan特別編集「開拓者 長岡鉄男」(共同通信社)の付録CDの自衛隊がいいと思っていましたが、さらにいいのを見つけました。「密林のポリフォニー イトゥリ森ピグミーの音楽」(JVC VICG-60334)です。私にとっていわゆるワールドミュージックものの一枚目であり、もっと良いのがあるかもしれないというのは気にしないことにします。音場だけでなく音楽でも上記付録CDのガムランより凄いと思うのですが、それはさておき、普通の(と私が思っている)クラシックの録音とは異次元の音場感です。トラック4の7分頃から9分頃にかけて夜の鳥(?)がスーパースワンやマトリックスBHでは後ろ上方45度に定位します。音場感だけでも「はまって」しまいそうな楽しくも異様な世界です。

というのが長い前振りで、「防磁長男」のトゥイータ正相と逆相とを比べてみたのですが、差が分かりませんでした。どちらでも夜の鳥はちゃんと後方に定位します。ただしどちらでも高さが不足します。こういうソースは長岡式スピーカーということなのですが、しかしスピーカー2本で360度サラウンドが出ているというのは2wayとしては優秀なのでしょう。正相vs逆相では差が全然分からなかったので、正相のままにしています。

 

 

(04.08.08追記)
ネット作成

我が家の可愛いギャングがつかまり立ちをし始めました。2F寝室のスピーカー群は、「部屋に入れない」ことで言って聞かせられるようになるまで済ませるつもりですが、1Fリビング用の「防磁長男」はチビギャングの生活圏の中です。いつかそのうち、と思っていたのが「待ったなし」で、夏休み中一人になった半日間でステレオ2台分を製作しました。

合板からユニットの形を切り抜いて枠を作れば丈夫なものが出来そうですが、自分で切るのは暑いし、切ってもらうのは高そうだし、で、15mm角のヒノキ棒を400円強分買ってきました。切るといい香りがします。切り易いです。寸法と直角の精度が出ないのは木の切りやすさとはさほど関係有りません。なんとか重石を載せてもこけない程度には切れたので、木工用ボンドで強引に接着して枠の完成です。

網はジャージの布地が普通かと思ったのですが、ホームセンターでふと目にとまった「網戸の網」にしました。チビギャングの襲撃に耐えられる程度には強度がある上、安いし開口率も高い。反面、外観上のカバー力が無く、ユニットも枠も丸見えです。写真の状態は無塗装の仮組みのつもりだったのですが、我が家のインテリア奉行が「枠が見えるのもインパクトがあっても面白い、いつでも塗れるのだから、飽きるまではこのままでもいいよ」というので素直に従っています。

音は・・・童謡CDを聴く範囲では、その影響の程は分かりません。気が向いたら測定するかもしれません・・・が、多分しないでしょう。

 

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