素人による自作スピーカのすすめ
・・初めて作るならバックロードホーン!?

2000.10 に書いた原文に対し、2003.08 の見直しをこの色で書き足しています。

どうしてスピーカーを自作するようになったのか? 大体普通の人はスピーカーを自分で作れると思っていない! それはさておき、、

私の場合は20年以上前にステレオ誌かFMfan誌かそのあたりで長岡鉄男先生の記事を見かけたのが、面白そう、と思った最初でした。まず作ること自体が面白そうだし、良くも悪くもメーカー製とは違う形と音ができるというのも面白そうに思えました。それから月日が経って、やおらスピーカー自作にのりだした時も、メーカー製には殆ど無く、メーカー製と全然違う音がする、というバックロードホーンスピーカー(FE168Σ使用)から踏み出しました。

家にあるメーカー製スピーカーが、しめて8万円のシステムコンポのスピーカーだけなので、当然かもしれませんが、それ以来そいつの出番はありません。

・・・という経験に基づき、最初からバックロードホーンにしようよ! とお誘いする次第です。

2003.07 現在、私の作ったバックロードホーンに分類できそうな3機種は全てあくびしています。それでもバックロードホーンへお誘いをするべきか? 自作するなら一度は作ってみられるのも悪くないと思います。

ネット上を見ても、自作スピーカの半分近くがバックロードホーンのような気がします。これを一度も聴かずに避けて通ろうというのは精神衛生上もよくありません。一度作って体験して、それが自分の進む道かどうか考えて、進むも良し、引き返すも良しでしょう。

あなたの友人の「いい音」とあなたの「いい音」は違うかもしれません。そこには優劣(耳の良し悪し)の問題も多少あるでしょうが、好みの問題が大きいのです。完璧に原音通りの再生ができる場合を除いて、つまり現実の全てのスピーカーですが、スピーカーは妥協の産物であり、その妥協の際何を取って何を捨てるか、それは設計者の好みです。

その好みをご自分で知るには、バックロードホーンと密閉とバスレフと、はそれぞれ体験しないと始まりません。バスレフが密閉とバックロードホーンとの中間ということにはならず、それぞれ別のものだと私は思っています。ちゃんとした設計のバスレフを作ってからそのダクトに蓋をしてみる、でいいですから密閉も体験していただきたいと思います。そして、そのバスレフとしてフェイさんの「防磁長男」ユニット+ネットワークセットをAedeoさんから通販で買って作るというのもお勧めできます。・・・何のことはない、私の歩んだ道そのものですが。

初心者にとってバックロードホーンには

1) 確かにメーカー製と違う音がします。オーディオ聴き分け能力なんか無いに等しいと自分で思っていましたが、それでも歴然と分かりました。その後買い換えたアンプの差の累計の10倍以上違っていて、しかも気に入ったのです。自己満足するためには、まず変わっている、というのが重要になると思うのです。これは外観でも同じ、見た目でメーカー製と似ても似つかないのも、うれしくなりませんか?
 
2) 割り切れば工作は簡単です。板材カットの幅さえそろっていれば、多少の誤差は開口部にしわ寄せしても外観上気になりにくい。むしろバスレフのダクトの継ぎ目の方がずれたらよほど目立ちます。
勿論これはいわゆるCWタイプにあてはまることで、スワン系の組立は難しい。これも、難しいとは言いながら最初からヘンな形ですから、ただの直方体のブックシェルフ型スピーカーでずれが見えるのに比べれば全然気にならない、とも言えます。
 
3) 大雑把なのでチューニングしやすい。まず低音が出すぎていたら開口近くを触ってみて、盛大に振動しているところを補強する、これなら誰でも出来ます。
中高域のさわがしさと元気よさの兼ね合いは、空気室の吸音材や重石で変わりますが、この位しか手が出せないのがかえって素人にはありがたい。私のスーパースワンは空気室の吸音材なし、ヘッドの上に鉛インゴットで落ちつきました。

これが当たり前の2wayバスレフとなると、まずバスレフダクトの長さと面積を変えるのは、補強ではなくて定数の変更になるので、あちらを立てればこちらが、という世界になり、測定器なしでは容易には出来ません。箱作った後からダクトを変えられるようにすること自体が容易ではないことです。
中高音域では吸音材の多少、クロスオーバ選択の適不適、アッテネータのレベル調整、が重なって影響してきます。この3つだけでも、聴感だけで切り分けられると思いますか? ましてそのパーツの質となると・・・。
この切り分けができたとしても、チューニングの追い込みがまた大変。バックロードホーンなら、トゥイーターを天板載せて外付けのコンデンサーで全然気にならないのが、2wayバスレフだとネットワーク内蔵でないと格好がつかないので、吸音材調整もネットワーク調整もウーファーをはずして手を突っ込むことになりますが、そんなことしているとそのうちネジ穴がバカになってしまいます。そうならないために裏板を着脱可能にするのも、ユニット固定に鬼目ナットを用いるのも、工作難度が大幅に上がってしまいます。

というメリットがあります。

ただ、ではどれを作ればいいかというと、、

私の自作中長岡先生の図面のままのものはスーパースワンのみで、これは先生も初心者には難しいと言っていたものなので、結局私には図面通りに作りたい人に対して推奨モデルを選ぶ資格は本当はないのですが、

大きすぎず重すぎずという点で、「長岡鉄男のスピーカ工作全図面集1」(音楽の友社)に収録のD−1をFE168Σで作るのはいかがでしょう。

側板の上に音道を構成する板を並べて木工用ボンド+重石で固定していくのが一番簡単で、集合住宅においても釘の音が響かないというメリットがあります。斜め接合にはちょっと高価ですが水中ボンドを使えばバッチリです。なお、この設計のままだと、側板の開口部が絶対派手に鳴ると思うので、もし私が今から作るなら、板取番号14,15を少し短くしてでも開口に橋渡しする形の補強を入れるところです。

このあたりは大体まともなことを書いていると今でも思います。あえて言うなら、最近作であるスキャンスピーク2way程度に大きいなら、ネットワーク内蔵のブックシェルフに仕立てるより、トゥイータバッフルないしボックスを別に作ってネットワーク外付けのフロア型、が気楽だと思いました。

長岡先生の
・世界でただひとつ自分だけの手作りスピーカーをつくる(講談社)
・オリジナルスピーカー設計術「こんなスピーカー見たことない」
・オリジナルスピーカー設計術2「こんなスピーカー見たことない」(図面集)
  (以上音楽の友社)
の3冊がまずお勧めの本です。

一番最初に買う書籍なら、この3冊からどれか、でいいと思いますが、スピーカー工作をキーにこのようなマイナーなページを開いている方なら、ネット上に数々の有名サイトがあるのをご存知でしょう。

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