愛知県碧南市 かつて「忠魂社」と呼ばれた新川神社に桜咲く 遺された記憶は

春が来た!碧南の桜を見に行こう

生きる桜・新川神社

出征する兵士を「日の丸」で見送る歴史 桜咲く静かな地で英霊は眠る

軍人さんと桜

<「今年も綺麗だね、桜」と思える時代のありがたさ。春の暖かい平和な一日、グラウンドやテニスコートから沸き上がる歓声を背に、しみじみと桜を眺める> 新川中学校の東にある羽久手グラウンド。線路脇の道を行けば新川神社の境内に入る。鳥居の両脇にはネットが張られる奇妙な配置。 グラウンドはかつて新川神社の境内だった。戦没者を鎮魂する新川神社。第二次世界大戦当時、ここで出征する兵士を見送った。 境内に立つ軍人さんの像。傍らには桜。なぜだか春になっても付ける花は少ない。グラウンドの歓声が遠くに聞こえる。 私たちは数多くの犠牲の上に生きている…。慎ましく咲く桜を見て、今を生きる。

桜の横を名鉄電車が通り抜けて行く

<誰も入らない桜の場所。桜の散る季節、電車が通る度にさくらの花びらが舞い上がり、雪の降るように舞い落ちてゆく。まるで異国の地で散った英霊達。兵士を乗せた電車を見送った「日の丸」。今は桜が通り行く電車に枝を振っている> 戦没者慰霊碑の左手に桜の咲き誇る場所が隠れていた。新川神社の社務所、慰霊碑、名鉄線路に挟まれた目立たない場所にあるため、人知れずといった場所である。 慰霊碑が近いこともあり、ここで「お花見」という厚顔な輩はいないだろう。 真っ赤な名鉄電車が走り去るたび、桜の花びらが舞い上がる。 桜の花びらは、ゆっくりと時間をかけて落ちて来た。その動静は戦地で亡くなった人々を連想させる。 戦時中、出征する兵士達を乗せた電車は「新川町」駅を出発し、忠魂社の線路脇で「日の丸」を振る子供達に見送らて戦地に赴いた。 今、桜たちの見送る電車には、どんな人達が乗っているだろうか?と考える。 美しくも「悲しい桜」がここにはある。

ヘボト自画像ヘボトの「落花枝に帰らず」

鎮魂の言葉と桜

「考えさせられる一日」

信仰心熱い碧南の地には、数多く神社がある。だが、この「新川神社」ほど、しんみりとした気持ちになる神社はない。 戦争の犠牲者を鎮魂する神社は、何かと嫌悪される事が多い時勢は誠に残念なことである。 しかし、一度は参拝してみて欲しい。羅列された戦没者の名を眺めていくうちに、とても重い気分になる。 敷地奥の桜と共に、ひっそりと立つ石碑に目が留まった。「安らかにやすませ給へ 國の為 命捧げし みたまもろ人」と刻まれた言葉が全てを語る。 平穏な現代の生活に私達。右・左の思想以前に、かつて故郷を思い、異国の地で散った人々がこの碧南にもいたことは知っておきたい。

< text • photo by heboto >


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