くまは、読書を好む。ただし、その読み方には節操がなく、ポリシーも感じられない。ひたすら「つれづれなるままに」
読むのである。寝床、トイレがおもな読書場所であるが、これは、わが家のちびっこギャングに襲われない、限られた
オアシスであるが故である。そのくまが最近読んだ書と、感想を以下に記す。

「SEVEN YEARS
IN JAPAN

D.ストイコビッチ
祥伝社黄金文庫
01年10月
ピクシーが半生を振り返った書。相当、自分自身に自信を持った内容では
あるが、決して嫌味っぽくはない。サッカーにはあまり詳しくないが、彼が
偉大な選手であったことは素人目でも分かる。これからの日本サッカーの
在り方など、将来に向けてのアドバイスなども簡潔に書かれており、読み
易さとともに、ますます彼の人柄を感じた。
「俄−浪華遊侠伝−」
司馬遼太郎
講談社文庫
「『勝ち組』の構想力」
大前研一
田原総一朗
PHP研究所
01年9月〜10月
「巨人がプロ野球を
ダメにした」
海老沢泰久
講談社+α文庫
01年8月〜9月
ついついタイトルで購入してしまった。決してアンチ・ジャイアンツではない
と思っているのだが…。この書では、巨人だけではなく、日本のプロ野球
がなぜおもしろくなくなったのかを考察している。最近のMLB流行もある
のだが、本当に「プロ野球」の行く末が案じられる。
「サザエさんの秘密」
世田谷サザエさん研究会
データハウス
01年9月
この手のものが、数年前に流行りましたよね。「サザエさん」は、日本が世
界に誇る三大アニメ(私が勝手に決めた)の1つであり、日本人の心でも
ある。ちなみに、残りの2つは、「ドラえもん」と「アンパンマン」。
「日本はなぜ
負ける戦争をしたのか。」
田原総一朗
アスキー
01年8月
「朝までテレビ」で放映されたものを再編集したもの。戦争問題はやはり
複雑だ。その責任の所在も、いまや明確にはできないだろう。昨今、アジ
アの近隣国から再び「戦争に対する考え方」に対して集中砲火を浴びて
いるが、そんな議論を繰り返すことにどんな価値があるのだろうか。
「プロ野球
問題だらけの12球団」
小関順二
草心社
01年6月〜7月
プロ野球12球団の戦力分析(フロントの強さも含めた)を中心に、各球団
の3年後を、筆者がおしはかっている。この書は、2年前に書かれたもの
なので、現状との比較ができておもしろい。筆者の分析はなかなか鋭い。
特にドラフトに対する球団の姿勢などは興味深いものだ。
へたな頭の使い方で
一生を終わるな!」
鈴木健二
三笠書房

01年6月〜7月
書かれていることはいちいち正論なのだが、鈴木健二のキャラを、私は
素直に受け入れられなかった。したがって、書評もなし。
『NO』と言える日本」
石原慎太郎

盛田昭夫
光文社
01年6月〜7月
大ベストセラーとなったこの書を、古書で購入した。10年ほど前の執筆な
ので、かえってその時に予言している内容との比較ができておもしろい。
デタラメなこと(おもに石原の発言)も当然あるが、2人の先見性はやはり
特筆ものだ。
ハリウッドの日本人」
垣井道弘
文藝春秋
01年6月
「日本人は果たしてハリウッド・スターになれるのか」という疑問が私の中
にはある。映画環境だけではなく、俳優としての資質が根本的に違うの
では。石橋貴明あたりが、日本の代表的なアクターと思われては何とも
恥ずかしい限りだ。「ブラック・レイン」なんかもちゃっちいしなあ…。
「政治的に
正しいおとぎ話」
ジェームズ・ガーナー
DHC
01年6月
少し前にはやった、童話のいじりもの。読み始めは、おもしろかったのだ
が、読み進むうちに、少しくどくなってきた。一応、最後まで読みきったが、
後半は相当飽きてしまった。ふと、気が付いたのは、翻訳にデーブ・スペ
クターが携わっていたこと。くどいわけだ。
「やった。」
坂本 達
ミキハウス
01年6月
4年半の有給休暇をとって、世界一周を自転車で成し遂げた男の体験
談&写真の数々。生死を賭けたこの試みには、正直、「すげ〜」という
言葉しか出てこない。私自身も、高校時代に自転車で京都・奈良まで
行った経験はあるが、ここまではとてもじゃないが…。この人、確かに
凄いのだけど、結局、強力なスポンサーがいて、こんな思い切ったこと
ができるわけで、これを自費で実践していたらもっと尊敬できるのだけど。
でも、日本一周くらいは、いつか成し遂げたいなあ。
「新撰組血風録」
司馬遼太郎
角川文庫
01年5月〜6月
やはり、幕末を書かせれば、司馬の右に出るものはいない。以前、「燃え
よ剣」で、新撰組は読んでいたので、一体何が違うんだろうというのがし
ばらくの疑問であった。「燃えよ剣」が、近藤勇、土方歳三、沖田総司ら
いわゆる新撰組の幹部を中心に描いたのに対して、この作品では、平
隊士をも含めた様々なストーリーから成っている。人斬り集団の人情味
あふれる挿話の数々である。
「ジャパンモデル」
田原総一朗
PHP

01年5月完読
内容的には、前出「勝つ日本」にオーバーラップする。サブタイトルとなっ
ている「日本が米国を再び追い抜く日」が気に入った。こんな時代であれ
こそ、日本人としての自覚と誇りが必要なのだと思う。やっぱり、前向き
に物事を考えていかなければ。
「勝つ日本」
石原慎太郎
田原総一朗
文藝春秋
01年5月完読
前出「日本のカラクリ」の内容も相当辛らつであったが、これに石原慎太
郎が加わることにより、いよいよ歯止めが効かなくなった。石原の書は
これ以前に読んだことがなかったので、「何となくやんちゃな人」というイ
メージのみ私の中にはあった。「北朝鮮のテポドンが京都あたりに落ち
れば良かった。」と大まじめに語っている。怖い。この書のおもしろさは、
石原と田原は互いに持論を曲げることが無く、したがって、歩み寄ろうと
する姿勢がおよそ見られないところにある。
「日本のカラクリ」
田原総一朗
朝日新聞社
01年5月完読
日本の政治・経済はもとより、今、問題とされている日本の抱える様々
な局面に関して、非常に分かりやすく著している。歯に衣着せぬ田原
なので、辛らつな部分も多い。しかし、ただ過激な発言で注目を集める
ことが目的ではなく、きちんと筋は通されていると思う。彼の思想には
共感すべき点がたくさんあり、鋭い視点には尊敬の念すら感じている。
田原の著書にはしばらくはまりそうである。
「考える力」をつける本
出口 汪
三笠書房
01年4月完読
予備校の講師による執筆なので、おもには受験生向けの内容となって
いる。その論理的な思考力に定評があるだけに、「なるほど」と納得さ
せられることも多い。しかし、出口氏の頭脳が明晰すぎるのであろう。
私にとって、難解な箇所も多々あり、後半は少々飽きてしまった。ただ、
必要な部分だけをピックアップしていけば、表題どおり、「考える力」を
実際に養うことができそうである。
「歴史と風土」
司馬遼太郎
文春文庫
01年4月完読
司馬が日本と日本人、また近隣アジア諸国を語るエッセイ集。ここに、
ストレートな司馬の考え、思想を見ることができる。その点では、価値
もあるのだが、しかし、正直なところ、歴史小説の方が断然おもしろい
し、そこに垣間見える司馬の想いを見つけ出す楽しみもある。ただし、
自身の書き下ろした小説の舞台裏などに言及するものもあるので、そ
こは興味深く読んだ。司馬の永遠の命題であった(ように思われる)
仏教の話となると、私には知識も興味もないので、飛ばしてしまった。
「ペルシャの幻術師」
司馬遼太郎
文春文庫
01年4月完読
何と司馬遼太郎の処女作が、文庫本として初登場。今までは、全集で
しか読めないものであったので、手にしたときは感動ものであった。昭
和31年に、初めて「司馬遼太郎」のペンネームで執筆され、第8回講談
倶楽部賞を受賞した作品でもある。舞台はペルシャ、モンゴルの王
ボルトルとペルシャの幻術師アッサムとの戦いを描く。戦国・幕末の
イメージが強い司馬作品の中ではやはり、異質に感じざるを得ない。

しかし、舞台は違えど、司馬の原点はこの中に十分感じられる。
「翔ぶが如く 1〜10」
司馬遼太郎
文春文庫
01年2月完読
明治維新後の大久保利通と西郷隆盛の確執を描いた長編小説。実は、
この小説を初めて読んだのは、学生の頃。当時は、1巻を読み始めた
ところで早々に「おもしろくない」と感じ、闇に葬ってしまった。幕末には
異常なほど興味をもっていたのであるが、その後(明治維新)はどうも
苦手だったせいでもある。司馬作品を途中で投げ出したのは、最初で
最後である。しかし、この年になってようやく10巻まで読みきることがで
きたわけであるが、西郷隆盛という男がますますミステリアスに感じら
れた。一方の大久保利通は、正直、見直してしまった。