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川澄さんのアンコールワット旅日記 −4

12月29日。
今日はアンコール遺跡群めぐりの最終日である。鼻薬効果で日程を詰めた結果、我々はトンレサップ湖を観光する機会を得た。

 このトンレサップ湖は、カンボジアのほぼ中央に位置する大湖である。
雨季と乾季ではその大きさが著しく違ってくるため「伸縮する湖」といわれている。
我々の訪れた時期は乾季なので、約3000平方キロメートルになっているが、雨季になると約3倍の9000平方キロメートルの面積にまで膨れ上がる。
生息している淡水魚の種類も多く約300種類。種類の多さでは
東南アジアで一番だそうだ。
このトンレサップ湖まではシェムリアップ市街から車で約30分。
道中の景色を楽しみながら、暴走運転に近いドライブに、顔を引きつらせながら
船着場に到着。
我々だけのチャーター船に乗り込み、いよいよクルージングの開始である。

この湖には水上生活者が大勢いるので、家屋はもちろんの事、小学校も商店も
ガソリンスタンドもみんな水上に浮いていた。
ベトナム人の水上生活者の生活状況を所々で垣間見ることができたが
裕福な家庭はひとつも見当たらない。
むしろこれが人間の生活かと思うくらい貧困であった。
それでも全体には明るく元気で活気がある。
活気があると言うよりも生活するために必死なのであろう。

「オッ、ボート競走をしているのか?」と思いきや、我々の船を目がけて
必死に手こぎの小型舟がやって来た。
野菜、果物、土産品を売ろうと近づいて来たのである。
今までの旅行ではOさんが彼らの餌食になっていたが、今回はTさんが餌食となり
食べたくも無いバナナと、ぬるい缶ビール5個を買うはめになった。
これ以上の犠牲は払いたくないので、ルッティーに船を出すように指示。
我々の船が、彼らを振り切るために急発進したので、売り子のオバサンが
湖にドブンと落ちてしまった。
オバサンにとってはお金がトレンサップで気の毒であった。

昨夜、寝る前にガイドブックで予習したところ、帰路の途中に
プノン・クロムという9世紀末〜10世紀初頭の遺跡があることを知った私は
ここでまた我ままを言って車を止めさせた。
プノン・クロムはトレンサップ湖畔の山の上にある。
湖畔からは山の中腹まで階段を登って行く。
ガイドはここまでと言ったが、私は予習していたので、それでは満足できず
一人で山頂にある遺跡まで行った。
苦労はするもんですね!遺跡に一人の外国人の美女が居ましたよ。
ハンサムな東洋の男性をみつけた彼女は
私に「Where are you from?」と話しかけてきた。
私は答えて「From Hotel」。
すると彼女は「日本人ですか?」と見事な日本語で・・・・・・。
しばらく彼女と楽しい会話をしていた私だったが、悪いことに下で待っている
メンバーの事を思い出してしまった。
後ろ髪を引かれる思いでさよなら言って下山。

 シェムリアップに帰った我々は昼食会場へ直行。
昼食後はオールドマーケットで土産物をショッピング。
ホテルに帰って荷物をパッキングして、名残を惜しみながら
シェムリアップ国際空港へ向かったのである。
楽しい有意義な4日間であった。
印象的なシーンが脳裏を走馬灯のようによぎる。
何度も何度も同じシーンがよぎる。

おわり


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