今年のセミナーの講師には、かなり以前から目をつけていた浜田先生とロンドンの竹内先生を招聘するつもりでいました。途中でガンバはロンドン在住の市瀬礼子先生に決まりかけたのですが、浜田先生にお願いした際、先生の方からアントネッロの3人でどうかとのお話を頂き、浜田先生、西山先生、石川先生と竹内先生というバロック協会らしい楽器の組み合わせになりました。今年、声楽や他の楽器がないのは昨年のセミナーでは人が集まりすぎて練習場所がなくなってしまったことからの反省です。
7月に入ってから、竹内先生に突然不都合が発覚し、急遽、リュートは永田先生にお願いすることになりましたが、今回に関しては、普段からいっしょに活動なさっている先生方の方向性が一致しており、合宿全体の統一感もより一層高まったような気がします。

アンケートから、「今年は、とにかく講師演奏会のインパクトがものすごかったです。ノリノリで、あんな演奏があるんだなぁ、と終了後は興奮状態でした。とくにラストのヘンデルのソナタが、とんでもなかった・・・」ヘンデルではチェンバロ、ベース(ガンバ)、サイドギターがコードとリズムを受け持ってその一段前にリコーダーがソロを取るという、まるでバンドのような編成で、徹底して装飾された旋律の妙技とタイトなリズムがとても気持ちのいい演奏でした。CDの録音予定もあるそうです。「レッスンでは、その演奏のノリの極意()を教えて頂きました。拍のとり方が今までとまったく違い、強拍よりも裏拍を強調というか、重くするというか、そんな感じの指導を受けました。テレマンのトリオでは、“ダバダバダバダバ・・・”というイメージで弾いてのことで、このまるで古楽とは違うと思っていたノリが、ビート感、スゥイング感を生み、にわか仕込みながら、一挙にアンサンブルが楽しくなりました。」
このリズムの裏打ちがアントネッロのアイデンティティの大きな部分を占めているような気がします。ともかく、ノリがいいのですよ。浜田先生のレッスンでは笛を吹きながら(中にはガンバを弾きながら!)踊らされている人がいました。
その横ノリはまるでパラパラでしたが、「パラパラって何?」と言う人が圧倒的というところが、さすが、バロック協会。その後、演奏しながら踊っている人がそこここで見受けられたのはいうまでもありません。
ここまで徹底した方法論は混成チームでは実現できないことを痛感しました。恒例のインタビューでは、先生方がアントネッロの方法が異端扱いされる危険性について色々お話していただいたのですが、古楽の世界も今や教条主義にはまり込んでしまったことを改めて感じました。
元々、僕が古楽の世界にどっぷりはまったのはクラシック系教条主義から一番遠い世界にあり、情報も不確かなために常に勉強をしていかないといけない代わり、想像力を働かせる余地が大きいところに魅力を感じていたからです。アントネッロの方法論への強い意欲はそれを強く感じさせるもので、自分と同世代であることも加わってとても魅力的なものでした。最後に、インタビューから、いくつかの言葉を。「(ヘンデルを作りこむには)千回くらい喧嘩しました。」「僕たちは練習時間が少なくて本番をやったことを自慢しようとは思っていません。」「僕らなら理論書を20提示できるけれど、(他の演奏家は)どれ位提示できるでしょうか?」

1.アントネッロを呼ぶということ

「アントネッロのメンバーの演奏は皆のりが良くて、楽しかったのですが、私が一番感激したのはボナヴィータさんでした。周りの人から彼の経歴などを聞いていたので、まだしも納得でしたが、あんなほんわかしたキャラクターがギターを持つと超かっこよく変身するのは見物です。」今回のセミナーで僕が一番びっくりしたのはこの人の出現でした。講師演奏でのギターの強烈なこと!西山先生のお友達ということで、8月にコンサートやレコーディングの関係で来日するため、この合宿にも同行されることはかなり前から決まっていたのですが、講師としての招聘は見合わせていました。正式な身分ではなく気楽に来てもらえたのでそれもよかったのではないかと思っています。まだ、若くてあまり名前も知られていませんが、数年後にはトッププレーヤーになっていることは間違いないでしょう。そんな人に来てもらえたというのは、本当に幸運でした。

今年もアグレッシブなセミナーになりました。参加いただいた皆さんに感謝します。来年もよろしくお願いします。

2.ゲスト ラファエル・ボナヴィータさんのこと
00年セミナーのもよう
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