昨日は綺麗な秋晴れだったのに、今日は雨。
そういえば一昨日も雨で。
季節の変わり目は雨が降りやすいのかな。
雨の所為で好き勝手ハネる髪の毛を押さえて、図書室のドアを開けた。
遠い5p差。
「…‥。」
「あ、寝てたでしょ」
「別に」
「ふーん、そっか」
どさ、と重たい鞄を肩から下ろす。
「英語なら教えてあげるけど」
英語の教科書を見せないようにして、国語の教科書を取り出すわたしに、意地悪そうにリョーマくんは笑った。
つい、とそっぽを向いて奥の机へと向かおうとするわたしの腕を、リョーマくんはぐい、と引っ張った。
「…今、誰もいないんだよね」
「………静かで勉強はかどるね」
「………。」
「ねえ」
「…なあに?」
本の貸し出し場所から離れ、わたしのとなりに座るリョーマくんを横目でみた。
ぶすっ、としつつも、何か企んでいそうな瞳が気になって仕方ない。
「…ひまなんだけど。」
「…‥し、‥仕事あるでしょ」
耳のそばぎりぎりまで顔を寄せて、耳元で囁くリョーマくんに、身動きがとれなくなる。
わたしの髪を弄ぶリョーマくんの表情が安易に予想出来てしまって、余計に恥ずかしくて顔がほてるのがわかった。
きっと彼はわたしが戸惑うのを見て、意地悪そうな笑みを口元に浮かべているのだろう。
「仕事は後でも出来んじゃん」
ぎゅ、と更にわたしの方に身体を寄せてだきつく。
上目使いで見るリョーマくんを、きっ、と睨んでやった。
「それなら」
「あのさぁ、センパイは俺とふたりっきりでも何も思わないわけ?」
なに、…それ。
キスしたいとか、そういうコト?
そんなの、リョーマくん所構わずするくせに!
「…‥まだわかんないの?」
びく、と身構えたわたしの手を優しく取り、わたしの唇へと甘いキスを二度も落とした。
「っリョーマくんのばか!」
「嬉しいくせに」
ふふん、と勝ち誇ったような顔のヤツが憎らしくて、ヤツの頬をひっぱってやった。
そして極めつけに、
「チビ!!」
とだけ残して図書室を飛び出した。
後ろから何か言ってるような気がしたけど、無視して走り続けた。
リョーマくんとわたし、身長差5pの頃の出来事。
今はすっかり抜かされてしまったけれど。