洋一の単独富士山登山記 2005.8.23-24


3年前・・・
俺を除いて家族全員が富士山を登った。
そのころのおれはテニスに忙しく 旅行より部活 と行った感じだった。
今・・・
あと1、2ヶ月後に引退。
引退する前、体力があるうちに富士山でも登っとくかな?
また、実質最後の夏となる高2の夏、冒険がしたかった。
いつ死ぬかわからないこの世の中、やることやっとかな。
そんな理由から、富士登頂を8月入ったころから企てていた。

しかし登る登ると言っといて、結局本格的に準備し始めたのは2,3日前。
母さんに富士山の観光雑誌を貸してもらい、まず登山口を決める。
このころはまだ敬太と一緒に行こうと考えていた。
又、いろいろ話を聞いてどの道がいいとかどうきついとかなにがいるとか
経験者から学んだ情報はかなり役に立った。
宿は6500円で一泊2食付き、富士山を河口湖をはさんだあっちがわに見える
最高の立地条件、ただ駅から少し遠いのが難点だった。
しかし、体力を自信とするおれは気楽に考え、景色や値段優先で考えていた。
当初の計画は2種類あった。
一つは、
登頂前日に行き、温泉などにゆっくり入り一日目はふもとの宿で、2日目の早朝に登山開始、という計画
2つ目は、
一日目にもうのぼりはじめ、7,8合目ぐらいの山小屋で一泊、ご来光を見に行こうかと考えていた。
しかしそこまでハードなスケジュールが好きでないおれは、前者を選んだ。
まだ行く方法は漠然としか決めていなかった。
そのとき、敬太が一緒に行けないことがわかった。あぁ。。まぁ一人でもいいか?
自然に受け入れた。突然なのでびっくりしたけれど、もう17歳、一人でも十分いける。
少し自分の力を過信してた部分もあったけれど、不安より自信のほうがはるかに強かった。
ゼッタイ、登ってやる。
一人となったので、当然自分の都合だけでいろんなことが決められる。
登頂方法、登頂のペース、ふもとまでのルートなど
当初はバスで名駅から河口湖までの直通に乗ろうと考えていたが、
要予約とのことなので前日に調べていた俺は断念。
母さんと話し合い、在来線で行ってみようかということになった。
調べてみると、3時間44分で三島までいける。
ウホッ! バスより安い上に速い
こりゃああああいい。 新幹線は7000円近くかかるのでやめた。
在来線でも結構いけるやないかい。かなりインターネットが役立った。
前日までほとんど用意してなかった俺はかなりあせっていた。
かばんも家にあるやつでいくかー と考えていたのだが、ない。
仕方なくガレージに捨てられそうになっていたリュックサックを急遽裁縫補修。
杖、サングラス、帽子など 必需品もかばんに。
杖は3年前家族の誰かが使ったやつにした。登る前から頂上の焼印が入ってるのもなんだけどな・・・
と最初は思ったけど、リピーターっぽくていいかな とプラス思考になってみた。
親父からの反対があった。
いろいろな掟を作って、なんとか了承してもらった。
心配させてはいけない、無事かえってこなければ・・・。

前日に調べたとおり、8時19分に安城駅の電車に乗る予定。
6時45分ごろ起床し、身支度をしていろいろしている間にもう7時半。
しかしやることがなくなってしまった。 ふぅ〜 ちょっと早すぎたかな?
もう一度チェック。 母さんに駅まで送ってもらう。
まさか、富士山で死ぬとは思ってなかったけれど、もしも・・・のことを考え家を振り向いた。
まぁ、大丈夫やろう。 
三島まで3500円ほど。
安城→豊橋→静岡→三島
で、2回乗り換えをした。
豊橋から三島までの間、普通列車しか走っていないのには驚いた。
なるほど、主要都市がない分人口が分散しており、快速など跳び足列車は必要ないらしい。
普通列車にがたんごとんと揺られながら目的地を目指す。
母に貸して貰った本を読んでいた。「異邦人」結構有名な書。
なんとも居心地がいい旅だった。外を見ると、時折雨が。先を不安に思う。
しかししだいに晴れていき、海をも望める場所まできた。きれいだ。
静岡で熱海行きに乗り換えると、登山客が多く見られた。
ところが他の登山客は途中で降りていってしまった。
静岡から三島まで108分、かなり遠い。ほんとに合ってるかと自然と不安が募る。
あと40分ほどで三島、しかし不思議と時間の経過が感じられなかった。
それよりも、由比付近で見た海が最高に絶景だった。
そういえば、この辺は・・・ 1ヶ月前のパールレースが頭に浮かぶ。
いろいろあったな・・・。またヨットに乗りたい。
11時44分、三島に到着。
バスはすぐではなかったが、わかった。きれいでのどかな場所だった。
旅行客でごった返していたが、それがまた三島の雰囲気をよくしていた。
12:00、バスに。
かなりお客さんが多く見られ、地元の人も乗ってくる。
あいにく人が多く立って本を読んでいたおれは少し気分が悪くなってきた。
異邦人を読破。結構いい本だった。自然と入り込んでしまう内容で、先日読んだ老人と海より
かなりよく思えた。
ここからは外の景色でも楽しみながら行くか。そう思い、イヤホンをはずし黄昏ていた。
帰省客とのことで道が少々混んでおり、予定より少し遅れるとのこと。
はぁ〜早く着いて温泉いきたいのに・・。4時間におよぶ電車と2時間ほどのバスで、少々飽きがきていた。
山中湖を通ったころ、湖を見るといろんなボートが出ており、ディンギーの姿も。
いいねぇ〜 ディンギー乗りたくなってきた。富士山じゃなくても、この辺で富士5湖めぐりでもいいかなーと
考えていた。
バス酔いが激しくなってきた。揺れるたび、うお・・・・やばい、の繰り返し。
ビニール袋の場所を確認し、いつでもかばんから出せるようにしておいた。
座らせてくれ・・・・。。。 おばさんや子供がぺちゃくちゃ楽しそうにおしゃべりしている横でおれは必死に吐き気と戦っていた。
14:52 無事河口湖駅に到着。
ふぅ〜〜〜疲れた。しかも、腹が減った。電車の乗り継ぎなどで完全に昼飯を忘れていた。
まぁ、無事に着いてよかった。 まず一安心。家族にメールを送る。
宿は、思い描いていたとおりの場所だった。周りを緑に囲まれ、のどかでほんとにいいとこだ。
部屋は一人部屋?2人部屋?かわからないけど、結構綺麗。
なにより、まん前に河口湖が広がってる上に、富士山も望めるという絶好のポイント。
部屋で寝転びながら富士山を見れるというこの幸せ。
どうやら、他に泊まっているのは若夫婦2人だけらしい。
とりあえず、着いたのでおかみさんといろいろ談笑をした後温泉へ。
温泉は歩いて12分ほどの場所。天水、というところらしい。
途中で何回か記念撮影をした。一人で撮影・・・というのもなかなか恥ずかしいが、周りに人がいないので。
温泉は綺麗で、なかなか人がいた。ほとんどは富士山の下山客というところか、日焼けしている人もちらほら。
宿での夜飯は、6時半から。それまで1時間ほど時間があるので、湖のほとりで時間をつぶしていた。
ほんとに絶景で、湖と富士山のマッチさが絶妙。
どうやったらよく写真であるような富士山が湖にうつる写真が撮れるのだろうとぼんやり考えているうちに、時間が近くなってきたので部屋へ戻った。
飯を食べてる間、登頂当日の朝について宿のおかみさんと話し合っていた。
若夫婦も富士山を早朝に登るとのことなので、おかみさんの息子さんがバスセンターまで送ってもらえるとか。本当にラッキーだった。なにしろ、宿から駅までは20分以上も歩き続けなければならないのでどう行こうか迷っているところだったので。
お言葉に甘えて、バスセンターまで送ってもらうことに。その話の間に、隣でごはんを食べていた若夫婦といろいろ話していた。当初大学生だと思っていたらしく、高校生といったらかなり驚いていた。
そこまで驚かなくてもいいのに・・・と思っていたけど、なかなか悪くはない気分だ。
次の日は朝が早いので早めに風呂へ入り寝ようと思い宿の風呂へ。
そしたら・・・な、なんと浴槽の水が赤いのだ!なんてこった。
しかもさっきテレビを見ていたらちょうど富士の樹海についてやっていた。これは・・・
こういうとき敬太がいればな。もう一人いれば怖さは半減する。
一人というのはどうしても嫌なことを考えてしまうもんだ。赤い風呂、富士の樹海・・・
まぁ、まぁまぁまぁ。 落ち着いてザーとことを済ませて出てきた。
隣の部屋を見ると、電気が消えている。どうやらどこかに散歩に出かけているようだ。
おれものどが乾いたので外を出歩いた。
夜の富士は本当に綺麗。だんだんと目が暗みになれていくうちに湖と富士山のコラボレーションも手にとるように見えるようになってきた。この風景をレンズに収められれば・・・。。。まぁ今回は目に焼き付けておくか。
湖のほとりでジュースを飲みながら富士をながめる。山小屋の明かりが綺麗だ。
昼の富士もいいが、夜の富士というのもまた風情があっていい。明日はあれに登るのか・・・。ゆっくりと時間は流れた。一人旅というのは自分のペースでゆっくりできるのがいい。
明日は早い。なにしろ5時15分に出発。登頂も結構疲れるんだろうな・・・。
いろんなことを考えているうちに眠りについた。

登頂当日
4時45分にアラームを設定、予備に50分も。予定通り起床し身支度をしているうちに約束の時間に。
おかみさんにお礼を言い宿代を払い、息子さんの車に乗車。若夫婦の登山スタイルにびっくり!
本当に「ザ・登山」といった具合の格好をしていた。
おれはといえば・・・家にあった長ズボンとさざえさんTシャツ、それにテニスシューズ。
まぁ、いけるだろ(笑)こんな性格でよかった。
バスセンターに行く途中、コンビニで買い物をした。るるぶに載っていたとおり、水といろんな菓子を購入。
ここで勉強したのは、水分は「真水とお茶orスポドリ」、軽食はチョコなどカロリーが高く収納がきくコンパクトなものが◎だ。ここでじゃがりこを買ってしまった俺はあとでかなり後悔。なにしろ一人旅なので荷物はすべて自分で持たなければならないので、かばんはパンパンだった。
バスで5合目まで。もう、雲と同じ高さに。すげー。。。
登山前にいろいろし、高山病に備えた。後に考えればこの20分程がかなりよかったと思う。
まず、朝食を食べ、景色を眺め、トイレを済ませ、準備運動や最終チェックも。
そうこうしている間に若夫婦は行ってしまった。まぁそのうち追い越すだろ。
7:00から登頂開始。
なかなか風が強いので、サングラスはかなり役に立った。
周りを見るともう吐いている人がいるので、あぁーやべーなと少々不安になっていた。
7:15 6合目に到着。
最初のうちは砂の道を歩いていたが、6合目を過ぎると時折岩を混じる道に。
なかなか足場がきつくなる。
思ったより意外にキツイ。しかし、登るごとに華麗さを増していく景色。
それを見たいがために、登る。日本一の絶景を目指して。・・・・・あと何メートル?笑
7:37 少し風が強くなってきた。
カメラを構えると、両手を挙げるので少しグラっとくるほどの強風。ここで初めて恐怖感を感じた。
7:45 7合目に到着
少し早すぎ?と思ったが、一人だからこそこう登れるのだ。
もし2人以上なら、当然他人を待っていなければならないが、なにしろ一人。
自分のペースでガンガン登っていけるというのが本当にいいところだ。
8合目付近で、「雲の上の存在」を堪能。
このころかなりの強風で、道の端にあるロープを持って登っていた。
なにしろ時折岩場を登る・・・といったような場所も見られたので余計に恐怖感が増す。
8:30 8合目に到着。
早い?か? 山小屋で家族連れの人たちと話す。
10歳の子供がここまで来たらしい。この風で・・・と思ったが、今回は風が強いのでここで終わるらしい。
「今回は」というのがすごい。なにしろ去年も登っており、7合目まで来たそうな。
お別れを言いまたのぼりはじめる。
岩場は杖がかなり役に立った。 ←こんな具合

8合目を過ぎたころ、足がかなり重く感じ始めてきた。
まだまだ!!!!  ・・・うんこしてー。
9:00 8合目途中の小屋で大便。当然臭いが少なめの場所を選んだつもりだったが、ここは富士山。
水がないので当然どこのトイレもくさかったので、妥協した。
くさいけどしゃーないしゃーない♪ふぅ〜スッキリ♪
9:17 本8合目に到着。
8合目といっても、いろいろあるらしい。でもここが本物の8合目・・・らしい。
下を見ると「お〜〜〜」
上を見ると「はぁ・・・」 なかなか頂上が見えない。
絶えず雲に隠れているので、少々不安も。かさ雲・・・あかんあかん。
出発。そろそろ疲れてきた。また、周りに人影が少なくなり、とうとう一人に。
もうこうなったらやけくそだーー!! と、歌を歌いだした。
はぁはぁいいながら歌うので余計にきつかった。が、歌でも歌ってないとやってられない状況だったので。
9:41 8合目の半分。
ふぅ〜〜。。 自然とため息がでる。空を見ると、雲が迫ってきている。
いわゆる頂上からの吹き降ろし・・・といったところか。
本当に文字通り自分に向かって雲が向かってきている。こんな体験はなかなかできない。
また、とても風が強いのですごい速さで動いている。
一服し、出発。 もうすぐだ。

10:15
やほーーーーーーー!!!!!
頂上着いたよついに!!風が最強で曇ってるけどコンディションは最高♪♪
吐き気がないし気分も全然悪くない↑↑うっほほ〜い♪        (手記より)
本当に高山病にもならず、気分も最高。ただ景色が見えないのが残念。
3時間15分という短時間で登ってしまったのでなかなかうれしかった。
いろんな人にメールをした。やっぱりうれしいことは人にしゃべりたくなるものだ。
親父や母さんは祝福してくれ、友達はたいそうびっくりしていた。
うどんを食べ、一服。ふぅ〜。。富士山では周りの人はみな友達だ。
いろんな話をした。
すると、3776メートル地点は他にあり、お鉢周りをしたらいけるらしい。
が、この最強の風の中しかも河口からの吹き上げる風と霧により、
まさに一寸先は闇。闇というか霧というか雲というか・・・本当に前が見えない状況。
こんな状況で一人でぐるっと反対側まで行くのは本当に危険なので、近くにいた夫婦の人と一緒に行動した。夫婦の方らも実は困っていたらしく、今度は3人でツアー客についていった。
           風、最強 (手記より)
本当に風最強だった。海の上での風と山の上での風、どっちが強いのだろう?
本当に吹き飛ばされると思うほどの強風。恐怖感があるほどの強風。それに軽く雨も降っていた。
本頂上を目指し、一列をなして歩き出した。
11:47 3667メートル地点に到着。
風と雲で周りがなんにも見えなかった。う〜ん・・・こういうことがあるから、また登ろうかなーとか考えになっちゃうんだよな〜(笑)と思っていたら急に用をたしたくなってきたので、観測所に飛び込みトイレを貸してもらった。2004年秋から無人と書いてあったはずなのに人がいたのに少々びっくり。
そろそろ下山かな。

12:19 お土産を買い、下山開始。
親父の助言どおり御殿場口いきの砂走りルートを選んだ。
が、いつまでたっても砂走りができる場所にたどりつかない。
それどころか強風と雨にさらされ、体の芯まで冷え込む。パールレースを思い出す。
なんとしても早く降りなければ・・・
休憩したかったが、降りる途中一軒も山小屋がなかった。
当然トイレの機会が何回かあったのだが、山小屋がないのでしょうがない。
周りには本当に人がおらず、後に数えてみたところ本当に10人ほどしか通り過ぎなかった。
立小便を3,4回し、マッハで降りた。ただただ降りることばかり考え降りた。
くだりは本当に危険がいっぱいなので、細心の注意を払いながらも、除序に下がる体温を身に感じながら
下山を急ぐ。
姉貴に「ごみを拾いながら降りてきな!」といわれ、ゴミ袋を用意していたが、いまや
ゴミ袋は吐きそうになったときの緊急用、ごみを拾ってくるどころか自分の骨を拾ってくるなんて状態になりつつあった。
手記を書こうとしても、メモ帳がしめりこんでかけなかった。
寒い。一刻も早く下山を急いだ。
夏、風は
こんな状態なので、
夏は河口湖から登ったほうがよさげ。本当に環境が悪い。
やっと、雲から抜けいい景色が。
本当に綺麗だ^^ 何回もシャッターを切る。
しかし体の冷えはなかなか治らず、厚着のまま砂走りルートを走り降りた。
なかなか、面白い。できればダンボールがあれば・・・
なるほど、行きにおじいさんの話によるとバイクや自転車で登る人もいるとのことだったが、
こういうことか。確かに御殿場口からだとかなりゆるやかで、のぼりは時間はかかるが楽そうだった。
砂走りは本当に爽快だった。ただ、靴がテニスシューズで堀が浅いので、どんどん砂が靴のなかに入り込んできて、ついにはあきらめてがんがん降り始めた。時折景色を見て、フィルムにおさめながら。

14:04 下山完了。
ふぅ。疲れた。1時間45分で降りてくるなんで・・・われながらナイス。
下の茶屋でゆっくりし、お菓子を食べジュースで一服。
今度来るときはダンボールをもってこなな・・・。
まだ雲は同じ高さにあった。今近くで自衛隊が演習をやっているらしい。
3時のバスに乗り、御殿場駅へ。
体中砂まみれで、冷え込んでいたので温泉をさがした。
駅周辺では温泉はなく、銭湯へ。
人生初銭湯だったのでかなり戸惑ったが、なかなかいい経験をした。
銭湯を出て初めて気づいたのが、耳の穴の中にまで砂が入り込んでいたこと。
そ、そこまでは気づかんてー!!!笑
御殿場→沼津→静岡→豊橋→安城
17時ちょうどに出発して、安城に着いたのが21時半ごろ。
やっぱり在来線は・・・。。。新幹線のがよかったかな?笑

ひょんな理由から登った富士山。
ひと夏の大変貴重な経験となり、自信もついた。
一人旅というのも初めてだったので、いろいろ戸惑いもあったけど、
用意などほぼすべて自分でやらなければならなかったうえ、なにかあるとすべて自分のせいになる。
そんな状況が自分には一番合っているらしい。
もう一回富士山を登りたいか?
自分に問う。もちろん、今度は景色がいいときに天気がいいときに登りたい。
又、今度はせかせかせず、友達とゆっくり景色を味わいながら登りたい。
なかなか、いい思い出になった。おつかれさん。