建設委員会視察報告書  星野雅春
日時平成17年10月19日()〜21日()
1、               神奈川県秦野市
研修テーマは水道局のISO認証取得ではあったが、秦野市の水道事業全般や取り組み姿勢が大変参考になった。刈谷市は水道水の原水の3割を地下水・伏流水に頼っているにもかかわらず地下水の保全などについてなんら施策や条例がないのが不自然だ。刈谷市内で井戸を掘る時、県西三河事務所に届出をすれば可能だ。だが秦野市では申請しなければならないし、申請したところでまず許可されないとのことである。たとえば豆腐屋をやりたいが地下水が必要だといっても、だめとの厳しい対応だそうだ。秦野市ではかつて地下水の汚染が広がり莫大な資金と労力を強いられた苦い経験がある。こうした背景の中で、地下水の保全や水源である丹沢山塊の森林保護につながっている。地下水は井戸を掘って使用する人のものではなく、市民のもの公水≠ニ位置づけている。すでに地下水を使用している企業などにはトン当たり20円の地下水協力金を徴収している。水源となる地下水保全のため休耕田に水を張る事業や家庭用雨水浸透ますの補助金制度も実施している。こうした施策の根拠条例となる地下水保全条例がある。刈谷市は同様の施策を実施しているが雨水による浸水対策事業として実施されている。条例に裏づけされた理念や目標、市民の役割を明確にした水道事業が必要性だし、水道事業全体を協議する水道事業審議会の設置が必要だと思う。食の安全も大切だが、食の安全の基本は水だ。 刈谷市の水道事業の施策の目標がここにあるような気がする。

 

2、               東京都世田谷区
研修テーマは密集市街地の整備改善であった。都市整備公団と連携した上馬・野沢周辺地区の町づくりを視察した。この地域は都市計画道路・主要生活道路・区画道路が未整備のまま残された防災上課題を持つ地域だ。狭い道路、行き止まりの道路、老朽化した木造住宅などが密集している。またオープンスペースや公園が不足してる。 これも防災上の課題を持っている。密集市街地の整備エリア内では、大学跡地を利用した再開発事業に合わせ、前面16m道路の築造などを手がけた。これは約40ヘクタールのうちの一部である。残りの地区では道路整備に主眼を置き、建築確認前に協議することになる。前面道路が狭い場合セットバックが必要となるが、このセットバック分を買い取ることになる。財源は国が50%、都が25%、区が残り25%になるという。街区ごとの再開発や区画整理は地権者の意向もまとまらず、難しい状況にある。地主が建築確認するときに道路整備が進んでいくというゆっくりとした整備手法にもどかしさを感じる。こうした状況を解決しようとする手法が地区計画である。 地区計画が設定できれば、壁面線の位置や構造など強い権限を発動することができる。この手法を導入すべく準備を進めているというが、住民との合意形成が難しいものになると予想される。刈谷市は今年度密集市街地の調査事業を進めているが、事業の進捗にあわせてしっかり精査していきたい。防災上急ぐ課題だからだ。

 

3、               東京都国分寺市
研修テーマはまちづくり条例であった。都市計画の設定や決議は行政や議会の議決事項であったが、国分寺では、市民が都市計画に提案できる仕組みとしてまちづくり条例を策定した。この街づくり条例制定まで2年間、市民であれば誰でも、いつでも自由に参加できる【街づくりサロン】を165回開催し、述べ1000人を越える市民が参加した。行政がよく使う地区役員の動員型の集会でなく、市の街づくりに大きな使命感と危機感を抱いた市民の熱心な論議の賜物だ。この制度を利用しやすくするために、手続きに関する情報提供や、書類作成などを手伝う専門家などの派遣を実施するとしている。たとえば3000uの街区で住民が、住宅街ではあるが商店街にしようと手続きすることができるという手法だ、極論だが。こうした住民主導の街づくりの例はまだないという。特に特筆されることは強調協議の街づくりとして、開発事業に伴う手続きと基準を定めていることだ。近年身近なところでも、マンションができてからビル風がひどい、日照が悪くなったなどの被害を見聞きするようになった。刈谷市では大型マンションなどの建設は事前協議の対象になっている。だが協議の内容は道路の位置や広さ、駐車場の広さなどの基本的なことでしかない。業者は建築確認や都市計画法に基づく手続きをするときに始めて市の開発指導要綱に基づいた指導を受けるのだが、ここまで事業が進めば住民との話し合いを持ったところでなかなか変更できないのが実情だ。国分寺のまちづくり条例は、土地の有効活用とはその土地の所有者の有効活用であると同時に周辺住民にとっても有効であるべきと位置づけている。この理念は行政が業者と市民との間に立って土地活用の責任を果たす重要な概念だといえる。 国分寺市では、業者が提出する都市計画や建築確認以前に住民との調整手続きとして、住民への説明、話し合い、住民からの意見書提出、市からの指導書の交付、開発事業の再考手続きなど細かく規定されている。業者にとっては手続きが煩雑で時間がかかる仕組みだが、市民にとっては好意的に受け入れられているという。土地の有効活用に対する理念や手法は大いに勉強になった。