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日々の診療の忙しさにかまけて、提供している医療サービスの質が低下していることに気がつかず、いつのまにかゴーマンで独善的な開業医になっている。そんな恐怖感に襲われることがしばしばあります。個人開業医は自分の診療内容を第三者から評価されるチャンスがほとんどない。したがって、誰からも批判されない閉鎖的な環境で、営々と質の低いサービスを行っていても、「裸の王様」である自分にはわからないのです。うーん、こわいですね。では、どうすれば独善的、閉鎖的な医療に陥るのを予防できるのか?
診察室を飛び出して、全国的な学会やワークショップに積極的に参加するのは、外の世界を知る方法のひとつです。専門医会や家庭医のメーリングリストで交わされている討論に加わることも他流試合になるでしょう。さらに、各地で「患者中心の医療」を実践されている開業医の先達に出会うことは、もっとダイレクトな刺激となって自分にフィードバックされると思います。気どった言葉で言えば「ロールモデル(役割のお手本)」を見つけるということですね。
ふり返ってみると、医者になりたてのころには、「あのひとのようなドクターになりたい」と強くあこがれた先輩をロールモデルとして選び、一生懸命にそのマネをしながら研修したわけです。いまの自分は「開業医科の研修医3年生」みたいなものですから、開業医の先輩たちのなかから、自分のロールモデルとなる人々を見出して、わが身の未熟さを直視するとともに、先達の卓越した思考や実践のエッセンスを取り入れれば、独善的、閉鎖的な「悪い院長」になるリスクを減らせるのではないでしょうか。
さいたま市の「いいじまクリニック」院長である飯島克巳先生は、そんな「開業医のロールモデル」となるかたです。医師としてのキャリアを拝見すると、山形県の山奥や八丈島などでへき地医療に従事されたり、自治医科大学の助教授として地域医療学やプライマリ・ケアの研究・教育に業績をあげられた後に、開業医の仕事を選択されています。先生がお書きになった「外来でのコミュニケーション技法」、「外来での行動医療学」や、訳された「メディカルインタビュー」などの本は、勤務医時代からのわたしの愛読書ですが、そこには一貫して「質の高い患者ケア」を希求する医師の航路が描かれているようです。
わたしが密かに私淑する飯島先生が、個人経営の開業医となられてから5年間の実践をふまえて、最近新たに上梓されたのが「開業医療の新パラダイム [人生の旅モデル]」(日本医事新報社刊)です。おもしろくて、一気呵成に読みました。そのなかには、開業医療の本質が魅力的な術語(ターム)を使って語られています。たとえば、「見届け医療」。かかりつけの患者さんが検診を受けて、大腸にがんが見つかったとします。わたしは信頼できる外科医や評判のよい病院をご紹介し、患者さんが無事に手術を受けて、元の生活に戻られるまでを見届けます。このような開業医の行動を「見届け医療」と名づけられた飯島先生は、「このプロセスに継続的に関わり、それが円滑に進行しているか否かを監視し、必要なら"かかりつけ医"として介入する。患者の回復過程を支援し続け、ついには患者が本来の生活に復帰したことを見届ける。狭義には診察でも治療でもないこのような患者専門医としての行為も、重要で立派な医療技術であることに気づいたのである。」と述懐されております。
本書のなかで提唱されている「人生の旅モデル」とは、「臨床の場において、まず山あり谷ありの人生を、近い目的や遠い目標を持って旅する人を思い描く。次いで、旅の途上でその人が健康上の問題に遭遇した時に、どのような支援を行えばよいかということを総合的に検討するための臨床モデル」です。このモデルでは、「旅する人=かかつけの患者さん」なのですが、それ以外にも「旅する人々の一行」も登場します。「旅する人々の一行」を構成するのは、「旅する人」の家族だけではありません。患者さんと同じ地域に住み、文化や生活を共にする開業医も「旅の一行」のメンバーになっているところが新鮮ですね。ここでの開業医の役割は、「旅する人」の連れ合い(つれあい)として、旅そのものと、旅の一行の様子をよく観察し、必要に応じて医療面での介入を行うということ。「開業医は、まず患者の人生の旅を不当に邪魔したり、歪めてはならない。できるだけその継続を支援する。そして、看護る(みまもる)。特に、患者が不幸にして複雑で深い医療の森を通り抜けなければならない時には、旅の一行のメンバーとして、医療専門職の立場から彼らを案内し、その安全を守るものである」という言葉のなかに、「人生の旅モデル」における、わたしたちの役割や仕事のすべてが語られています。
ここまで書きすすめながら、「じーんせい、らくありゃ、くぅーも、あるさぁ〜」という、有名な唄の出だしを口ずさんいる自分にハタと気がつきました。そうか!「人生の旅モデル」は「水戸黄門モデル」だったのか。街道を旅する「善良な男女」を「患者さん」に、それを見守る「水戸のご老公」を「開業医」に、善良な男女を苦境におとしいれる「悪代官」を「患者さんを襲う病気や健康上の問題」に置き換えてみましょう。善良な男女の危機を知ると、旅の連れ合いである黄門さまチームがどこからともなくあらわれて、悪代官を退治してくれる。そして、危機が去った一行は、また安全に旅をつづける。それでは、この「水戸黄門モデル」における「印籠」とは何か。悪代官(=病気や健康上の問題)が土下座して逃げ出す、黄門(=開業医)にとっての「印籠」とは、「幅広い医学知識と、患者さんや家族に対する深い理解・洞察に裏打ちされた、問題解決能力」に他なりませんよね。それでは、「水戸黄門モデルにおける、助さんや格さんとは誰か? 由美かおるの出番は?」なんて考え出すとキリがありませんので、今回の日誌はこのへんで。

<この栗は宮崎医院のガーデンでひろってきたもの。
さっそく「栗おこわ」にしてお昼にいただきました。
これぞ吉良の里のスローライフ、スローフード!>
2004年10月10日 「1万アクセス突破記念! 偽(にせ)・記者会見速報」
さる10月4日をもって、めでたく1万アクセスを突破した「宮崎医院ホームページ」。その偉業をぜひ取材させてほしいという希望が、内外のマスコミ関係者から殺到したため、ホームページの主宰者である宮崎医院院長 宮崎 仁さん(42)の記者会見が急遽とりおこなわれた。以下は、その会見の一部を「宮崎医院記者クラブ」のご好意により、ここに再録したものである。
------ まずは、「宮崎医院ホームページ」 1万アクセス突破、おめでとうございます。
ありがとうございます。イチローの安打数が257本をこえるのと、宮崎医院ホームページのアクセス数が1万回をこえるのと、どちらが先になるんだろうって、9月初旬からずっと気にしていたのですが、イチローは10月1日に、うちのホームページは10月4日に、それぞれ記録を更新しました。イチローに先をこされても、正直なところ「くやしい」という気持ちにはならず、むしろ「すがすがしい」感じです(笑)。
------ 院長がイチロー選手をライバル視されていたとは知りませんでした。それでは、大台に乗ったご感想からうかがいたいのですが。
思いおこせば2年前に開設した当時は、わたしとわたしの家族、そして当院の従業員がのぞくだけの零細ホームページでした。「この土地ではネットなんて誰も見ちゃいないのか」といじけた日々もあります。それが、いつの間にやら、こんなに多くのみなさまがアクセスしてくださるサイトに成長するなんて。生みの親としてはまことに、驚天動地、じゃなった、感無量ですぅ・・・(目をうるませる)。
------ この2年間ホームページを運営されていて、うれしかったことは何でしょうか。
メールの威力により、かかりつけの患者さんとのコミュニケーションが格段に良くなったことですね。患者さんにしてみれば、ちょっとした疑問や、診察のときに聞き忘れた心配事なんかでも、メールで気楽に問いあわせることができるし、わたしも空いた時間を利用してゆっくりとお答えすることができます。また、宮崎医院が休診のときでも、お子さんの風邪の容態を、携帯メールで刻々と報告してくださる若いお母さんもあり、「このまま自宅で様子をみていてよいか、医療機関を受診すべきか」などのお問い合わせに対応できるのも便利ですね。最近、海外に滞在中の患者さんが、急にからだの具合が悪くなり、滞在地の病院を受診するという出来事があったのですが、メールのやりとりだけで状況を判断し、帰国の段取りから日本の病院への入院の手配まで迅速にすすめることができました。その患者さんのお話では、海外で発病してパニックになったが、日本にいる「かかりつけ医」とリアルタイムのコミュニケーションがとれて、不安や心配な気持ちを軽くすることができたとのことです。
------ それはすばらしいですね。今度は反対に、ホームページを運営されていて困ることは何でしょうか。
実は困るのもメールなんです。匿名で健康相談を寄せられても、診察させていただかないと答えようもなく、「来院してください」と返信しても、ほとんんどの場合はその後音信不通となってしまう。なかには、「睡眠薬をたくさん出してくれますか」なんていう危ない匿名メールもあるんですよ。また、業者が不特定多数に配信する「出会い系メール」なのか、当院に寄せられた健康相談なのか判別できない場合も困惑します。「こんにちは、亜紗美です。28歳の派遣社員なんですけど、最近、なんだか夜になると体がほてって眠れません。どうしたらいいですか。」なんて文面のメールが届いたら返信すべきか?さらに巧妙なものになると、「33歳主婦です。何でも相談にのってくださると聞いてメールしました。ご返事待ってます。」というパターンも出てきました。おかしな業者につながってしまうとヤバイので、匿名の相談(?)メールに関しては返信せずゴミ箱へという方針にしております。ですから、宮崎医院にメールするときは必ず本名を書いてくださいね。アドレスのみや、ハンドル・ネームしか書かれていないものには対応できません。
------ なるほど、いろいろとご苦労もおありのようですね。さて、好評連載中の「ほぼ週刊院長日誌」について何かコメントをいただけますか。
当院のホームページ内のコンテンツで人気を二分するのが、「宮崎医院の歴史」と「院長日誌」のふたつ。ホームページをはじめて間もないころ、ある製薬会社のMRさんから、「先生、アクセス数を増やしたかったら、毎日更新するぐらいの気合いが必要ですよ」というアドバイスをもらったことがきっかけとなって、「院長日誌」は誕生しました。さすがに、毎日更新するだけのヒマとエネルギーはなかったので「ほぼ週刊」としたわけです。最近では、実にいろいろな人々が「院長日誌」を愛読してくださっていることがわかってきたので、正直なところ相当のプレッシャーを感じながら書いております(汗をふく)。「自分の身辺雑記を、読者が退屈しないように書く」ということが、いかにむずかしいことか。尊敬する内田百閧竡R口瞳の名文をお手本にして、せいぜい文章の腕をあげたいと思っています。
------ それでは、最後に宮崎医院ホームページのファンのみなさんに対して、なにか一言お願いいたします。
みなさまのあたたかいサポートのおかげで、目標としていた1万アクセスを予想外に早く突破することができ、感謝の気持ちでいっぱいです。いま、若き経営者である「楽天」の三木谷社長や、「ライブドア」
の堀江社長の動向に世間の関心が集まっています。彼らほど若くはありませんが、「院長」だって「社長」に負けてはいられません(フロアから「意味不明だっ」のヤジあり)。明朗なセンスと軽いフットワークを生かして、本業である診療はもちろんのこと、みなさまに育てていただいたホームページにつきましても、さらなる質の向上をめざして努力する所存でございます。今後とも、お引き立てのほどよろしくお願い申し上げます(深く一礼)。最後に、次回の院長記者会見はホームページ10万アクセス突破の際に開催することを予告しておきます(不敵な笑い)。

「宮崎医院HP1万アクセス突破」記者会見の模様:
代表質問に答える院長(写真左)と会見に集まった記者団(写真右)
※写真はイメージ映像です!
おまけ 「はみだし院長日誌・ゾロ目コレクションA」
4月24日の日誌では
「7777」のアクセスカウンターを採取して
みなさまにお見せしました。
(このようなキリのよい番号を、
「キリ番」と呼び珍重するらしい。
ネットの世界は不思議に満ちています。)
さて、
今回のゾロ目はこれだ!

10月4日の昼間に採取いたしました。
前回のゾロ目コレクション発表以来、
「アクセスカウンターのゾロ目を
妙に気にする訪問者が増えている」
という噂もあったりします。
そんなあなた、次は「11111」をゲットですぜ・・

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