月刊ぷち健康講座

2003年2月号 「花粉症を迎え撃つ!」

 健康に関するトピックスをとりあげて、やさしく解説する「月刊ぷち健康講座」。今月はそろそろ気になる花粉症についての話題です。


 いまや国民病ともいわれる花粉症ですが、例年2月の中旬ごろよりスギの花粉が飛び始めると、多くのかたがたが目のかゆみ、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状で苦しむことになります。ニュ−スのコ−ナ−でもお知らせしましたが、愛知県衛生研究所が昨年12月9日に発表した「愛知県平成15年度花粉飛散予報」によると、今シ−ズン(平成15年シ−ズン)のスギ・ヒノキ科花粉の飛散数は昨シ−ズン(平成14年シ−ズン)の約3倍に増加し、平年値(平成元年から14年までの平均飛散数)と比べても約2倍に増加するとされています(下図参照)。

                  

 当院にも毎年シ−ズンになると多数の患者さんが花粉症の治療のために来院されます。なにを隠そう、わたし自身が約20年前より重症な花粉症患者であるために、医者になってからは、新しい薬剤や治療法が出るたびに、自らその効果を試す実験台となっております。その経験もふまえて、宮崎医院が提供する花粉症撃退作戦を、@症状がひどくなる前に行う初期治療(予防的治療)、A症状が強い時の薬物治療、B抗原(花粉)を回避するためのセルフケアの3点にわけて説明いたします。


                            

                           こんな花粉が飛んでいます(スギ花粉顕微鏡写真)


@症状がひどくなる前に行う初期治療(予防的治療)

 花粉症の治療をいつから開始するかは、なかなかむずかしい問題です。スギ花粉症の患者さん全員が、花粉飛散と同時にいっせいに症状があらわれるならば、治療開始の時期を決めるのは簡単なのですが、実際には花粉が飛び始めてから、鼻水やくしゃみなどの症状があらわれるまでの期間は、個人により非常に大きな差があります。

 わたしのように1月中旬の「初観測日(花粉捕集器のプレパラ−ト上に、1個でも花粉が観察できた最初の日)」直後から何らかの症状が出てしまう過敏な患者もあれば、2月中旬の「飛散開始日(花粉捕集器のプレパラ−ト上で、1平方センチメ−トルあたり1個以上の花粉が2日以上連続して観察された初日)」をすぎてもあまり症状はなく、花粉が大量に飛散する3月になってはじめて症状が出る比較的軽症の患者さんもあるわけです。過敏なひとは花粉の初観測日直後より治療を開始すればよいわけですが、症状の発現がおそいひとを初観測日直後から治療すると、2ヶ月近くも予防的な投薬を続けなくてはいけません。

 一般的には、「飛散開始日」(平成15年の愛知県では2月20日前後と予想されています)の約2週間前より治療を開始すれば、花粉症の症状を予防したり軽くしたりできるとされています。しかし、先にのべたように症状のあらわれる時期に個人差が大きいために、当院では例年の症状発現時期やパタ−ンをうかがってから、いつから治療するか、どのような薬剤を選択するかを、患者さんご自身と相談しながら、初期治療(予防的治療)を始めています。初期治療(予防的治療)のために処方するのは、ねむけの副作用が少なく、1日1回の服用でよい、抗アレルギ−剤、抗ヒスタミン剤が中心です。

A症状が強い時の薬物治療

 予防的な治療を行っているいないにかかわらず、大量の花粉が飛散するようになり、目のかゆみ、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状が強く出てきた場合には、初期治療とは異なる速効で強力な薬物治療が必要になります。当院におけるこの治療の3大柱は、1)ステロイド局所点鼻薬、2)抗ヒスタミン作用のある点眼薬、3)抗アレルギ−作用をもつ抗ヒスタミン剤の内服です。

 鼻水、くしゃみ、鼻づまりにはステロイド局所点鼻薬が抜群の威力を発揮します。ステロイドは強力にアレルギーを抑える薬剤ですが、注射や内服では副作用のために長期に使用することができません。しかし、スプレ−により液状の薬剤を鼻に注入する点鼻薬のかたちでは、ほんんど副作用がありません。この治療は点鼻開始直後から症状が改善するわけではなく、効果が出てくるのに3日から5日程度の日数を要します。1〜2回さしただけで効かないと止めてしまわずに、だまされたと思って1週間以上続ければ、そのすばらしい効果が実感できるでしょう。もうひとつのポイントは、薬の効果があらわれて症状が改善しても、点鼻を止めないで花粉症のシ−ズンが終了するまで継続することです。

 目のかゆみには抗ヒスタミン作用のある点眼薬を定期的にさすことをおすすめしています。かゆみのもとになるヒスタミンという物質を抑える作用がある薬剤でないと、点眼による目のかゆみの改善効果は乏しいと思います。点鼻と同じで、ステロイドを点眼することも効果的ですが、点鼻の場合とちがって、連用すると眼圧が高くなるなどの副作用があるために、眼科医の監視のもとで使用することが必要なために、当院では処方しておりません。

 症状が強い時の内服治療は抗アレルギ−作用のある抗ヒスタミン剤(「第2世代抗ヒスタミン剤」と呼ばれています)を使用します。予防的な治療には、ねむけがほとんどなく、1日1回の服用でよい薬剤を中心に処方しますが、大量の花粉が飛散している時期には、それらの薬剤では効果が不十分なことが多いために、多少ねむけやのどのかわきが出ても、速効性があり、作用も強力である、朝夕2回にわけて内服するタイプの薬剤をおすすめしています。

B抗原(花粉)を回避するためのセルフケア

 これまで説明してきたような治療をすべて行ってても、大量に花粉が飛んでいる日に、無防備なかっこうで一日中屋外に立っていれば、ひどい症状がでるでしょう。実は花粉症の治療で一番重要なのは、アレルギ−反応をおこす原因(これを医学の言葉で「抗原」と呼びます)である花粉を、自分の体内に侵入させない努力をすること、すなわち抗原(花粉)の回避なのです。わかりやすく言えば、花粉症のシ−ズンになったら荷物をまとめて、スギ花粉の飛ばないハワイあたりに移住することが、「抗原(花粉)の回避」という究極の治療となるわけです。

 残念ながら、わたしは毎年2月から4月の3ヶ月間を、ハワイの別荘でのんびりと暮らすことができるような身分ではありませんので、狭い日本のなかでいかに飛び散る花粉から身を守るかという作戦を立てなければなりません。以下に抗原(花粉)を回避するために自分でできること(セルフケア)をあげてみますので、できるだけ実行しましょう。くれぐれも、宮崎医院でたくさん花粉症の薬をもらった帰り道を、自動車の窓を全開にして、風(花粉)をあびながら走ってゆくのはやめてくださいね。

【抗原(花粉)を回避するためのセルフケア】
(鼻アレルギ−診療ガイドライン2002年版より一部改変)

1)新聞などの花粉情報に注意する。
2)飛散の多い時の外出は控える。
3)飛散の多い時は、窓・戸を閉めておく。(もちろん、自動車の窓も決して開けない!)
4)飛散の多い時は、外出時にマスク・メガネを着用する。
5)外出時、花粉が付着しやすい毛織物などの外套は避ける。
6)帰宅時、衣服や髪をよく払い入室する。洗顔、うがいをし、鼻をかむ。(目や鼻を洗ってもよい。)
7)掃除を励行して室内の花粉を除去する。
8)布団はなるべく外に干さない。もし、干したらよくはたき、表面に掃除機をかける。
9)洗濯物も室内干し(あるいは乾燥機)にするか、とりこむ時によくはたくようにする。

花粉症のセルフケアのイラスト版はこちらをクリックしてみてください。



花粉症用のメガネとマスクで武装するM氏
(決して怪しいものではございません・・・)



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