月刊ぷち健康講座

2003年7月号 「タバコ値上がり、今こそ禁煙のチャンス!」

 健康に関するトピックスをとりあげて、やさしく解説する「月刊ぷち健康講座」。今月はニコチンパッチなどの登場により進歩した「禁煙支援」の話題です。


 わたしはお酒を飲むのは大好きですが、タバコはまったく吸いません。内科医として患者さんの生活指導をする場面で、「禁酒してください」というときには、お酒を飲めないつらさがよくわかるので、「かわいそうだな」と思うのですが、「禁煙してください」というときには、タバコの吸えないつらさというものを経験したことがないので、「タバコが吸えなくてかわいそう」という共感的な態度をとることはできないのです。つまり、酒飲みには甘く、タバコ吸いにはきびしい医者というわけですね。

 喫煙が健康によくないということは、いまさら説明するまでもない世界共通の常識であり、病院や駅などの公共スペースは続々と禁煙になっています。(わたしが宮崎医院の院長になって最初にした仕事は、待合室の灰皿を撤去して「禁煙」の掲示を貼ったことでした。)この7月からはタバコも値上がりして、たとえばマイルドセブン1箱260円が280円になりました。諸外国と比較すると、日本のタバコの値段はまだ安いほうで、世界で最も高い北欧諸国では1箱600円以上もするようです。いずれにしても、値上げにより、マイルドセブンを1日1箱1年間吸うと、280円×365日=102200円の出費であり、禁煙すれば1年で10万円以上のお金が貯まることにもなります。このように、スモーカーはますます肩身がせまくなっているために、最近では「思い切ってタバコをやめたいけれど、つらい禁煙に耐えられるか心配」というかたが増えているようです。

 喫煙者は医学的にみれば「ニコチン」という薬物の中毒者ですから、ただ「やめなさい」と言っただけで禁煙が成功するわけはありません。患者さんに「お酒かタバコのどちらかひとつだけやめるとすれば、どちらを選びますか」と質問をすると、たいてい「お酒をやめて、タバコを残します」という答えが返ってきます。このことから類推しても、薬物依存の程度はアルコールよりニコチンのほうが強いために、アルコールの禁断症状はがまんできるが、ニコチンの禁断症状はがまんできないということでしょう。

 そこで、登場してきたのが「ニコチン置換療法」です。ニコチン置換療法とは、禁煙後にあらわれるニコチンの禁断症状(イライラする、落ち着かない、頭痛がする、体がだるい、眠いなど)を軽くするために、ニコチンを喫煙以外の方法で体内に補給するものです。現在、日本では貼り薬(ニコチンパッチ)ガムがあり、貼り薬は病院や診療所などの医療機関で処方できますし、ガムは薬局で購入できます。もちろんこれらの薬を使うだけで、タバコが吸いたくなくなるような魔法の療法ではありませんが、これまでの意志の力だけに頼った禁煙と比べれば、ずっと楽に禁煙できるようです。宮崎医院でもニコチンパッチと医師の指導を組み合わせた、新しい禁煙プログラムを受けることができますのでお気軽にご相談ください。

 

<これがニコチン置換療法用ニコチンパッチ「ニコチネルTTS」です>



<ニコチネルを腕などの皮膚に1日1枚貼ることで、禁断症状を軽くすることができます>

 <禁煙は時期が来れば成るものであって、禁煙させようと思わないでください>、<時期がきて花開くように「禁煙が成ってくる」のをお手伝いするのが、私たちの役割です>、これは日本を代表する禁煙支援医であり、インターネットでの「禁煙マラソン」主宰者である高橋裕子先生のことばですが、まさに至言である思います。わたしも高橋先生にならって、「絶対に禁煙を成功させてやるぞ」といった無理強いや意気込みはすてて、喫煙者のみなさまが無理のないかたちで、禁煙を上手にスタートして続けるための「お手伝い」をさせていただきたいと願っています。




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