八王稲荷

 一橋宮ノ内町の丸野尾家の家屋が大正4年に全焼し、その後も同町内で火災が相継いで発生したので、町内の住民たちは同区の新熊野神社の神官に祈祷を依頼したところ、町内の土地に憑いている悪い狸が「自分を丁重に祀ってほしい。祀ってくれなければ、祟りをなしてさらに火災を発生させるぞ」といっていると、神官が託宣したという。

 この託宣を聞いて火災発生の原因を狸の祟りと信じた人々は、町内に土地の一角を購入して社殿を建立し、その狸を八王大神として祭祀することにしたと伝えられる。

(大森恵子著 稲荷信仰と宗教民俗 より)

戻る