文化財級 交響曲
作曲家 グスタフ・マーラー
曲名 交響曲第2番ハ短調「復活」
指揮 ギルバート・カプラン
演奏 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
Sp.Latonia Moore
MSp.Nadja Michael
録音 2002.12  ムジーク・フェラインザール
プロデューサー クリスチャン・ガンシュ Christian Gansch
エンジニア ライナー・メイラート Rainer Maillard
評価項目 評価内容
ホールトーン
ステージレイアウト
リアリティ
クオリティ 10
ダイナミックス
平均点
商品番号:474380−2 グラモフォン ステレオ  
解説
この時代にはむしろ珍しくなった、スタジオセッションでの録音である。各楽器のリアリティとステージレイアウトをバランス良くまとめた高品位な音像表現である。
マルチマイクによって各楽器の定位は適正に配置され、客席の気配に左右されない充分な空気感も確保されている。そのため、オーケストラは見通しの良い透明感のある響きの中で余裕を持って描かれている。当然ダイナミックレンジも申し分ない。
1楽章冒頭の低弦による急き立てるような烈しい動機も、重量感と瞬発力のある生々しさで聴き手を一気にマーラーの世界に引き込んでいく。木管や金管の音の分離も良く、弦が硬質になって耳障りになることもない。ただ、リアリティがいま一歩食い足りないのはマルチマイクによる音像の重ね合わせが原因で、機械的に作られたステージレイアウトだからやむを得ないだろう。
ムジーク・フェラインザールでの録音は成功例が少ないが、これは他の追随を許さないほどのクオリティを得ている。またグラモフォンの中においても突出して上手く仕上がった内容だと評価できる。唯一、合唱も加わるフルオーケストラのTuttiにもう一段力量と伸びやかさがあればと悔やまれる。
演奏は、アマチュア指揮者の棒とは思えない熱気と共感に溢れた完成度を示している。カプランは、マーラーのこの「復活」をこよなく愛する世界屈指の「復活」マニアで、自身の財力を投じてこの曲を研究している。その研究の延長線上に自ら指揮をするという行為があり、この録音は、彼にとっての2度目の録音となる。しかし、今回はウィーンPo側が彼に演奏を申し出たそうで、彼の研究した楽譜を基に、それを忠実に再現することをオーケストラが希望したのである。
その為か、カプランの指揮がどれほどのものかは別として、演奏は妥協のない、そしてスタジオセッションが成し得た完璧な仕上がりを聴かせてくれる。ウィーンPoのこよなく美しい柔らかなサウンド、そして献身的な演奏姿勢によって、この曲が描いたマーラーの人生の陽と陰、そして壮大な宇宙的空間を見事に表現している。
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