桜咲き 病室の中 華やげり

桜咲き かばんを背ナに 夢のせて

祖母よりと 祝ひ袋の 桜かな

春嵐 過ぎたる庭には 置土産

岩風呂に 桜浮みて 香立つ

初咲きの 梅に優しき 小雨降る

幼な等と 梅ヶ香広ぐ 散歩道

老婆の背 押し行く孫に 春の風

菜の花や 黄色のクレヨン 小さき手に

山里の 石南花淡し 雨の中
絵手紙の 椿一輪 届く朝

同年の 訃報の届く 春寒し

登校の 子等の足止む 薄氷

雪の中 子等の足跡 続く道

見渡せば 波間に揺るる 冬カモメ

春めきて 老若男女 集う園

春近し 学生達の 弾む声

紅椿 客を知らせる 犬の声

桜餅 母の好物 手土産に

春めくや チラシあれこれ 小半日
参道を 染めし三河路 桜色

山里に ふわりと浮かむ 春の雲

足弱の 母の花見は 車窓より

仏壇に うす紅色の 牡丹供華

手を取りて 藤の園行く 老夫婦

華吹雪 赤きリードに 犬跳ねる

風光り 祝う米寿の 母笑顔

山里の はるかに目立つ 紅き梅

香を放つ 梅の苑行く 二人連れ

春うらら チラシ覗きて 旅気分

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