伊吹山 迎へてくれる 初夏の風

香り来る 山路の小道 栗の花

栗の花 香の深まりし 山家行く

山路行く 左右に続く 夏蕨

千枚田 はるかに眺む 田螺鳴く

音立てて 竹林揺らし 風騒ぐ

新緑の まばゆきばかり 朝の庭

ひ孫等と 老婆笑顔で 柏餅

こいのぼり 子等の夢のせ 空泳ぐ

蚕豆や 酒の肴に 青き味

麦の秋 絵画のごとき 見渡せり

ゆらゆらと 浮きて沈みし 花藻かな

蝉の声 朝の始まり 大合唱

蓮の露 子等は笑顔で 手の中に

苺ジャム ぷつぷつ煮へて 母の味

帰りきて 冷たき麦茶 笑顔の子

雷鳴に 犬飛び起きる 尾を下げて

仏壇に 甘き香りの 瓜一つ

初盆の 経は静かに 響くごと

指先の 紫蘇の香りや 母偲ぶ

遠雷に 号令一家 山下る

畑の隅 赤く天指す 唐辛子

息潜め 蝉追う子等の 汗光る

夏菊の ほのとある香を 供へけり

茶屋の奥 冷やしみつ豆 母偲ぶ

亡き母の 後受け継ぎて 門火焚く

かぶとむし 孫の土産に 雄一匹

菖蒲湯の 中に響くや 笑い声

扇子手に 子等としりとり 川の字に

歓声や 見上げる空に 虹立ちし


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