「ブルーベリー・ソースの季節」ポリー・ホーヴァート/著 目黒 条/訳 
横川ジョアナ/絵 早川書房/発行

このタイトルがいいじゃないですか、センスいいなあと思うのは私だけでしょうか、内容もブルーベリーのようにどこかすっぱいのだ。熟れた甘さはあまりない。
 ラチェットは、13歳の夏休みを遠い親戚である双子の高齢の姉妹のティリーとペンペン(ペネロペ)の所で過ごす事になりました。その住いはブルーベリーと野生の熊に囲まれている海も山も近い場所、メイン州にあるグレン・ローザ荘でした。(ラチェットはフロリダに住んでいた)
 グレン・ローザ荘は世間と断絶した生活しか選択できないようだ、何故なら電話は受信のみでかけることは出来ないし、出歩くと熊に遭遇し食べられてしまう。実際に姉妹の昔の使用人が襲われて町までたどり着けなかった、だからラチェットはまず車の運転の練習をしなければならなかったのだ。

 13歳で車の運転も無謀なのだが、切実なので仕方ない。高齢の姉妹に何かあった場合、この家から脱出する手段を確保しなければならないのだから。
 ストーリーも深刻な時もあるのに受け流してばかりいる感じがする。例えば、マートルという近所に住む老婆も人の家庭にずけずけと無遠慮に入り込む無神経さも、姉妹がまだ少女だった頃に自らの首を切って自殺した母親の事も、その他あまりにも無神経な登場人物もなんとなく受け流してしまうのだ。いいのか?もっと反発しなさいよあなたたち!などと読んでいてむかむかしてしまう。訳者の目黒さんのような暖かい目で私はこの物語を読まなかった事は隠さないでおこう。

2005年10月18日

全米図書賞受賞作品

※表紙掲載許可は早川書房さんより得ています。