「イルカの家」
ローズマリー・サトクリフ/著 乾 侑美子/訳
評論社/発行

サトクリフの本で女の子が主人公の本は初めて読んだ。それに戦いや血なまぐさい争いは全くなく、平凡に近い日常を送る平和な物語でとてもよかった。
 平凡な日常といっても時代背景はやはりサトクリフがよく描く世界の16世紀のロンドン、この物語ではロンドンはとても美しく、華やかな世界となっています。
 主人公のタムシン・コーンターは、両親を亡くしおばあさんの家でマーティンおじさんとともに暮らしていました。しかしおばあさんが亡くなり、男手でタムシンを育て上げる事がおじさんには出来なかった為、ロンドンのギディアンおじさん一家の元で生活する事になりました。タムシンはマーティおじさんが大好きだったのでロンドンへは行きたくありませんでしたが。
 ロンドンのギディアンおじさんの家はイルカの形に彫られた飾りがあります。
そしておじさんは刀鍛冶と鎧作りの親方です。そのため沢山の人が出入りする賑やかな家庭でした。長男のキットを海で亡くしている不幸があるものの、それ以外の家族は毎日を忙しく過ごしているようです。14歳の次男のピアズはお父さんに弟子入りしていました。その下のほとんど双子と呼ばれるベアトクリス、ジャイルズ、一番下の3才のちびちゃんことベンジャミンとそして台所女中や他の徒弟達も入り混じりとても賑やかなのに、タムシンは何故かいつも一人ぼっちな気がするのです。時々そっと泣いてしまう事もあるタムシンの願はいつか海に出る事でした。

2006年1月4日

※表紙掲載許可は 評論社編集部吉村様より得ています。評論社/発行