「長すぎる夏休み」
ポリー・ホーヴァート/著 目黒 条/訳 早川書房/発行

 ポリー・ホーヴァートらしいというか、彼女の作品に危機感があまりないのは何でだろう。毎回主人公の立場は危うく、状態は決してよくない。大人の都合に振り回される子どもたち、しかしそれに飲み込まれる事はない。芯が強いわけでもなくましてや正義感があふれているわけでもない、よく考えと普通の子どもであって、物語の主人公などにならないタイプだ。現代の子どもってこんな感じにさばさばしていて、ある意味冷めている。

 ヘンリーの母親がある日宣教師となってアフリカに行ってしまう、お父さんはお母さんを止め切れなくて一緒にアフリカに行ってしまうのだ。残されたヘンリー面倒はお母さんの独身の姉妹に頼んでしまう。ヘンリーの家に子守りとして来た叔母さんは子どもがあまり好きじゃないみたい。でもある日おばさんの一人のマグノリアが大病する。辛い病から抜け出すと、人生でやってないことを全部やってみたくなる。人が死のふちを見るとやけっぱちになるのかもしれない。マグおばさんともう一人のおばさんのピッグと3人でアメリカ横断する。行き先は特に決めない、行き当たりばったりの適当な旅がスタートするのである。

2006年10月26日
※表紙掲載許可は早川書房さんより得ています。

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