オオカミ族の少年
ミシャル・ペイヴァー/著 さくま ゆみこ/訳 酒井駒子/表紙画
評論社/発行


ずいぶん前にこの本を薦められたし、また私自身も珍しく書店で手にとって見たものだが、読むにはいたらなった。なぜならこの物語の舞台が今から6000年前だったからである。石器時代?そんな昔の物語は私の頭の中での想像が追いつきそうもないと決め付けていたので、更新がすっかり遅くなってしまいました。そういう先入観は損だよなぁ。
 トラク少年は、森の奥で父親とたった二人で暮らしていました。しかし物語りは平和な暮らしぶりではなく、父親の負傷からスタートする。悪霊にのっとられたクマに襲われ、トラクは出血の止まらない父さんを必死に看病していました。死の床につく父親の言葉はトラクには受け止めるにはあまりにも重荷でありました。
「クマを倒すために北へ向かえ、天地万物の精霊が宿る山に行くように、」父親は必死にトラクを遠ざけ、クマに挑んで亡くなりました。残されたトラクは、彼に備わった運命に導かれるように一人北へ向かい始めます。途中オオカミの子ウルフとの出会いも、そして彼を助けることになるワタリガラス族のレンとの出会いも、きっと定められた運命なのだろうが、見えない運命の糸がもどかしくて、そしてあまりにも深く寒々しい。そうだ、物語り全体は寒い!(ように感じる)
このように生まれながらに運命を背負わされている主人公の物語はよくあるのだが、今思いつくのは「ハリー・ポッター」ぐらいだけど、比べると、「オオカミ族の少年」の方が物語の結末はよく書けていて、しかも山場の読み応えは抜群でありました。このあとに続くシリーズが楽しみであります!

2008年12月4日
 
※表紙掲載許可は評論社さまから得ています。