「ペインテッド・ハウス」 ジョン・グリシャム/著 白石 朗/訳
小学館/発行

ジョン・グリシャムの他の作品は「依頼人」とか「ペリカン文書」などスリルとサスペンスの作品が多い中、この作品には推理はない。でもある意味スリルもあるしサスペンス要素もなくもない。
表紙には、小麦畑のような綿畑が何所までも続いています。
 時は1952年の秋のアメリカ、アーカンソー州の綿農家に生まれて育ったルーク少年7歳です。彼の好奇心の強さがこの物語にスリルとサスペンスをもたらす事となるのです。
よく
「大人の話を聞くんじゃない」などと言いますが、子どもを大人の会話に混ぜないように遠のけたりする時、子どもには納得できないけど、やっぱり「約束」とか「絶対に余所で話さないように」など口止めしても無意味なのだ、だからやっぱり子どもに大人の会話は聞かせないようにした方がいい!そして、悲しい事だが、農家がどんどん減っていくのも納得せざる得ない。綿を作ってもパンを食べる事は出来ない。綿を売って現金を得てから小麦をやっと手に入れる、つまり自給自足ではないってことだ。
 ルークの一家は秋になると、メキシコや山岳地から来る山地民など、綿を摘む為に出稼ぎに来た人々と一緒に毎日、毎日、綿を摘み続けます。7歳の少年にはそうとうきつい仕事だろうと想像できます。
 それに比べて彼の都会に住む従兄弟達は、一度も綿摘みをした事がない、農家に生まれ育ったルークは7歳で大人に混じって朝から働いている頃、従兄弟達は学校へ行っているのだろう、ルークが不服に思うのも無理はないと思うのだ。
 今年は2005年、ルークは60歳になっています。きっと都会で暮らしているような気がします。祖父母と暮らしたアーカンソーでは暮らず、都会で家庭をもっているような気がするのです。それを悲しいと受けとめるのか、当然と受けとめるのかはあなたの自由なのですが・・・・

2005年6月3日

※表紙掲載許可は小学館さんより得ています。