「サリーおばさんとの一週間」
ポリー・ホーヴァス/著 北条文緒/訳
偕成社/発行

 ポリー・ホーヴァスの本はいつも毒気が潜んでいてとても面白い。一見大人を見る冷めた目の子どもがいる気配がするけど、実際の子どもはじっと大人を観察している。ゲームをしながら、本を読みながら、あるいは楽しく遊びながらもじっと見ている。それは大人になっても忘れてない。トラウマになるような事でも忘れずに体に染み付いてしまう。

 メリッサ10歳・アマンダ8歳・フランク(ピー・ウィー)6歳の3人姉弟の両親が揃ってパリへ行くため父親の姉にあたるサリー伯母さんと一週間を過ごすことになりました。当初父親のアンダソン氏はサリーおばさんに留守をお願いするのは嫌がりました。しかしせっかく取った航空チケットを無駄にしたくないというアンダソン夫人に折れたのです。
 カナダからアメリカへきてくれたサリー伯母さんには母親のアンダソン夫人から渡された一週間の予定表があるものの、バイオリンのレッスンや予定表にある献立のインゲンも無理に食べなくてもよい、なんで食べなくてもいいの?いいのです!2週間滞在するつもりで6年間いた健康マニアのルイ叔父さんを思い出すから。このルイ叔父さん、アンダソン氏から子ども達は一切聞いてない。アンダソン氏に秘めた思い出があったことも子ども達は知りませんでした。サリーおばさんから聞く父親が子どもだった頃の話、父親の家族の話は父親を見る目を変えてしまう奥深いお話だったのです。
 このサリーおばさんの子守りの様子は「サウンド・オブ・ミュージック」のジュリー・アンドリュースのような美しさが全くなくてほんとによかった。インゲンを食べさせる作戦でおばさんが故意に編み編み食べ食べを繰り返したのだったらここで一気に話が冷めるところだった。

2008年2月5日

※表紙画像の許諾を偕成社さんより頂いています。