「夜明けの風」
ローズマリー・サトクリフ/著 灰島かり/訳 ほるぷ出版/発行
「ヴァイキングの誓い」でサトクリフの全てを紹介した事にするとか言っていたか私?でもこの作品もいいので追加してしまう。
それにしても彼女の主人公はどうしていつもカッコイイのだろう、センスのよさと造詣の深さとでも言いますか、とにかくよかった。文章で上手に表せないのだ、だからいつも「よかった」を繰り返してしまう。はー・・・ため息つくほど良い作品であった。
「夜明けの風」は訳者の灰島さんがあとがきで書いているがカーネギー賞を受賞した「ともしびをかかげて」の続編となっており、「イルカの指輪」の持ち主だったアクイラの子孫となっているようだ。この作品の中でもそのイルカの紋章を彫った指輪がキーワードの一つとして書かれている。
主人公オウェインは、ブリトン人とサクソン人との最後の戦いとされるアクエ・スリスの戦いでただ一人生き残った14歳の戦士、戦場で負傷を受け、気を失っていたオウェインはなんとかその場を離れ、やがて辿り着いた農場で手厚く看病を受けながらも徐々に回復の兆しをみる。
しかしここの農場でのんびり暮らし続けるというストーリー展開にならないのがサトクリフだ、このままでもいいじゃん・・・!と読みながら思ってしまうが、
オウェインはどのように育てられたのだろう、ここまでも気強くそしてブリトン人である事の誇りとそしてかたくなな忠誠心、彼の揺るぎ無い大きな心、そして彼の周りに常にまとわりつく悲しい運命、この悲しくも辛い運命を彼はいつでも投げ出す事もできるのだ、投げ出す事で誰かに非難される事はない、非難されるとしたら自分自身の心だろう、
彼の、いや彼らのイルカの指輪がこれからもずっと子孫によって受け継がれて行く事を願うのみだ。
※表紙掲載許可は、ほるぷ出版さんより得ています。
2004年11月12日
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