サーファーズイヤーの入院レポート

はじめに
サーファーズイヤーについて　医学書より
サーファーズイヤー入院レポート　《実際の体験レポート》
サーファーズイヤーQ＆A
はじめに
 僕がサーフィンをはじめたのは約25年前の19才の時、1978年です。その時から夏冬問わず平均年間70日から80日は海に入っていると思います。しかし回数的にはそれほど多いとは思っていませんから自分がサーファーズイヤーになるとはまったく思ってませんでした。何時の頃からか水抜けが悪くなりだし、少し難聴かなと思うくらいでした。耳の異常に気づいたのは4～5年くらい前の夏、水の汚い港ポイントでサーフィンしてその夜に耳が痛く翌日、病院に行くと雑菌が入り炎症を起こしているとの事でした。その時は洗浄してもらい直りましたが、その後も耳の水抜けが出来ず病院に通うことが度々ありました。

もちろん耳栓は着けるように心がけてますが、何せサーフィンの感覚が狂うので着けたり着けなかったりが良くなかったと思います。あとサーフィンだけでなく疲れによる耳の炎症の痛みがあることもあります。水の抜けない時は難聴はもちろん微熱があり頭が重く風邪のような症状がありました。水抜きも吸引の管が耳に入るうちは良かったんですが、今年からは右耳の軟骨が張り出しが進み、鼓膜をほとんど塞ぎ出しいよいよ管が入らなくなりました。その時は何とか炎症による腫れが収まり、管が入り水が吸引できましたが、それからは完全に耳栓が無いと海に入れなくなりました。

長年、サーフィンをしていると耳が冷たい水の浸入を防ぐ為、自己防衛で鼓膜の前の軟骨が張り出してきます。一種の職業病ですが、言い方をかえれば正常に機能していたという事です。医者は騒音は関係ないとの事ですが、風の強い時の耳に当たる冷たい波の音は関係 あるような気がします。以下、サーファーズイヤーについての医学書の文例、そして自分のサーファーズイヤーの手術入院体験レポートを掲載します。そして僕と同じサーファーズイヤーで悩む人の参考になればと思っています。

2002.7.20.海の日　　竹本　豊

 ↑TOP
  《サーファーズイヤー》について　医学書より 

以前より水泳を頻回に行なう人々の外耳道にしばしば゛exostosis"(外骨腫）と呼ばれる骨性の隆起が見られることが報告されてきた。1977年にSeftelはサーフィンを行なう人々にこの外耳道のexostosisが増加してきたことを指摘し、またそれらは高度なものが多い事を見出じ、"
゛Hyperositosis"と呼ぶとともに゛Surfer's Ear"と名づけた。

1.発生頻度
本症の発生頻度は男性に多く、また人種差もあり白人に多く東洋人に少ないといわれている。日本の報告では少ないがUmedaによると、プロサーファー51人のうち80％がサーファーズイヤーで40%が高度の狭窄(きょうさく）であるに対してアマチュアでは４３人中約半分がこの疾患を有しており高度の狭窄は少なかった。また、サーフィン歴が5年以上になると、本疾患になりやすいと報告している。

2.発生機序
発生機序は、外耳道皮膚を長時間繰り返し冷やすと皮下の骨膜が炎症を起こし、その刺激によって骨増殖が起こるとされている。これは実験的にも証明されている骨増殖の進展様式は、まずtympanosquamous sutureから有茎性に発生する事が多く、次に前下部・後上部が腫張し次第に全周性に発展していく。

3.症状
無症状の事が多いが、狭窄の程度が進むと伝音難聴や炎症症状が現れることもある。伝音難聴の原因は、外耳道の骨性閉塞や耳垢の吸水による膨張の為の外耳道の閉塞である。炎症症状は狭窄部の内部に耳垢や海水がたまりやすくなることが原因であり掻痒感や疼痛を訴える。
↑TOP

状況図→
（クリックすれば拡大します）
  4.治療
①軽度あるいは中程度のもので特に症状が無い場合は手術しない。進展を防ぐ為に、できればWater　Sportsから離れる事が望ましいが、困難な事が多い。寒冷刺激に対して耳栓の装用が不可欠である。

②高度の狭窄(５０%以上）になると、耳垢除去困難、耳閉感、伝音難聴、外耳道真珠腫などの症状が出現する事が多いので、手術適応となる。

③耳後部切開により骨部外耳道の入り、皮膚をできるだけ温存しながら、狭部分から皮膚剥離を進める。一般に骨隆起表面の皮膚は薄いので、完全に剥離できずに敗れる事が多い。しかし皮膚欠損部が大きくなれば、突出部削除後とくに皮膚移植しなくてもベスキチンをあてておくだけで上皮化する。

④外耳道全体を拡張する必要があるときは、骨部外耳道を水平に輪切りに切開し、皮膚を筒状に内方へ剥離する。とくに前壁の骨削開を十分に行なう事が肝要である。鼓膜輪近くの骨隆起を削開する時は、シリコンシートやアルミホイルで剥離した外耳道皮膚を保護してバーで削開するか、エイヒかノミを用いる。

⑤外耳道が拡大されたら、剥離してあった皮膚で骨面を覆いフィブリン糊で接着する。皮膚がわずかしか残っていない場合は、耳介後部の乳突部皮膚を遊離皮弁として移植する。外耳道パッキンは２～３週間してから除去する。
↑TOP
サーファーズイヤー入院レポート　《実際の体験レポート》
病　名 両外耳道骨腫
主治医 松崎圭海先生
手　術 呉助教授

2002
6/13
（火）

21日から愛知医科大学で入院します。
明日は検査のため今日の夜９時以降は絶食となります。
6/14
（水）
一回目の手術前検査です。血液検査にCTスキャナー等。
検査８時はから、診察は10時半からでした。
6/18
（木）
先回の検査の結果血液に肝脂肪が多いとの事。肉の食いすぎか？
ＨＩＶウイルスの感染なし、ホッとしました。
内科の検査もあり肺活量は普通の人の3割増との事。
6/21
（金）
今日から入院です。朝９時から聴力検査、耳内部の撮影があり、
病棟に移ってから再度事前検査です。
主治医と看護婦の挨拶や説明がありました。
6/22
（土）
 朝と夜の診察があっただけでよく寝た。体調は万全。
6/23
（日）
 入院疲れもなく快適。手術の明日に備える。
6/24
（月）
6時起床本日手術です。8時半、主治医の診察。耳の毛を剃る。
12時半、全身麻酔の注射を打つ、寝巻きに着替え移動用別途に寝る
（パンツははかない）。
手術室に向かううちに意識が消えていく・・・。

5時半意識が戻るが、ハッキリ分からない。
8時、出血してるので耳のガーゼの交換、尿道管も抜いてもらい恥ずかしい
思いをする。10時、やっと本日の食事です。耳は痛いし辛いです。
6/25
（火）
朝起きるまでだいたい１時間半おきに目が覚める。背筋、腰がやたら痛い。
耳はジンジンするがこらえれる痛み。2度目のガーゼ交換はやたら痛かった。
見舞いに来てもらっても耳にガーゼが詰められているので何も聞こえない。
6/26
（水）
今日は稲福教授に術後を診てもらう、ガーゼをとったら耳が聞こえるようになり、
ありがたいことです。左耳は出血が止まらずすぐ聞こえなくなる。
6/27
（木）
朝起きると両耳出血で詰まっている、音が聞こえにくい。日中頭が痛い。
点滴は今日までで明日から薬になるとの事。
来週月曜日が抜糸らしいが退院はいつだろう？早く退院したい。
6/28
（金）
朝やはり両耳が詰まっている。呉助教授に診てもらう。
退院は最短で火曜だそうだ。出血はなくなったが耳ダレですぐ詰まるので
吸引してもらうとよく聞こえる。
6/29
（土）
朝耳ダレを吸引してもらう、テレビもあまり聞こえないし退屈な毎日。
夕方吸引してもらった後は耳ダレが少し収まったかな。
6/30
（日）
朝起きても耳の詰まりが少ない、今までに閉ざされた感じがないので楽だ。
外出の許可が出たので見舞いに来た家族とアトムボーイとアピタに買い物に行く。
疲れてないつもりだったがやたら疲れた。目まいがした。
7/1
（月）
今日で入院10泊11日。呉助教授に明日退院と聞いてホッとする。
抜糸（両耳3針縫ってあった）後また出血があったので予定の聴力検査
ができなかった。
7/2
（火）
9時に聴力検査を行い10時に退院。今日は家で酒が飲めるぞ。嬉しい。
明日から1週間おきに通院してくださいとの事。完治まであと1ヶ月です。
2004
4/10
手術後２年経ちましたが結果良好です。
耳栓もせずに海に入れるし楽になりました。
ただロングボードでのローリングスルーはやはり水が入る（すぐ抜けますが）
ので少し抵抗があります。

サーファーズイヤーで悩んでいるより手術治療をお勧めします。
費用は社会保険が当時２割負担だったので手術、入院ベット代、食事代も含めて実費140,000円でした。生命保険の入院給付金も入るので（実際20万バックのあった人いました）負担は少ないです。
↑TOP
サーファーズイヤーQ＆A

愛知医科大学付属の入院中大変お世話になった松崎先生に退院後いろいろ質問してみました。
Q
僕がこの愛知医科大付属を選んだ理由はこの分野で有名な稲福教授がみえる事と、普通の病院は耳の後ろから切開するので片耳３週間の入院が必要なことに対して、ここでは耳の穴から骨を直接削るので両耳一緒に出来るし入院も10日ほどで済むと聞いたからですが、その事についてお話しできますか？
A
耳の内側から張り出した骨を取り除くのは技術的に難しいのはあります。外耳道というトンネルに張り出した骨を削るのは難しいです。張り出しが強い場合は耳の中からの手術が難しいときもありますので、われわれの施設では出来るだけ耳の中からやっていますが場合により出来ないケースはあります。
Q 手術の手順を簡単にお話しできますか？
A
外耳道の中の張り出した骨の近くに局所麻酔をします。そして皮膚を切開します。ノミのようなもので骨を削りますが、場合によっては専用ドリルで削ります。皮膚を縫い合わせます。手術したところにガーゼを入れて終了とします。
Q サーファーズイヤーは愛知医科大学付属でどのくらいの人を治療しましたか？
A ばらつきはありますがだいたい１年に5～10例くらいと思います。
 
Q 関東方面からも治療に来るそうですが？
A 手術退院後はそれぞれの地元の病院で術後の経過を診てもらいます。

松崎先生いろいろとありがとうございました。
↑TOP REPORT TOP