< 二十八サンチ榴弾砲>


今から100年あまり前に起きた日露戦争(1904-5年)。
大激戦となった旅順攻防戦で雌雄を決したのが28サンチ榴弾砲だったという。


28サンチ榴弾砲の実物大レプリカ

「サンチ」とはcmのフランス読みで、帝国陸軍の大砲口径の呼称だったそうだ。
つまり、発射される砲弾の直径が28cmということ。
その28サンチ榴弾砲のレプリカが松山市内(愛媛)に展示されている。
NHKの大河ドラマ「坂の上の雲」(司馬遼太郎原作)の撮影用に製作されたものだ。
ずんぐりした砲身は長射程をねらったものではなさそうだが、
ロシア軍を震撼させたその凄まじい破壊力は、当時の国産最新兵器だった。
レプリカとはいえ結構精緻な造りで、そばに立つと圧倒的な迫力がある。

下は日露戦争時の彩色写真。


バートン・ホームズ写真集「日露戦争」(読売新聞社)より

しかし、100年前の兵士の体格の違いか、当時の大砲は一段と大きく感じられる。

(2010.11.23)

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余談だが、(と切り出すには重過ぎる事件だが)
上記Topicを掲載した11月23日に、なぜか突然、北朝鮮が韓国の大延坪島を砲撃した。
十数キロ海を隔てた北朝鮮の海岸砲からの砲撃だという。
看過できない暴挙だが、ここではさて措く。

海岸砲といえば、上の28サンチ榴弾砲も本来海岸砲で、海防を目的に沿岸要塞に据えられていたものだ。
通常は頑丈なコンクリート土台に定位置固定されているものであって、
移動して(ましてや外地などで)使用するように作られたものではなかった。
一門26トン、砲弾一発217キロもあるという。
しかし、大本営はこれを18門も旅順に送り届け、結果的に旅順陥落を成功に至らしめた。
分解して運ぶにせよ、船や鉄道以外ろくな重機などなかった時代に、人馬だけでよくぞこれを移動できたものだと思う。

この28サンチ榴弾砲のずんぐりした砲身を見ていると、なんとなく連想させられるものがある。
それは幕末に、水戸藩主・徳川斉昭が量産した「太極砲」だ。
これも、黒船来航の前後から高まっていた攘夷意識から、海防を主目的として開発した海岸砲だという。
口径は36cmというので、口径サイズだけなら太極砲の方が勝っていることになる。

(2010.11.26)