井出ノ小路山 (いでのこうじやま) 1,840m

・日 時  平成19年11月25日(日)
 林道入口 7:40 〜 8:10 高樽林道分岐 〜 9:35 からさわ橋 9:50 〜 12:10 稜線コル 〜
 12:55 井出ノ小路山 〜 13:15 稜線コル 〜 13:30 アイゼン装着 13:45 〜 15:10 からさわ橋 〜
 15:50 林道入口
≪登り 5時間15分、下り 2時間45分、全行動時間 8時間10分≫
・山行記録
 11月下旬になって本格的な寒気が到来し、山に雪を降らせたようだ。 わたぼうの住む街からは白く染まった鈴鹿連山が輝いて見える。 ところが、今週末は寒気が収まり久し振りに暖かい晴天なりそうなので、 わたぼうは秋山のラストチャンスとばかりに雪の影響の少ない阿寺山地(裏木曽)に赴くことにする。
 阿寺山地は御前山から奥三界山に続く一大山地であるが、 小秀山と白草山に足跡を残すのみでわたぼうにとっては未開の地である。 今回は阿寺山地で2番目に高い井出ノ小路山と、同じ登山口から登る高樽山の2山をターゲットとする。 いずれも登山道がない手強い薮山だ。林道歩きが長いため、わたぼうは対策として自転車を持参することにする。

夕森山北林道入口
ここから自転車で約2時間
 日曜日の早朝に碧南を出発し、登山口のある付知峡へ向かう。 空は快晴であるが、放射冷却の冷え込みにより、付知の温度は氷点下2度になっている。 渡合温泉へ続く林道には旧付知町と旧加子母村との境界付近にゲートがある。 ゲートは情報どおり土日祝日には開放されているが、12月1日からは冬期閉鎖になるようで、 今シーズンの開放は今日が最後のようだ。 林道は途中から未舗装路になり、西股谷を左岸に渡ると間もなく登山口の林道分岐に着く。 登山口近くには広い駐車スペースがある。
 今日はより手強そうな井出ノ小路山から攻略するつもりであるが、 寒さのためわたぼうのモチベーションは上がらず、「熊出没」の注意看板にますます気分が萎えてくる。 林道入口にはチェーンゲートがあり、わたぼうは自転車と伴にチェーンを潜るが、 林道の傾斜がきついために出だしから情けない押し歩きである。
砂防ダムがあるカラ谷入口
右岸の道から入渓する
 最初のヘアピンカーブから林道の傾斜が緩み、自転車に乗って行けるようになる。 次のヘアピンを曲がると、恵那山にあったのと同じ様な頑丈なゲートが現れる。 わたぼうはゲートの歩行者用入口から自転車を押し込み、暫くは快適な自転車行を楽しむ。 遠く稜線の山(天狗岩か?)には雪が見え、否が応でもわたぼうの緊張感は高まってくる。 高樽林道分岐の先に再びゲートがあり、ゲート脇から自転車を持ち上げてすり抜ける。
 快適な自転車行は林道が左岸に渡るまでで、その先は押したり乗ったりの繰り返しになる。 東屋「出ノ小路湯」や合体木の横を通り過ぎ、ヘアピンカーブを重ねて標高を上げると日陰には雪が現れるようになる。 林道が再び右岸に移ると、傾斜はますますきつくなり殆んど押し歩きになる。
雪景色のカラ谷を登る
上部までこんな感じ
 登山口から自転車の乗車率33%程度、2時間弱要してからさわ橋に到着する。 からさわ橋から先の路面は雪で真っ白になっていて、わたぼうは嫌な予感を覚える。 からさわ橋のすぐ次の沢が井出ノ小路山への登路であるカラ谷で、沢の入口には新しい砂防堰堤が出来ている。 わたぼうの嫌な予感が的中で、カラ谷も一面真っ白の積雪に覆われている。 想定外の状況にわたぼうは戸惑い、これじゃ敗退かも…と弱気になる。
 わたぼうは林道脇に自転車を置き、砂防堰堤を右岸から巻いて入渓する。 陽射しのないカラ谷は数日前に降った雪が融けずに残り、岩が非常に滑り易くなっている。 こんな場所で転倒事故を起こしても誰も来る見込みはないだろう。 わたぼうは念のため持ってきたアイゼンを付け、防寒と防水対策にカッパを羽織り、 オーバーミトンもはめて完全に冬山仕様になる。 アイゼンを付けるとスリップの心配は少ないが、非常に歩き難く大幅なペースダウンとなる。
カラ谷上部の登り
氷結、笹漕ぎ、倒木で難航する
 カラ谷は大小の岩が積み重なった文字どおりのカラ沢で、御在所岳本谷や錫杖岳錫杖沢を彷彿とさせるが、 難しい岩場はなく坦々と高度を稼ぐことが出来る。 雪の上には様々な動物の足跡が残っているが、わたぼうは沢を登る異様に大きな足跡にハッ!とする。 どひゃ〜、く…熊の足跡だ!!。 わたぼうは慌てて鈴をザックのステッキに付け、ラジオのボリュームを最大にして前方に目を凝らしながら登っていく。
 沢は途中(1450m位か?)で二股に分かれ、最初は左の沢に入る。 要所要所にピンクの鮮やかなリボンがあり、わたぼうを正しい登路に導いてくれる。 熊の足跡は右の沢に向かったようで、わたぼうはひと安心である。 稜線が近付いてくると再び沢の分岐があり(1600m位か?)、今度は右の沢を登る。
一面の笹原になった稜線鞍部
僅かに中央アルプスが見える
 沢は急激に狭くなって溝状となり、足場はガチガチに氷が張り、両側からは笹が覆い被さってくる。 最後の分岐(1680m位か?)を左に採って登っていくと、沢から溝道の薮漕ぎになる。 わたぼうは最後の詰めになっても、ガレの源頭に迷い込んで引き返したり、薮に目印紐を取られて引き返したり、 右往左往を繰り返す。最後は踏み跡不明の背丈を超える薮を漕いで何とか稜線鞍部に到着する。
 わたぼうがひと息入れるためにザックを降ろすと、 ザック横に括り付けたステッキの握りの部分が鈴と一緒に薮に盗られていて唖然とする。 新しいステッキだっただけに大ショックだ…。 稜線鞍部からは中央アルプスの白い連稜が見えるが、腰丈の笹が密生して落ち着く場所ではない。 ここまで大幅に予定時間を過ぎていることもあり、わたぼうは急いで菓子パンを空きっ腹に詰め込み、 休憩もそこそこに井出ノ小路山最高点の北側ピークに向かう。
山頂へと稜線を登る
樹木のない場所は笹が深い
 県境稜線の藪には何とはなしに踏み分けがあり、意外と楽に登っていける。 ただ、倒木に遮られると踏み分けが判らなくなり、背丈を超える酷い薮漕ぎになってしまう。 ふと気がつくとわたぼうの右足が異様に軽い…何と今度はアイゼンを薮に盗られている。 わたぼうは引き返してアイゼンを探し出し、両足共にザックに仕舞い込む。
 笹床の雪を踏み締めながら登っていくと、樹林の平坦地に出る。 ルートが判らずわたぼうがキョロキョロとしていると、樹木に打ち付けられた山頂標識を発見する。 折角苦労して辿り着いた山頂であるが、展望がない上に時間も切迫している。 わたぼうは束の間感慨に浸ってから写真を撮って山頂を後にする。
樹林の中の山頂標識
 下りは踏み分け道を外すことなく、あっと言う間に稜線鞍部に戻ってしまう。 余勢を駆って三角点峰を登り始めたわたぼうであるが、こちらは踏み分けも目印も皆無である。 今から三角点峰を往復すると相当時間が遅くなりそうで、日が短いこの時期に無理は禁物だろう。 わたぼうは最高点を極めたことに満足しきっていたため、三角点峰を割愛して下山することにする。
 凍結したカラ谷の下りには登りと同じくらい時間が掛かってしまう。 わたぼうはステッキの握りが落ちてないか目を凝らして下山するが、残念ながら笹薮の中に消えてしまったようだ。 わたぼうが林道に降り立ったのは15時を過ぎていて、既に日が傾きかけて空気が冷たくなっている。 復路は頑張って押し上げた自転車の登場で、登りで2時間近く要した林道も30分で登山口に戻ってしまう。 (でも手が凍えるぅ〜。)
 わたぼうは登頂成功のご褒美に、冷え切った身体を「倉屋温泉おんぽいの湯」でゆっくりと温める。 さあ、次は高樽山に挑戦だ。明日は平日だから渡合温泉に通じる林道のゲートは閉まっているだろう。 林道の移動距離が倍になるから早朝出発が必須である。わたぼうはゲートの少し手前の広場に車を止め、早めに眠る。
 高樽山へ続く…