黒沢山 2,123m

・日 時  平成18年5月21日(日)
20日  碧南 13:30 〜 19:00 奈良代林道ゲート
21日  林道ゲート 4:55 〜 6:15 シャウゾ山 〜 7:50 休憩 〜 9:15 黒沢山 10:15 〜
    12:25 シャウゾ山 12:40 〜 13:25 林道ゲート
≪登り 4時間20分、下り 3時間10分、行動時間 8時間30分≫
・山行記録
 4月に続いて5月も天候不順の日々が続き、漸く天気に恵まれそうな週末、わたぼうは懸案の黒沢山へと出かける。 黒沢山は南アルプス深南部、中ノ尾根山と不動岳の間に頭をもたげる深南部でもマイナーなピークである。 黒沢山へのルートは「新分県登山ガイド」に掲載されているが、 ネットの記録を見てもルートは藪が濃くて手強そうで、わたぼうの手に負えるか不安である。
 わたぼうは浜松I.Cから天竜川沿いにどんどん北上するが、平成の大合併によりどこまでいっても浜松市である。 天竜川や水窪川の流れは、昨夜のまとまった雨のせいで怒涛のごとく茶色い渦を巻いている。 水窪ダムまででも十分遠いのに、登山口までは、さらに未舗装の奈良代林道を延々と上って行かねばならない。 奈良代林道は以前より延長され、奈良代山の北鞍部、標高1600m近くまで上がることができるようである。
バイケイソウの群落を抜ける
奥布山辺りの登山道
 林道を走ること40分、終点はまだまだと思っていると、突然、チェーンゲートに突き当り先に進めなくなる。 予想外の展開にわたぼうは呆然とするが、ゲートの脇には登山ノート箱があり(この先には一般車両進入禁止の看板もあった。)、 最近はこのゲートが終点の模様である。わたぼうは諦めて広場に車を停めて車中泊とする。 標高1400m近くだから、明日200m余分に登らなければならない。

 翌日、4時に起床し、5時前には出発する。林道を歩いて行くと間もなく左手に大岩がある。 分県ガイドに紹介されていた昔の登山口である。わたぼうは大岩の前でキョロキョロするが登山口は見当たらない。 そのまま林道を登って行く。
シャウゾ山を過ぎるといきなり薮道に
朝露に濡れて大変
 ヘアピンカーブを曲がって暫くすると登山道を示す赤テープがある。 それも下の方にも登山道が延びており、やはりわたぼうは最初の取付き点を見落としてしまったようだ。 登山道を登って行くと更に2回林道を横切ってから、どんどん北の方角に向かっていってしまう。 どうやら林道終点は通らないようである。
 林床にバイケイソウが群生する雑木林を登って行く。テープ等目印が頻繁にあり、迷うことは無い。 次第に笹が現れるも、幅広く刈り込みされていてシャウゾ山までは難なく到着する。 左手に中央アルプスの山々が白く輝いている。
 シャウゾ山を過ぎると状況が一変し、胸丈ほどある笹が繁茂する道になる。 踏み跡はしっかりしていて、目印も沢山有るので迷うことはないが、 朝露が乗った笹漕ぎで下半身がずぶ濡れになるのには閉口する。
1810m峰近くの尾根北側の道を振返る
写真中央から右下に下っていく踏み跡
尾根のかなり下を通っている
 台地状になった尾根の北の端に出ると、酷い藪漕ぎからは開放される。 道は尾根台地の少し下の斜面に付けられており、下方は黒沢の谷間を望むことができる。 突如、後方でガサガサと笹を分ける気配がする。 わたぼうがギクッとして振返ると、単独行の登山者が追いすがってくるではないか。 今日の入山者はわたぼう独りだけだろうと思っていただけに意外に思うが、心強くもある。
 単独行氏の足は速く、間もなくわたぼうに追い付く。 わたぼうより年配者(と思う。)で、登山口を30分遅れで出発して追い付いてきた強者である。 わたぼうは単独行氏に道を譲るが、どうやら相手も道程が不安なようで、わたぼうと一緒に行動するようになる。
鞍部を過ぎて尾根が狭くなった辺り
尾根上を行く単独行氏
 道が尾根台地に上がると踏み跡が錯綜して不鮮明になるが、あくまで目印を追って先に進む。 最低鞍部を過ぎると狭くなった尾根上を歩くようになる。 右手に不動岳から黒法師山の稜線が見えるが、早くも東から雲が掛かり始めている。 再び尾根が広がってくると踏み跡が一層不鮮明になってくる。 目印もあちらこちらにあり、わたぼうも単独行氏も思い思い一番良さそうなルートを選んで歩いていく。
 わたぼうはなるべく尾根の北側(左側)を歩くように心掛けてきたが、 標高1900m辺りでテープマークはあるものの、胸丈の笹が繁茂して踏み跡が解らなくなる。 単独行氏はこのルートを嫌って尾根上に登って行ってしまう。 わたぼうは迷いつつも、テープマークのある方へ笹を漕いで強引に登っていく。
標高1900m辺りは胸丈の笹が繁茂
道も不明瞭でテープを忠実に追う
 行く手を塞ぐ倒木を避けつつ目印を追いかけていくと、笹の中に踏み跡が現れ、次第にはっきりとした道になってくる。 道は尾根の左から斜めに右にトラバースしながら登っていく。 わたぼうは単独行氏に道があるとコールするが、大分下の方でコールが返ってくるので苦戦しているようだ。 そのまま登って来ればこの道を横切るので多分気が付くだろう。わたぼうは持参の目印を幾つかぶら下げて先に進む。
 トラバース道は標高2000m辺りにくると左に折れて一直線に急斜面を登っていくようになる。 この辺りで不動岳方面の縦走路が分岐しているはずであるが、気が付くことなく通り過ぎる。 わたぼうは単独行氏のことが心配になってコールをするが返事が返って来ない。大丈夫だろうか…。
 急登を終えると突然尾根上に出る。黒沢山山頂から南に伸びる尾根のようだ。尾根を右の方向に登っていく。 笹が短くなり、バイカオウレン(と思う。)も咲いていて今までの苦労が報われるような場所である。 程なく黒沢山の頂はわたぼうの手に落ちる。 樹林越しに中ノ尾根山が見えるだけの山頂であるが、苦労した道程を思うと満足感はひとしおである。
笹丈が短い山頂直下の尾根道
 わたぼうはカップ麺を作りながら単独行氏を待つがなかなかやって来ない。 食後のコーヒータイムになって漸く単独行氏の姿が現れる。 バテバテの様子で単独行氏が山頂に着いたのは、わたぼうの到着から実に30分遅れである。 聞けば山頂尾根まで笹を漕いで来たとのこと。 トラバース道には気が付かなかったようで、あの急斜面を藪漕ぎしながら登ればバテるのも当然でしょう。
 単独行氏の体力が回復するのを待って一緒に下山を始める。 急斜面を下っていると別の単独行が登ってくるのに出会い、本日の入山者は3人目となる。 標高1850m辺りまでは大体道を覚えているから順調に下山するが、 この先尾根の右側(北側)を進むことを余りに意識しすぎたせいか、 2度ほど北斜面を下る獣道に誘い込まれて登り返すことになる。
静かな黒沢山山頂
 最低鞍部手前で疲れて休憩を取る単独行氏とお別れし、わたぼうは独りで先へ進む。 最低鞍部からは迷うことなく北斜面のトラバース道とシャウゾ山直下の笹漕ぎをクリアし、 わたぼうは超安全圏のシャウゾ山まで戻ってくる。
 雲が多いものの、好天のため気温が上がっている。 わたぼうは藪漕ぎのため頭以外肌を露出しないように衣類で覆っていたため、全身汗でベタベタになっている。 シャウゾ山山頂で堪らずに短パン、Tシャツの軽装になって下山する。
 帰りは登山道を歩き、林道をすべてショートカットする。 大岩下部の取付き点は、赤テープがぶら下がっているものの、 知らなければわたぼうのように通り過ぎてしまうような目立たない入口である。 朝出発してから8時間半、林道ゲートに戻って本日の山の劇場は幕を閉じる。