大唐松山 (おおからまつやま) 2,561m |
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・日 時 平成20年6月13日(金)〜15日(日)
13日 碧南 12:45 = 17:40 奈良田の里14日 奈良田の里 5:05 〜 5:30 登山口 〜 6:20 鉄塔 〜 7:20 アンテナ 〜 9:50 雨池山 〜 10:40 休憩 〜 12:15 標高2320mピーク 12:50 〜 13:55 大唐松山三角点 〜 14:00 最高点 〜 三角点 14:30 〜 15:15 標高2346m 〜 15:30 幕営地 ≪行動時間 10時間25分≫ 15日 幕営地 5:30 〜 6:50 雨池山 〜 7:50 休憩 〜 8:40 鉄塔 〜 9:00 登山口 9:55 〜 10:20 奈良田の里 = 16:30 碧南 ≪行動時間 4時間50分≫ ≪合計行動時間 15時間15分≫
・山行記録
大唐松山は農鳥岳から東に延びる尾根「大唐松尾根」上にあるピークで、登山道がないため非常に人跡稀のようだ。 ネットには日帰りの記録もあるが、わたぼうにはとても無理なのでテントを担いで行くことにする。 アイゼンの取捨に迷うが、無くて残念な思いをするといけないのでザックに詰め込む。 暑さ対策に水もたっぷり持ち、何時もながらの重たいザックの出来上がりである。 用意万端と思っていると、 数日前になって昨秋の飯豊縦走時に痛めた左足を再び痛めてしまう。 出発日までに痛みは無くなったものの、重い荷物を担いで登山中に再発しないかわたぼうは非常に不安になる。 その上、前日になって今度はお腹を壊して酷い下痢になってしまう。 出発当日には何とか治まったものの、後遺症でげっそり…最低の気分である。 体調は超最低だが、天気予報だけは止めるなとばかり絶好調に良くなっていく…。
不安と緊張からわたぼうは寝付きが悪いまま夜を過ごし、寝不足の朝を迎える。 痛めた足と下ったお腹に加え、寝不足疲労まで抱えて先行き不透明な旅立ちだ。 それでも予定どおり4時に起き出し、5時過ぎには歩き出す。林道ゲート横の登山口まで約30分、足慣らしに丁度良い距離である。 ゲート付近には夜の間に数台の車が停まっている。でも、大門沢を登る人ばかりなんだろうなぁ…。 ネットで見たとおり祠の横から鉄塔巡視路に入る。入口にはショッキングピンクのテープがぶら下がっている。 樹林の中の薄暗い道を進むと、これもネットで見たとおりパイプ手摺りがある山腹のジグザグ道になる。 まだ先は長い…わたぼうは体調を考えてゆっくりペースで登っていく。
いよいよ鉄塔からは道が無い領域だ。わたぼうは方位磁石を首にぶら下げ、目印用テープを握り締めて臨戦態勢を整える。 虫除けに防虫スプレーを振り掛けることも忘れない。先ずは踏み跡がある様な、ない様な尾根を登っていく。 ネットの情報どおり電線ケーブルとその鉄柱が尾根伝いにあり、暫くは不安と闘うわたぼうを導いてくれる。 間もなくわたぼうの目の前にとんでもない急登が現れる。 重荷を背負って尾根を直登するのは不可能に思え、 左手の斜面にある巻き道(獣道?)のようなそうでないような筋を辿って登るが、 落ちれば只事では済まされない恐過ぎの斜面である。 掴まるものが少なく、わたぼうは地面にへばり付き、冷や汗一杯で何とか登り切る。こんなの下れないよう…。
尾根が痩せ、枯れた笹薮が登場すると同時に、薮を縫うように尾根上に明瞭な踏み跡が現れる。 笹薮がアセビなどの潅木に変わっても踏み跡は健在だ。それでもわたぼうは急坂の出口には必ず目印を付けておく。 下山時に、平坦な小広い場所から急な斜面に変わる所は入口が判り難いことが多いためだ。 1542mの屈曲点は尾根が広がって特に要注意だ。 荷物が潅木に引っ掛かって行程が捗らず、変わり栄えがしない景色に嫌気が差した頃、漸く雨池山の三角点に到着する。 途中これといった目標物がないために非常に長く感じたし、実際、予定以上に時間が掛かっている。 このままのペースでは今日中に大唐松山を往復するのが難しくなるかもしれない…。
雨池山最高点から西の尾根は高木が一直線に刈り払われている。林業盛んなりし頃の名残であろうか…。 この刈り払いを進むと、今度は北に向けて一直線に斜面の高木が刈り払われている空間が直交する。 この空間を下ると、ちょうど短い笹原の雨池山北西鞍部に降り立つことができる。 鞍部にはワイヤロープや割れ瓶などの人工物が打ち捨てられている。新しい赤いスプレー缶の蓋も落ちている。 笹原の獣道を歩いていると、わたぼうは立木に赤いスプレーで目印が付けてあるのに気が付く。 落ちていた赤い蓋の正体に違いない。 スプレーの目印は適度な間隔で現れ、未熟なわたぼうには非常に助けとなるが、 熟達者なら道探しの面白みが薄れて迷惑に思うに違いない。
標高2000m辺りで二重山稜の尾根に達し、右側の尾根の左端を登っていく。 笹に代わって短い草付きの斜面になるが、標高2050m〜2100mの間は結構な急斜面だ。 重荷のわたぼうにとっては終盤の踏ん張りどころである。 左手の樹間からは、樹林に覆われた大唐松山のまあるい山頂がチラチラと覗くようになる。まだ高いなぁ…。 標高2250m辺りまで尾根の西端をほぼ忠実に登り、2270mの小ピークを越える。 2270mピーク北鞍部は平坦な幕営適地で、わたぼうは重荷を開放したい欲求に駆られるが、我慢してもうひと頑張りだ…。 待望の2320mピークに登り着けば、草付きの格好の幕営地がわたぼうを待っている。 鳳凰三山の展望も良く、頑張って担いできた甲斐があったようだ。
最低鞍部から露岩が目立つようになり、やせ細った急な尾根を登るようになる。 標高2400m前後は絶壁のような急斜面が登場し、踏み跡は右から巻いている。 わたぼうは巻き道に気付かずに正面に取り付いて怖い思いをするが、途中から右に回りこんで踏み跡に無事復帰する。 その後も急登続きだが、踏み跡を外さなければ問題ないだろう。 最後の斜面を右から回り込むように登れば、待ちに待った大唐松山三角点2555m峰だ!。 三角点と文字の消えた2つの山頂標識がわたぼうを出迎えてくれる。ネットで見た新しい山頂標識は消え失せてしまったようだ。 人跡稀な山頂に立つことができ、感激に浸るわたぼうである。
わたぼうは展望が利かない最高点から戻り、三角点峰との途中にあるハイマツの展望地で休憩する。 雪を戴いた北岳、間ノ岳、農鳥岳がドン!、ドン!、ド〜ン!という感じで圧倒的な存在感である。 こんな大迫力で白根三山を一度に眺められる場所は少ないだろうなぁ…。わたぼうは一服の絵画に暫し見惚れてしまう。 農鳥岳方面に背の高い雲が湧きあがっている。去り難い山頂ではあるが、わたぼうは雷が心配になり引き返すことにする。 寒気が入っているから今夜は雷雨に襲われるかもしれない。 急傾斜の尾根をわたぼうは慎重に戻るが、登りで外した急斜面の巻き道は帰りも外してしまう。
テントに戻ってからも天気が崩れる気配はなく、わたぼうはのんびりと外で食事を楽しむ。 持参の焼酎をチビチビ飲めば、酔いと疲れで18時前には沈没状態になる。 暗くなってからふと目覚めれば、鹿が物憂げに鳴いている。誰もいない野生動物の世界なんだ…。 翌朝は3時半に起床、5時出発を目指すが、荷造りの要領が悪くて5時半出発になってしまう。 上空も麓も雲が一杯の天気で、昨日見えていた滝ノ沢頭山(たきのさわあたまやま)も雲の中に納まっている。 わたぼうが荷造りをしていると、ガサガサ…と動物の気配が…。 物音の方角に視線を移すと、熊!…いや、人間でした(失礼!)。
薮山では下山の方が気を抜けない。 ただ、ペンキマークを始めとして目印が豊富なので、よっぽどうっかりしていなければコースアウトする心配はない。 注意すべきは標高2000m付近で尾根から左の斜面の下りに入る所で、意外に急角度でコースが曲がっているため、 正面に目印が見当たらなくなって一瞬焦る。 下りは登りの約半分の時間しか掛からず、登り時間との感覚のずれがあって、 あれっ!もうこんな場所?という違和感を幾度か感じる。雨池山三角点で小休止してから踏み跡が明瞭な尾根道を下っていく。 1542mは平坦でコースが右に曲がっていくため、要注意地点である。わたぼうは往きに付けた目印のお蔭で概ね順調な行程だ。
もう電線を辿って行けば道に迷うことは無く、人間世界への帰還は確実である。 ただ、わたぼうにとって最大の難所である急斜面がまだ控えているので油断は大敵だ。 わたぼうは往きと同じく尾根の右手にある獣道のようなそうでないような筋を下るが、登りより遥かに難しい。 支えとなる立木も少なく、斜面にへばりつくように下るも、思わず膝が震える。こ…恐過ぎるぅ〜!!。 わたぼうが死ぬ思いで下った斜面も、ロープがあれば下るのは容易だろう。 後は巡視路を下るだけで、わたぼうは無事に林道に戻って来る。 河原に下りて泥だらけの手と顔を洗えば人心地も就き、湿ったテントを虫干ししながら登山の余韻に暫し耽る…。 再び奈良田の里で入浴してから碧南まで一直線に帰っていく。 |