北海道登山 幌尻岳〜後方羊蹄山

・日 時  平成13年9月2日(日)〜5日(水)
・山行記録
・9月2日(日)
 碧南の自宅を5時半に出発し、9時半にはもう新千歳空港に到着している。 地を走って行けば遥か遠くの大地であろうが、天を駆ければあっという間という感じである。 空港で燃料と弁当を調達し、3人のメンバーがレンタカーで空港を出発したのが10時半。 まず向かうのは日高幌尻岳。今日はその麓の幌尻山荘までである。
 幌尻山荘までといっても、予定到着時間は日没過ぎの18時半である。 一刻も早く登山口に到着すべく高速道路のような国道をひた走る。 11時半には日高の平取町を通りすぎ、そのまま日高山脈の山懐に乗りこんでいった。
 「事件」が発生したのは、林道が未舗装になった直後であった。 金をケチったためにレンタカーの車高が低く、道にごろごろしている石がときどき車底にガン!とあったていたが、 レンタカーだから平気平気と走っていた。 ところが、しばらくすると空調機からガソリン臭がしてくるようになり、これはやばい!と車を止めて車底を覗いてみると、 こともあろにガソリンタンク付近から液体がぽたぽた垂れている。うわ〜。ガソリン漏れじゃ〜…
 危険を承知で一旦平取の町まで引き返し、レンタカー屋に連絡を取るが要領を得ず、時間ばかりが経過していく。 結局本日の予定は全部パーで、明日以降の予定も目処がたたなくなってしまったのであった。
 結局、レンタカーは代車をレッカー車で持ってきてもらい、事故車は引き取られていきました。さようなら〜。 レッカー代はサービスしてもらいましたが、保険対象の事故と認められず、営業補償と修理代を負担することに。。。 後日10万円超の請求書がやってまいりました。泣!!
 まあ、そのときはそんなことは考えず、丁度あった振内鉄道記念館併設の客車車両を改造したライダーハウスに泊り込み、 ビールを飲みのみ明日の登山支度をしたのでありました。

・9月3日(月)
 登山口5:20〜6:40取水口〜8:50幌尻山荘9:20〜12:20幌尻岳12:30〜 14:30幌尻山荘15:20〜17:00取水口17:10〜18:20登山口
 とりあえず今日は、幌尻岳を往復して幌尻山荘で泊まることにした。
 午前4時にライダーハウスを出発する。当然のごとくまだ真っ暗で、道端の原生林には鹿やきつねの目が光る。 昨日の今日なので、さすがに未舗装の林道になってからは心持ちスロースピードにするが、 それでもときどきガン!と石が飛び、その度にヒヤヒヤする。
 同じような景色の続く長〜い林道を走りぬけて、ようやく林道ゲートに到着した。もう夜は明けている。 5時20分にゲート出発。我々の外に登山者の姿はなく、熊よけに鈴をガラガラ鳴らしながら林道をひたすら歩いていけば、 1時間20分で林道終点に着いた。ここからは川沿いの登山道だ。熊の影におびえながら先頭を歩く。
 最初の渡渉地点に着いた。"エ!これ渡るの?"と思うほど流れは速く、深そうだ。 逡巡しているとちょうど下山してきた人がお尻まで濡らしながらジャブジャブと川を渡り出した。 渡り終えて何事もなかったように立ち去るその姿を見て、えい!ままよ!と水に入る。股下ぎりぎりの水かさだ。 渡ってしまえばこんなもんかという感じで、もう平気になっている。 調子付いて渡渉をしているうちに幌尻山荘に着いてしまった。 時間は8時50分で登山口からたっぷり3時間半かかっている。
 幌尻山荘は狭い。われわれは2階の一角を占領して幌尻岳往復に出かける。 サブザックだけだから身体が軽く、調子良く登ることができる。 尾根に出ると戸蔦別(トッタンベツ)岳のアルペン的な稜線が一望でき、一同「うわー」と息を呑むところである。 もうすでに戸蔦別岳から下山する人々の姿が見える。 命の泉で一息入れてから、さらにハイマツが張り出していて歩きにくい急な尾根を登る。 残念なことにこのころからガスが湧いてきて視界を妨げるようになってきた。
 北カール壁の一角にたどりつくとやっぱり幌尻岳は雲の中。う〜む残念。 しかし、見おろす北カールの湿原は北アルプスの高層湿原みたく広がり、足元は可憐な花々で飾られていて気分は最高だ。 なきうさぎの鳴き声だけがこだまするカール壁の尾根を登りきると頂上だ。 写真でよくみた「幌尻岳」の標識が静かに我々を迎えてくれた。
 12時20分、この時点で7時間経過していた。頂上は寒く、さっさと引き上げる。 帰りは往路を飛ばして2時間で幌尻山荘へ戻る。 時間も早いので下山しようか迷っていると、戸蔦別岳方面から中高年の大団体が下山してきた。 その途端、一同顔を見合わせ下山を決定したのであった。
 身支度を終えて山荘を出発したのが、15時20分。 渡渉を終え、林道終点に戻ったのが17時、さらにゲートまで歩いて車に戻ったのが18時20分になっていた。 さすがに谷間の日は暮れて薄暗くなっていた。朝ゲートを出発して実に13時間の行動であった。
 途中、車を止めて仰ぎ見た空には、満天の星空が輝いている。 懐かしのライダーハウス(今朝出たばかりなのに…)に戻ったのは20時になっていた。

・9月4日(火)
 登山口12:30〜13:20二合目半〜14:10四合目〜15:00六合目〜15:50八合目〜16:30羊蹄小屋
 さすがに身体が重い、軽い頭痛も感じる。とにかく昨日頑張ったおかげで、当初の予定どおり後方羊蹄山に登れそうだ。 まずは登山口の真狩村までひた走る。
 途中から雨が降り出すいやな天気だったが、真狩村に着く頃には晴れてしまった。 今回は天気には恵まれそうだ。後方羊蹄山が大きくそびえ立っているのが見えるが、残念ながら山頂部だけは雲の中である。 もう11時になっていたので、農場に囲まれた小さな街のなかを行ったり来たりしてやっと食堂を探し当て、昼食を済ます。
 今日は山頂の小屋までである。登山開始は12時30分。 樹林の中をゆっくりと登っていく(昨日渡渉でびびっていたひとりはつかつかと登っていってしまったが…)。 ザックの重みが肩にのしかかる。それでも1合目、2合目と快調に過ぎていくが、3合目がなかなか現れない。 結局3合目は今までの倍以上の距離があった。 4合目までもそれから30分かかっており、単純計算しても9合目にある山頂小屋までまだ2時間半もかかる計算だ。 5合目からはガスの中に突入し、もうひたすら黙々と登るばかりの世界になった。
 …(とてつもなく長く感じられた時間の経過)
 16時30分、計算どおりに小屋に到着。番犬の歓迎に逢う。割と大きな小屋に宿泊者が6人。 番犬の見守る(おねだりされる)中、食事の準備をする。夜は満天の星空で、明日も晴れそうだ。

・9月5日(水)
 羊蹄小屋5:30〜6:30後方羊蹄山6:40〜7:20羊蹄小屋8:30〜10:30登山口
 5時に起床、朝食は後にしてさっそく山頂に向う。期待にたがわぬ好天で、下の平野には影羊蹄が見事な三角すいを描いている。 下草の夜露に足元を濡らしながら、山頂の火口群の間をぬって左回りに進む。進むにつれて、麓の景色が移り変わっていく。
 1時間かかって6時半にようやく山頂にたどり着いた。 山頂からの景色も抜群で、洞爺湖がくっきりと見え、その向こうに有珠山の噴煙を望むことができる。 遠く大雪やおととい登った日高の山も雲に浮かんでいる。
 頂上南の岩稜を抜けて、小屋に戻ったのが7時20分。もう誰もいなくなっていた。 ゆっくりと朝食を済まし、小屋出発が8時30分。下りは超特急で10時30分には下山してしまった。 途中、何回もシマリスが顔を覗かせたのが北海道らしかった。
 真狩村で今登ったばかりの後方羊蹄山を望みながら温泉に浸かり、新千歳空港へ戻ったのであった。