奥穂高岳 (3190m)




奥穂22



先月の槍ヶ岳の余韻は強く残っているが、“槍に登れば、次は穂高も・・・”という気持ちになる。


『 来年まで待つ? 』


・・・と自問自答しつつも、辛抱のきかない自分・・・9月唯一の連休で登山を検討する。


山荘は混雑するに決まっているので、やはりテントということになる。


1日目に涸沢でテントを張れば、2日目は軽装備で奥穂をピストンできるが、

夕方のシャトルバスに間に合わせるには、コースタイムペースだと、

結構せわしない。


しんどいけど、1日目のテントを穂高岳山荘まで上げちゃえば、

奥穂高岳に加えて、2日目に涸沢岳も登るなど余裕ができる。


問題は穂高岳山荘はテント場が狭いので、せっかくテント背負って登ったのに、

設営できません・・・なんてことはない?・・・これでは泣くに泣けない。


そこでネットで調べたら、テント場が一杯の場合は、ヘリポートや山荘トイレ前など

(それもツライが・・・)使わせてくれるらしいので、頑張ってみることにした。




日時 : 2008年9月14〜15日


メンバー : M氏同行



【 行程 】


9月14日


上高地6:00 → 横尾8:30 → 10:50涸沢(昼食) → 穂高岳山荘テント場13:45

→ 奥穂高岳15:45


9月15日


穂高岳山荘テント場5:45 → 涸沢岳(3110m)6:00 → 穂高岳山荘7:20 → 涸沢8:50

→ 上高地13:50




《1日目》


上高地に入るには、沢渡か平湯温泉からシャトルバス(またはタクシー)になるが、

愛知から行く場合、平湯温泉から入る方が、距離も高速料金も少なくて済む。


難点は、休日の帰りの東海北陸道が、必ずといっていいほど渋滞するのと、

帰りの上高地からの最終バスが17:00と、沢渡より1時間早い点。


1日目に穂高岳山荘まで上がってしまえば、2日目の行程に余裕ができるので、

いくらトラブっても、17:00には間に合うと判断した。


平湯温泉あかんだな駐車場発のシャトルバス始発が、この日は5:20であることを

確認し、これに間に合わせるように深夜出発する。



6:00 上高地を出発。


この時点では、河童橋から望む穂高連峰は、雲に隠れて見えなかった。


梓川沿いをなだらかに歩いて横尾に着く。

ここは穂高と槍の分岐点だ。穂高に向かう人の方が、多いような気がする。




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前穂方面は、まだガスがかかっているが、青空が顔をのぞかせて、好天に向かいそう。


横尾から登山道になるが、まだ傾斜はなだらかで本谷橋へ9:30頃に着く。



奥穂02



ここまでで強く印象に残ったのは、まだ小さい子供を連れた家族が数組あったこと・・・。


どうみてもまだ小学生姉妹の家族連れ、まだ小学校低学年の父子(この子は奥穂登頂)、

いずれも登山慣れしている。


しんどそうではないのだ・・・驚くと同時に羨ましい思いがした。


圧巻は、まだ幼稚園〜小学校1年くらい(?)の女の子だ。


「こんにちは!」


・・・との笑顔が、メチャ可愛い。 

“屈託ない”というのは、あの笑顔を指すのだろう。

よく頑張るな〜。



涸沢へ向かうコースでは、本谷橋から30分くらいがきついところ。

そこを過ぎると傾斜はなだらかになり、やがて前方に奥穂と涸沢カールが

見えてくる。


そこでのエピソード・・・

前を行くオバサマ方の後ろについたところで、一人の方が・・・

「早いおにいさんたちが来てるので、道ゆずって下さ〜い!」


・・・だって。 

なになにっ・・・

“ おにいさん ?? ”

一瞬周囲を見回しちゃったよ。


中高年の登山ブームなんて言われるけど、下界では絶対に“おにいさん”なんて

呼ばれないもんな〜。 もう50歳台も視界に入ってるし・・・。


ここで一発、逆立ちでもしたら、“体操のおにいさん”なんて呼ばれるかしらん・・・アホ(^_^;)。



涸沢へは10:50に到着。



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ここで緊張感の一発目。


上空にヘリが来て、涸沢槍の稜線に向かう。

何らかの遭難があったようだ。

上空からロープで救出して岐阜方面へ飛び去っていった。

自分も注意しよう。




奥穂04



奥穂方面を望むと、天気は良好。

穂高岳山荘も見えるが、まだまだ遠い。


今日はあそこまで登って、できれば奥穂も登頂する予定だ。

ここからが正念場である。


ここまで予定より早く着いたので、大休憩とカロリー補給。

涸沢ヒュッテ前でカレーをいただく。

これ、結構美味しいのだ。



奥穂05



さて、こっから頑張るぞっ・・・と気合いを入れて、テント場から左に折れるコース

涸沢パノラマコースへと進む。


暫くはゆるやかに傾斜を登り、ザイテングラートの取り付き手前でまた休憩。



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ここからは、たびたび滑落事故のあるところで、傾斜も急になる。

クサリやハシゴもあるが、登りは危険という感じではない。

むしろここは“下り”で気を抜かないように、注意するところなのだろう。



奥穂07



このあたりで、緊張感の二発目。


涸沢岳方面の岩が、突然かなりの量で崩落しはじめた。

落石がきっかけだったかわからないが、涸沢カールに轟音がこだまする。


そして静寂・・・思わず息を呑んだ。


穂高では、結構あることなのかね?。


すぐ目の前に見える穂高岳山荘が、なかなか近づかなかったが、

やっとの思いで山荘に到着。 時刻は13:45。



何だか雰囲気がおかしい・・・緊張感の三発目。


山荘でテント受付しているときに、山荘の方が電話で救助要請している。

事故があったようだ。



山荘から涸沢岳側の所にテント場があるが、めぼしいところは設営済み。

ヘリポートの隅に何とかスペースを見つけて、テントを設営していると、

山荘の職員が、“これから救助ヘリが来るので、飛ばされそうなものは

しまって下さい”・・・とのこと。


ヘリポートは二つあって、テント場付近ではなく、山荘玄関前の方を

使うようだ。


奥穂08


暫くすると涸沢カール方面から、岐阜県警の救助ヘリが飛来し、ヘリポートに着陸して

遭難者の方を乗せて飛び去った。


山荘から奥穂にとりつく急斜面のハシゴで、落石の直撃をうけて落ちてしまったらしい。

落石なんて、実際よけることなんてできないもんな。

無事を願うしかない。



その後も急な斜面からは、ときおり女性の悲鳴が聞こえる。

渋滞した急斜面でバランスを崩すのだろう。


ここは槍の穂先のように、登りと下りが分かれているところがないので、

混雑している場合には、特に適切な譲り合いが求められる。


登りにとりつくときには、下ってくる人の数をみて、多い場合には落ち着くまで

登るのを待たないと、無理に登り始めるのは、お互いに危ないなと思った。



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山荘の混雑ぶりからして、明日の朝に奥穂に向かう人もかなり多そうだ。


何とか今日のうちに奥穂に登っておきたい。


まだ日没まで十分時間はあるので、テント場から登山者の様子をうかがい、

登るタイミングを待つ。



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15:00頃になって、混雑もひと段落したようなので、奥穂への登りにかかる。


最初のとりつきが急斜面で、ハシゴが二つとクサリ場がある。

そこを過ぎればひと安心・・・といきたいところだが、帰りにここを下ると思うと、

気は抜けない。


落石は受けたくないが、もっと大切なのは、自分が落石を起こさないことだ。



15:45 奥穂高岳山頂



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この祠の横に立つと、結構な高度感だ。


周囲に目を移すと・・・ジャンダルム。


うへ〜、稜線を歩いてる人がいるけど、怖いな〜。



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こちらは前穂方面。


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槍方面はガスで隠れていたが、一瞬のガスの切れ目に穂先も見えた。


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ひとしきり眺望を楽しんだのちに、下山にかかる。


穂高岳山荘が、真下に見えるくらい。


あかんぞ〜、落石は・・・自分にいいきかせる。



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何とか山荘前まで降りると、もう夕景の世界。


常念を夕陽が照らしている。



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穂高岳山荘の白出沢側に回って、笠ヶ岳方面へ沈む夕陽にしばし見惚れる。


一気に冷えてきたので山荘内に撤退、今回は夕食は山荘でいただいた。


日が暮れると、もう就寝タイムである。


十分に疲れてはいるが、そうそうは眠れないので、家族とメール交換する。

ドコモはバッチリ通信圏内だ。


娘たちの写メールに、心が和む。 ありがとうね。





《2日目》


周囲のテントでは、早くも3:00頃から動き出す気配がする・・・山の朝は早い。


それにしても寒い!。もう冬モードだ。

なかなかシュラフから出れない。


昨日、奥穂を登っておいたので、今日は涸沢岳のみで下山予定である。

時間は十分あるし・・・ゆっくりしよう。 


5:30頃に日の出。


奥穂が朝日に染まる。


“おおっ、みんなもう登ってる!。”



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涸沢岳へは、15分くらいで登れる。

西から吹く風が冷たい。



6:00 涸沢岳に着くと・・・槍ヶ岳



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うぉ〜、かっこいい!。 槍は登った後でも、憧れが続くね。


写真左に薬師岳、右に鹿島槍まで。



やはり山は朝である。

早朝から準備する人は、これを満喫しようと期待してるんだね。


しっかし “すんごい絶景” だ。


南に目をやると、前穂の向こうに富士山!。



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ありがとうございます!。



奥穂を望むと、登山道ルートがよくわかる。


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眺望を堪能した後に下山。


テントを撤収して、穂高岳山荘に入り、コーヒーをいただく。

至福のときである。



7:20 山荘を後にして下山。


ザイテングラートを、へっぴり腰で降りる。

我ながらへたくそ!・・・いつものことではある・・・(-_-;)。



今度は涸沢小屋方面へ向かう。


ナナカマドはまだ緑だが、斜面の草紅葉は昨日に比べても、1日でだいぶ進んだように

感じた。今年の燃える涸沢は去年より早そうなのかな?。


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涸沢小屋では、名物といわれるソフトクリームをいただく。



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味は濃厚。


最近、いつもこんなん食べちゃって・・・


おっかしいな〜、下界ではソフトクリームなんて、まず食べないけど、

山だから・・・ということで勘弁して下さい。 反省はしています・・・(^_^;)。




13:50 上高地へ帰還。 お疲れさまでした。


足は痛いし、膝はケタケタ笑いまくり。


河童橋付近は、観光客も含めて、ごった返している。

今日の穂高は稜線もくっきり見えていた。


“ あそこ登ったんだ” ・・・と思えるのは幸せである。



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河童食堂で豚汁定食をいただく。


これ大好きで、実は当初からの予定に入っていた。

これを入れるために、“2日目の行程に余裕を持たせた”といってもいいくらい・・・(^_^;)。


シャトルバスで平湯温泉に戻った後は、日帰り温泉 “ひらゆの森” へ直行。


これも当初からの予定に入っていた。

湯の花入りの露天風呂は極楽である。







奥穂高岳

実は親父が “若い頃に登った” という話を、以前に聞かされていた。

1泊2日で、初日に涸沢経由で穂高岳山荘に登り、翌日に奥穂から岳沢を

降りるコース・・・メチャメチャしんどかったと振り返っていた。


“ 親父、遅くなったけど俺も奥穂登ったよ。 メチャメチャきつかった。 ”



そんな報告を胸に、飛騨高山ラーメンも土産に実家へ・・・

そして家族のもとへ帰った。