奥穂高岳 (3190m)
先月の槍ヶ岳の余韻は強く残っているが、“槍に登れば、次は穂高も・・・”という気持ちになる。
『 来年まで待つ? 』
・・・と自問自答しつつも、辛抱のきかない自分・・・9月唯一の連休で登山を検討する。
山荘は混雑するに決まっているので、やはりテントということになる。
1日目に涸沢でテントを張れば、2日目は軽装備で奥穂をピストンできるが、
夕方のシャトルバスに間に合わせるには、コースタイムペースだと、
結構せわしない。
しんどいけど、1日目のテントを穂高岳山荘まで上げちゃえば、
奥穂高岳に加えて、2日目に涸沢岳も登るなど余裕ができる。
問題は穂高岳山荘はテント場が狭いので、せっかくテント背負って登ったのに、
設営できません・・・なんてことはない?・・・これでは泣くに泣けない。
そこでネットで調べたら、テント場が一杯の場合は、ヘリポートや山荘トイレ前など
(それもツライが・・・)使わせてくれるらしいので、頑張ってみることにした。
日時 : 2008年9月14〜15日
メンバー : M氏同行
【 行程 】
9月14日
上高地6:00 → 横尾8:30 → 10:50涸沢(昼食) → 穂高岳山荘テント場13:45
→ 奥穂高岳15:45
9月15日
穂高岳山荘テント場5:45 → 涸沢岳(3110m)6:00 → 穂高岳山荘7:20 → 涸沢8:50
→ 上高地13:50
《1日目》
上高地に入るには、沢渡か平湯温泉からシャトルバス(またはタクシー)になるが、
愛知から行く場合、平湯温泉から入る方が、距離も高速料金も少なくて済む。
難点は、休日の帰りの東海北陸道が、必ずといっていいほど渋滞するのと、
帰りの上高地からの最終バスが17:00と、沢渡より1時間早い点。
1日目に穂高岳山荘まで上がってしまえば、2日目の行程に余裕ができるので、
いくらトラブっても、17:00には間に合うと判断した。
平湯温泉あかんだな駐車場発のシャトルバス始発が、この日は5:20であることを
確認し、これに間に合わせるように深夜出発する。
6:00 上高地を出発。
この時点では、河童橋から望む穂高連峰は、雲に隠れて見えなかった。
梓川沿いをなだらかに歩いて横尾に着く。
ここは穂高と槍の分岐点だ。穂高に向かう人の方が、多いような気がする。
前穂方面は、まだガスがかかっているが、青空が顔をのぞかせて、好天に向かいそう。
横尾から登山道になるが、まだ傾斜はなだらかで本谷橋へ9:30頃に着く。
ここまでで強く印象に残ったのは、まだ小さい子供を連れた家族が数組あったこと・・・。
どうみてもまだ小学生姉妹の家族連れ、まだ小学校低学年の父子(この子は奥穂登頂)、
いずれも登山慣れしている。
しんどそうではないのだ・・・驚くと同時に羨ましい思いがした。
圧巻は、まだ幼稚園〜小学校1年くらい(?)の女の子だ。
「こんにちは!」
・・・との笑顔が、メチャ可愛い。
“屈託ない”というのは、あの笑顔を指すのだろう。
よく頑張るな〜。
涸沢へ向かうコースでは、本谷橋から30分くらいがきついところ。
そこを過ぎると傾斜はなだらかになり、やがて前方に奥穂と涸沢カールが
見えてくる。
そこでのエピソード・・・
前を行くオバサマ方の後ろについたところで、一人の方が・・・
「早いおにいさんたちが来てるので、道ゆずって下さ〜い!」
・・・だって。
なになにっ・・・
“ おにいさん ?? ”
一瞬周囲を見回しちゃったよ。
中高年の登山ブームなんて言われるけど、下界では絶対に“おにいさん”なんて
呼ばれないもんな〜。 もう50歳台も視界に入ってるし・・・。
ここで一発、逆立ちでもしたら、“体操のおにいさん”なんて呼ばれるかしらん・・・アホ(^_^;)。
涸沢へは10:50に到着。
ここで緊張感の一発目。
上空にヘリが来て、涸沢槍の稜線に向かう。
何らかの遭難があったようだ。
上空からロープで救出して岐阜方面へ飛び去っていった。
自分も注意しよう。
奥穂方面を望むと、天気は良好。
穂高岳山荘も見えるが、まだまだ遠い。
今日はあそこまで登って、できれば奥穂も登頂する予定だ。
ここからが正念場である。
ここまで予定より早く着いたので、大休憩とカロリー補給。
涸沢ヒュッテ前でカレーをいただく。
これ、結構美味しいのだ。
さて、こっから頑張るぞっ・・・と気合いを入れて、テント場から左に折れるコース
涸沢パノラマコースへと進む。
暫くはゆるやかに傾斜を登り、ザイテングラートの取り付き手前でまた休憩。
ここからは、たびたび滑落事故のあるところで、傾斜も急になる。
クサリやハシゴもあるが、登りは危険という感じではない。
むしろここは“下り”で気を抜かないように、注意するところなのだろう。
このあたりで、緊張感の二発目。
涸沢岳方面の岩が、突然かなりの量で崩落しはじめた。
落石がきっかけだったかわからないが、涸沢カールに轟音がこだまする。
そして静寂・・・思わず息を呑んだ。
穂高では、結構あることなのかね?。
すぐ目の前に見える穂高岳山荘が、なかなか近づかなかったが、
やっとの思いで山荘に到着。 時刻は13:45。
何だか雰囲気がおかしい・・・緊張感の三発目。
山荘でテント受付しているときに、山荘の方が電話で救助要請している。
事故があったようだ。
山荘から涸沢岳側の所にテント場があるが、めぼしいところは設営済み。
ヘリポートの隅に何とかスペースを見つけて、テントを設営していると、
山荘の職員が、“これから救助ヘリが来るので、飛ばされそうなものは
しまって下さい”・・・とのこと。
ヘリポートは二つあって、テント場付近ではなく、山荘玄関前の方を
使うようだ。
暫くすると涸沢カール方面から、岐阜県警の救助ヘリが飛来し、ヘリポートに着陸して
遭難者の方を乗せて飛び去った。
山荘から奥穂にとりつく急斜面のハシゴで、落石の直撃をうけて落ちてしまったらしい。
落石なんて、実際よけることなんてできないもんな。
無事を願うしかない。
その後も急な斜面からは、ときおり女性の悲鳴が聞こえる。
渋滞した急斜面でバランスを崩すのだろう。
ここは槍の穂先のように、登りと下りが分かれているところがないので、
混雑している場合には、特に適切な譲り合いが求められる。
登りにとりつくときには、下ってくる人の数をみて、多い場合には落ち着くまで
登るのを待たないと、無理に登り始めるのは、お互いに危ないなと思った。
山荘の混雑ぶりからして、明日の朝に奥穂に向かう人もかなり多そうだ。
何とか今日のうちに奥穂に登っておきたい。
まだ日没まで十分時間はあるので、テント場から登山者の様子をうかがい、
登るタイミングを待つ。
15:00頃になって、混雑もひと段落したようなので、奥穂への登りにかかる。
最初のとりつきが急斜面で、ハシゴが二つとクサリ場がある。
そこを過ぎればひと安心・・・といきたいところだが、帰りにここを下ると思うと、
気は抜けない。
落石は受けたくないが、もっと大切なのは、自分が落石を起こさないことだ。
15:45 奥穂高岳山頂
この祠の横に立つと、結構な高度感だ。
周囲に目を移すと・・・ジャンダルム。
うへ〜、稜線を歩いてる人がいるけど、怖いな〜。
こちらは前穂方面。
槍方面はガスで隠れていたが、一瞬のガスの切れ目に穂先も見えた。
ひとしきり眺望を楽しんだのちに、下山にかかる。
穂高岳山荘が、真下に見えるくらい。
あかんぞ〜、落石は・・・自分にいいきかせる。
何とか山荘前まで降りると、もう夕景の世界。
常念を夕陽が照らしている。
穂高岳山荘の白出沢側に回って、笠ヶ岳方面へ沈む夕陽にしばし見惚れる。
一気に冷えてきたので山荘内に撤退、今回は夕食は山荘でいただいた。
日が暮れると、もう就寝タイムである。
十分に疲れてはいるが、そうそうは眠れないので、家族とメール交換する。
ドコモはバッチリ通信圏内だ。
娘たちの写メールに、心が和む。 ありがとうね。
《2日目》
周囲のテントでは、早くも3:00頃から動き出す気配がする・・・山の朝は早い。
それにしても寒い!。もう冬モードだ。
なかなかシュラフから出れない。
昨日、奥穂を登っておいたので、今日は涸沢岳のみで下山予定である。
時間は十分あるし・・・ゆっくりしよう。
5:30頃に日の出。
奥穂が朝日に染まる。
“おおっ、みんなもう登ってる!。”
涸沢岳へは、15分くらいで登れる。
西から吹く風が冷たい。
6:00 涸沢岳に着くと・・・槍ヶ岳
うぉ〜、かっこいい!。 槍は登った後でも、憧れが続くね。
写真左に薬師岳、右に鹿島槍まで。
やはり山は朝である。
早朝から準備する人は、これを満喫しようと期待してるんだね。
しっかし “すんごい絶景” だ。
南に目をやると、前穂の向こうに富士山!。
ありがとうございます!。
奥穂を望むと、登山道ルートがよくわかる。
眺望を堪能した後に下山。
テントを撤収して、穂高岳山荘に入り、コーヒーをいただく。
至福のときである。
7:20 山荘を後にして下山。
ザイテングラートを、へっぴり腰で降りる。
我ながらへたくそ!・・・いつものことではある・・・(-_-;)。
今度は涸沢小屋方面へ向かう。
ナナカマドはまだ緑だが、斜面の草紅葉は昨日に比べても、1日でだいぶ進んだように
感じた。今年の燃える涸沢は去年より早そうなのかな?。
涸沢小屋では、名物といわれるソフトクリームをいただく。
味は濃厚。
最近、いつもこんなん食べちゃって・・・
おっかしいな〜、下界ではソフトクリームなんて、まず食べないけど、
山だから・・・ということで勘弁して下さい。 反省はしています・・・(^_^;)。
13:50 上高地へ帰還。 お疲れさまでした。
足は痛いし、膝はケタケタ笑いまくり。
河童橋付近は、観光客も含めて、ごった返している。
今日の穂高は稜線もくっきり見えていた。
“ あそこ登ったんだ” ・・・と思えるのは幸せである。
河童食堂で豚汁定食をいただく。
これ大好きで、実は当初からの予定に入っていた。
これを入れるために、“2日目の行程に余裕を持たせた”といってもいいくらい・・・(^_^;)。
シャトルバスで平湯温泉に戻った後は、日帰り温泉 “ひらゆの森” へ直行。
これも当初からの予定に入っていた。
湯の花入りの露天風呂は極楽である。
奥穂高岳
実は親父が “若い頃に登った” という話を、以前に聞かされていた。
1泊2日で、初日に涸沢経由で穂高岳山荘に登り、翌日に奥穂から岳沢を
降りるコース・・・メチャメチャしんどかったと振り返っていた。
“ 親父、遅くなったけど俺も奥穂登ったよ。 メチャメチャきつかった。 ”
そんな報告を胸に、飛騨高山ラーメンも土産に実家へ・・・
そして家族のもとへ帰った。