来談者中心療法(1)

・・・実はこれについて何か書くほど、私はまだこの理論を消化できていません。ただ、この療法を創始したカール・ロジャースという方は、「人間は自分の内に、自らが成長していくための力を持っている」という信念のようなものを持っていたような気がします。カウンセラーが、クライエントに対して、常に自己に素直な状態でクライエントのことばに肯定的な関心を持って向き合っていれば、そしてクライエントの世界に共感を持ち続けていたら、クライエントはやがて自分の持っている「生きる力」を徐々に引き出していけるのではないかと、彼は言っているように私には思われます。

この中でいつも難しいと感じるのが、「常に自分に素直な状態であること」です。それはつまり、自分の中にある怒りや絶望感、憎しみや劣等感、羨望・・・そんな、どちらかというと「認めたくない」感情をも、きちんと自分で受け入れていくことだと思います。目の前にいる相手に対して、例えばどうしようもなくイライラしたり、その人との関係を断ち切ってしまいたいと思うほどに激しい怒りを抱いたときに、「ああ、今私はこの人に対してどうしようもなくイライラしてたまらないなぁ」とか「この人のことなんてどうでもいいと思いたくなるくらい、腹が立って仕方ないなぁ」と自分の中で起きている感情を真直ぐに見つめ、認めることです。誰かを憎んだり、腹が立ってしょうがない時に、そんな自分の内面を素直に認めるということは、とてもとても難しいことです。でもそんな自分の感情をも丁寧に受け止めていくと、不思議なことに自分が安定してきます。すると、クライエントも次第に心が落ち着いてくるようなのです。

自分の感情を受け入れるというのはとても難しいことなのですが、これができるようになると、感情を抑圧するということが減ってくるような気がします。自分の中でどんな思いが働いているかを把握したうえで、「今その感情を出していいのかどうか」を自分で判断して決定しているのですから、無意識に気持ちを押さえ込むというのとは違ってくるような気がするのです。

そして、人は、気持ちの安定した相手と話すうちに、不思議と自分の気持ちも落ち着いてくるのです。相手が自分に対して嘘偽りなく真摯な態度で向き合ってくれるということは、とても安心できる体験になるようです。

そして、いくら自分が小さなことでくよくよ考えていたって、そんな小さなことを相手から丁寧に扱ってもらえると、嬉しくなります。「自分の気持ちに共感してくれる人がいる」と発見することは、人が生きていくうえで、とても貴重な体験となり、勇気を与えてくれる出来事なのです。

そうやって「何を言っても受け止めてくれる」という体験を積み重ねるうちに、人は自分の人生を自分の力でなんとか生きやすいように整え、歩いていこうと思い始めます。その日をじっと待つのが、この療法で言うところのカウンセラーの役割なのかもしれません。

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