意外に知られていない
金魚の冬越し。


 日本国内で無加温飼育されている観賞魚の代表と言えば「金魚」でしょう。
 「ヒーターが要らない」と言っても、寒い冬でも元気に泳ぎ回っているわけではなく、「冬眠」をする魚であることも、よく知られています。
 最近では、暖かい室内の水槽で飼育するケースが増えたせいか、「冬越し」の方法を知らない人が増えてきました。今の日本の住宅事情では、「金魚を屋外の池で飼う」なんて、かなりの贅沢な話になってしまいましたから、仕方の無いことかも知れません。

 しかし、本来、繁殖したり、プロポーションや色彩を仕上げる為には「冬眠」は欠かせない行事なのです。そこで、簡単に、冬越しの方法を紹介することにします。

 冬越しは、原則的に屋外で行ないます。室内でも可能ですが、環境調節が大変なのです。
 冬越しには、水深30cm〜50cmが必要です。あまり浅いと失敗します。ガラスの水槽でも可能ですが、「池」の方が温度変化が少ない分、うまく行きます。
 金魚の冬越しには「フィルター」は使えません。第1に、飼育水を「透明」にしてしまうと失敗しやすい事、第2に冬眠中の金魚はほとんど泳がないので、フィルターの水流は金魚の体力を奪うのです。

 冬越しの準備は、9月下旬〜10月の初旬には開始します。できれば、8月下旬から、冬越しの事を考えて飼育をしたいところです。
 朝夕、涼しくなりはじめたら、フィルターを使わずに「水換え」だけで水質を維持するような飼育方法に切り替えます。この時、一度に大量の水を換えずに、少しづつ頻繁に行なうのがコツです。これは、飼育水を「青水」に保つためです。「青水」は植物プランクトンが大量に繁殖することで、水が緑色見える状態のことです。水槽で飼っていると、この「青水」は鑑賞を妨げる邪魔者ですが、実は金魚には必要な微生物なのです。難しいのは「青水」の濃さでしょう。解りやすい方法としては、水深30cm程の水底に真っ白い「陶器のお皿」を置いて、水面上から見たときに「かすかに皿の輪郭が見える」程度、だと思ってください。水を換え過ぎたりして、飼育水が完全に透明になってしまい、「青水」にならない時は、どこかで「青水」を少しもらってきて種にしてください。

 このような飼育を続けて、10月下旬〜11月頃になると、水換えをして薄めた「青水」が元の濃さに回復しなくなります。これは、水温の低下とともに植物性プランクトンの活性が低下して増殖しなくなるからです。こうなったら、「冬越し」の準備完了で、もう水換えは必要ありません。その後、金魚がエサを食べなくなれば「冬越し」開始となります。
 金魚は「冬眠中」は、ほとんど世話をする必要はありません。蒸発等の理由で水量が減ったら、足してやるだけ充分です。最低限の栄養は植物プランクトンから得ていますし。この植物性プランクトンが、急激な水質の変化や水温の変化から金魚を守ってくれるのですから。

 年が明けて、水がぬるむ3月頃になると、冬眠していた金魚が、少しずつ活動を始めます。金魚が活動を始めたら、様子を見ながら少しづつエサを与えて行きましょう。ただ、すぐに水換えしないでください。水温が18℃前後で、金魚は産卵を始めます。産卵行動が見られるようになるまでは、「青水」の状態を維持してやってください。

 さて、金魚の冬越しのポイントが解ったでしょうか?
 要は、邪魔者だと思っていた「青水」が実は非常に重要だったと言うことです。
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