運命の、あの日。
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私が初めてその衝撃の事実を知ったのは4日後の28日だった。
我が家は父がスポーツ新聞を取っている。
私はスポーツ新聞を一通り見回してみる。そこで新聞の隅っこにかかれていた、小さなその記事のその単語が一瞬目に入った。「故・伊藤俊人」
・・・・・ん?
伊藤俊人?
イトウトシヒト?
故?
その刹那、私の頭の中で何かがヒラメク前に私は叫んでいた。
「うそぉぉぉ?!!!」
すると、私の真横にいた母が私のその声によっぽど驚いたのか、そして何ゆえ私がそんなに驚いた声を出したのか、それを確かめようと「どうしたの?」私の手から新聞を取り上げようとする。
私はそれを「五月蝿いっ」とはねのけ、さらにその小さな新聞記事を凝視する。
間違いだろう?
あの桑原技官の人じゃないだろう?
よく似た名前の人だろう?
同姓同名の別人だろう?
しかし私のキオクは「それ」が間違いなく「彼」の事だと確信している。
私は必死に、「それ」を否定したかった。
「ショムニ・ファイナル」の記事だった。
先日亡くなった伊藤俊人さんが出演する予定だった「ショムニ・F」の役の代役を立てないことに決めた、という発表だった。
恥ずかしながら、私はそのとき「野々村課長」の存在を知らなかった。
私は慌てて一週間に一回のメールチェックしかしなくなっていたPCの前に走り、ネットサーフィンを開始した。
―――悲しいことに、真実<ほんとう>の事実らしかった。
そして、彼の死を悼む声、声、声。
それを眺めながら、私の中にある「何か」が次第に朦朧としてぼやけていく。
そして・・・同時に私の胸にぽっかりと黒き穴が姿を現した。
別名、“ブラック・ホール”。
その中には何もない。
ただの、空っぽ。
涙も、言葉も、重力さえも其処に吸い込まれてゆく。
・・・唯一、抜け殻だけが、残っていた。
その抜け殻で、必死に考えていた。
何を私はこんなにショックを受けている?
赤の他人じゃないか。
あかの・・・
その刹那、私は思い出していた。
あの、6年前に初めて「彼」を認識した日のことを。
そしてそれは「特別」な出来事だったということを。
思い出して、いた。
そして私は図らずもふわふわとした水底から急浮上することになるのだ。
そして、ひさかたぶりの地上は息苦しさと直射日光にあふれていた。
そのまぶしさに目を細めながらも、必死で視ようとする。
現実に何が起こってしまったのか。そして私の身に何が起こってしまったのか。
結局、その日、答えは見つからなかった。
× その日にノートに綴った言葉のラレツを読む? ×
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