第45巻:スペイン狂詩曲、他スペイン関係曲集 お勧め度:C

何れも悪い曲ではないですが、大看板の「スペイン狂詩曲」以外は決め手にかけるように思います、のお勧め度Cです。ハワードの出来は安定していますが、少し「お手本調」が表に出すぎているようにも思います。

スペインのテーマによる大演奏会用幻想曲」(1845)は何故か生前発表されなかった大曲(19分弱)とのことです。冒頭がファンタンゴ、それからホタ、cachuca、の3つのテーマがある、と言われても私には正直な所・・・です。「スペイン狂詩曲」と共通になっているテーマがホタ、ということのようです。悪い曲ではないですが大した曲とも呼びにくいようです。

La romanesca」(1840、第1稿)はイ短調の物悲しいメインテーマ及びその変奏の中にハ長調の単純かつ元気いいエピソードが少し混じる構成。これまた悪い曲ではないですが、大した曲でもないです。トラック4の第2稿(1852)との違いは(例によって)よく分かりません。基本的には何れも変奏曲なんですから、違いがよく分からなくてもある程度仕方ないと思っています。第1稿は世界初録音です。

トラック3の「スペイン狂詩曲」(1863)はこのCDの大看板です。スペイン調という点ではこの1枚一貫していますが、冒頭からして格好よさが他の曲がぜんぜん違います。続く各エピソードも長すぎず、変化に富んでいます。ハワード曰く「その本質はまじめで高貴である」、確かにその2点でハンガリー狂詩曲集の各曲とは一線を画しているように思います。ハワードの演奏に対する感想は冒頭に書いたとおりです。

Feuille morte - Elegie d'apres Soriano」(1845)の原曲は Mariano Soriano Fuertes y Piqueras(1817-1880) の歌曲かアリア、らしいです。佳曲とは思いますが、ちょっとぐずぐずし過ぎていて、花が無い。

Rondeu fantastique」(1836)の原曲は Manuel Garcia(1775-1832)の曲ということです。とんでもなく難しい故に忘れられた曲ということですが、聴く分にはなかなか楽しい。もっとも”聴くには楽しい難曲”と言っても、規模なら同じになる「スケルツォとマーチ」(第28巻)のふてぶてしいまでの魅力と同列に語るにはちょっと無理があります。より単純なショーピースと思ってください。

 

46巻:答唱と交唱−個人的瞑想のための音楽 お勧め度:D

全57巻中、訳分からないことではNo.1の2枚組です。表タイトルは”MEDITATIONS”、裏をめくると、”Responsorien und Antiphonen S30(1860) Music for private meditation”となっています。一応裏面を訳した訳ですが、教会に全くなじみの無い者には、答唱も交唱もなんだか分かりません。

これは一体何なのだろう、と解説を眺めてもよくわかりません。これまで解説を適当に眺めては、いい加減なことを書いてきたわけですが、さっぱり分からないので辞書片手に何とかしようとしたのですが、やっぱり何ともなりません。リストの作曲(?)意図は分かっていない、とは書いてあります。plainchant=単旋律聖歌、はカトリック教会でのお祈りで用いられていて、これをリストは自分の宗教関係作品にしばしば取り込んでいるのだけれど、この2枚組はその単旋律聖歌をそのままピアノ曲にしたもの、のようです???。

S(サール)番号で30番というと、「宗教合唱曲」の範疇のはずですが、この2枚組、ピアノの音しか聞こえません。「十字架の道」(第8巻)では、ピアノ伴奏に歌が付けばS53a、同じ楽譜で歌を抜けばS514a、リスト自身の指示はオルガン伴奏/独奏含め4通りどれでも可、いう不思議なことになっていますが、このS30の場合どうなのか、わかりません。

私の語彙では、グレゴリオ聖歌みたいな、としか形容のしようのない旋律に、極めて素直な和声を付けただけ、の音楽がCD2枚、のべ109トラック、ひたすら淡々と続きます。大きく5ブロックにわかれていて、クリスマス、聖木曜日、聖金曜日、聖土曜日、the Office for the Dead(死者への勤め、でしょうか?)となっており、ここまでで98トラック、最後の11トラックはそのうちの11曲(?)に対する別案のようです。またブックレット中、4線譜でchantが紹介されていて、上記98トラックとの対応がつくようになっています。私にはこれ以上紹介のしようがありません。好むかと問われれば、断じて”否”です。

 

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