2.一般論としてのピアノ類選び

普段家庭で練習する楽器であっても、電子ピアノ(の大半)よりアコースティック(ハンマーで弦を打つ本物の)ピアノが、アップライトよりグランドが、グランドでもより大型の方が、望ましいのは言うまでもないこと、と思っています。問題はどこまでのものを妥協できるとするか、でしょう。

最重要ポイントはアクション=鍵盤の動きを音にするカラクリの部分=です。この作りが、タッチ=鍵盤を叩いた感触=を決めます。普段慣れているのとタッチが違う楽器だと、程度が軽くても疲れますし、弾けるはずのところが弾けない、ということも頻繁に発生します。これで一番苦しんでいるのは実は「ピアノのおけいこ」に通っている子供たちなのです。私が子供の頃にアップライトで練習した曲をピアノの先生宅のグランドピアノで弾くのでも違和感に気づいていました。家庭にあるのが電子ピアノの普及タイプだとしたら、グランドピアノを弾くだけでも大変だろうと想像します。これが原因で「ピアノのおけいこ」が嫌いになってしまうとしたら、きつい表現になりますが「安物買いの銭失い」に他なりません。

コンサートグランドピアノのアクションを基準に考えると、本物と呼べるのはグランドピアノのものだけで、アップライトピアノのものすら妥協の産物です。このアクション/タッチの問題に比べれば、音の良し悪しは小さい問題です。グランドピアノでアクション/タッチがある水準に達してから初めて議論の俎上に載せればいいと思っています。弱音ペダル(左のペダル)の構造の違いとか、ソステヌートペダル(グランドの真ん中のペダル)の有無など、さらに小さい問題です。

将来的にアコースティックピアノを弾く/弾かせることを少しでも期待しているなら、やむを得ず電子ピアノを選ぶとしても、アコースティックピアノと同構造の本格的アクションを持った機種、ヤマハならDUP−7、DUP−20、DGP−1、DGP−2XG、の何れか、カワイならHA−8、から選んでいただきたいと思います。アコースティックピアノと違う構造のアクションでは、各社色々腕によりをかけてもっともらしい名前を付けて宣伝していますが、結局は「まがいもの」です。これも価格相応にはなっていて、ざっと20万円以上なら結構いい線を行きますが、そこまで出すならもう一声、HA−8を選んでいただきたいと思います。

本格アクションの機種同士では、ヤマハのが同時発音数32となっているのが少し気になります。カワイの同時64音でも音がふっと消える局面を体験できてしまうのです。弾き比べて確かめたわけではありませんし同時発音数の意味がヤマハとカワイで違うかもしれません。それはともかく、この中では一番安いHA−8が良かろうと個人的には思っています。お金と置き場所に不自由しないならグランドピアノと同じアクション構造のDGP−1(別名グランタッチ)がさらにいいと思います。再生機能付きのDGP−2XGまでは要らないだろうと思います。

本格的アクションを持たない電子ピアノと、アコースティックのアップライトと、では比較にならないと考えていますが、HA−8とアップライトとの比較だと迷います。電子ピアノなら何時でも弾けますし、音は人工音とはいえ最高級のピアノの音から取ってますから、それなりにいい音です。タッチはグランドと比較したらどちらも妥協の産物です。個人的にはHA−8を推します。DGP−1とアコースティックアップライトだと価格的にも拮抗というか、安いアップライトよりDGP−1の方が高くなりますが、DGP−1を置ける場所があるなら、やはりDGP−1を個人的には推します。場所々々とこだわっていますが、あのオブジェを部屋の中に据えるには、かなりの勇気が要ると思います。

アップライトを選ぶのならどの型式がいいか?となると、これは正直分かりません。私の経験した範囲では、よその家庭に置かれているアップライトはどれも姉と私で弾き込んだ「P1B」に負けていましたから。外装の違いだけでなく、内部の仕上げとか耐久性とかでも価格差なりの違いがあるのだろうとは思いますが、どれが妥当かと言うと分かりません。個人的には安いのを選ぶと思います。安物であってもアップライトアクションであることには違いないと思うからです。これも故障しにくいという定評を信じて、ヤマハかカワイの中から選びます。

消音ピアノというのはあまり支持しません。あれが出たときは、「アコースティックピアノのアクションを生かして電子ピアノが出来る」ということが支持されていたけれど、HE−10やDGP−1等が出てその意味での値打ちが無くなってしまった、と思っています。なまじ生音を出せるとなるとヘッドフォン必須の消音モードに不満が出てしまうのではないでしょうか。消音モードと生音モードとでタッチの差が皆無ではないとなるとなおさらです。HA−8等でスピーカーの音量を調整して使う方がずっと抵抗感が無いのでは?と思います。

で、グランドピアノです。置いて鳴らすことが出来るのなら、グランドピアノに勝るものはありません。そして、先に述べた「自分の審美眼の限界」に照らして、「国産の3サイズ」のものが丁度良かろうと思っているわけです。小型グランドピアノだとヤマハ・カワイのレギュラー品はスタインウェイと比べて4分の1の値段で頑張っているのですから。ヤマハかカワイか、となると難しいですね。一般論としてはどちらも素晴らしいとしか言いようがないです。

グランドピアノの場合、アップライトにも増して音が大きくなるのが欠点とは言わないとしても問題にはなります。その対策としての「消音ピアノ」を支持しない私としては、カワイの「静音ピアノ」=「ピアノマスク」、とはどういうものだろうか、と思ったわけです。と、ここからカワイ試弾記へ続きます・・・

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