6.プロコフィエフのソナタ第7番第3楽章

 

2014年の初め頃にリストの曲を色々漁っていましたが、弾けない曲は死ぬまで弾けないというのを悟りました。で、しっとり系の編曲物を練習してyoutubeアップ一番乗りを秘かに狙ってる(だから曲名も秘密)のですが、しっとり系を毎日弾き続けると徐々に溜まるものがあり、ついに爆裂系のこの曲に手が出てしまいました。

*以下の項目は日付順ではありません。

・なれそめ

最初に聞いたのは、リヒテルのLPでした。多分高校生だったと思います。一番最初に聞いた20世紀音楽、だったかもしれません。1回目から好きになれた訳でもないような気もしますが、すぐに全楽章全て大好きになりました。第3楽章が7拍子だというのを確かめようとして指折り数えようとして、しかしテンポが速すぎてついていけなかった記憶があります。リヒテルのテンポはプロの録音の中では決して速い方ではないのですが。
その後、色々な演奏に触れ、それぞれに好きで、勿論リヒテルのも好きです。(14.12.21)

 

・素人で聞いたことが無い!

・・・ような気がするのです。第1楽章だけなら聞いています。その他では、1番、3番の全曲、6番の第1楽章、9番の1,2楽章(これは自分で弾いた)、までは素人で聞いているのですが、多分一番有名なこの第3楽章は冒頭の1ページ分しか聞いたことが無いような気がするのです。(14.12.21)

 

・練習から聞かされる小学生

・・・は珍しいのではないか、と思うのです。音大生がこの曲の譜読みをする時に付き合わされるのはご両親ということになりましょう。一流アマチュアでも・・・学生時代に少なからず周囲に居た一流アマチュアの誰もが弾かなかったのは不思議なのですが・・・譜読みするのは多分学生時代なのでしょう。それが、学生時代には冒頭一頁しかまともに譜読みしていなかったオッサンが家で練習を開始した結果、小学生に聞かせることになっています。それも7拍子を指折り数えられるテンポで。(14.12.21)

 

・微妙な家族受け

家族の前で、最初一頁分だけにしろ、それなりに本気に弾いたのは、スケ4の次の発表会向けの曲の物色中でしたから、約1年前だったと思います。第2楽章とセットなら10分切れるくらいで丁度いいかな、と思ったのですが、家内は「こんなうるさいのを聞き続けたくない」、次男は「低い方でバンバンやってるだけじゃない」と散々でした。長男だけが「ちょっと格好いいじゃない」と思っていたらしいのですが、口に出せなかったようです。
で、1年近く経ってから、ゆっくりとしたテンポで腰をすえて練習し始めたところで、家内が「ちょっとジャズっぽくて格好いいじゃない」というのを聞きつけた長男が「前はうるさいって言ってたじゃない」と素早く指摘していました。その長男は、まだ手の大きさが全然足りないのですが、最後の一行だけ弾こうとしています。家内によると「天気のいい日曜の朝にはこの曲が合うけれど、日が暮れたらしっとり系がいい」のだそうです。(15.01.11)

 

・少しだけ披露

先週に昔の仲間と東京で集まる機会があり、色々弾かしてもらった挙句、この曲も一応弾いてきました。ゆっくり弾くよ、と宣言していたのですが、弾き始めてすぐに「いくらなんでも遅すぎないか?!」と掛け声がかかったので仕方なく後の方では弾けなくなるテンポまで上げました。まあ、受けなかった方でしょう。
掛け声をかけた人は「俺が学生時代に暗譜していた数少ない曲の一つだから部室で弾かなかったはずはない」と言っていたのですが、しかし私には冒頭一頁くらいで切り上げられた記憶しかやっぱりないのです。
ゆっくり路線ならソコロフがお勧め、というので、帰ってからyoutubeで聞いてみました。4分ほぼジャスト、プロでは最も遅い部類でしょうが、そのテンポで悠々堂々として、これは目標にしていい演奏かと思いました。(15.02.15)

 

ここからは、演奏上の工夫です・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

・2+3+2?

リズムが取れなければテンポも定まらず、腰の据わった練習を始めるところまで行けない、というのは、スクリアービンの4番のところでもスケ4のところでも書いたとおりです。この曲の場合もリズムが取れるようになるのが、第一歩になりました。

さて、この楽章は2+3+2=7/8拍子ということになっています。本当にぃ?
楽章冒頭はこのようになっています。確かに2+3+2のリズムパターンが、Precipitato(イタリア語で”性急に”とのこと)の横に書いてありますが・・・

これ、私だけかもしれませんが、4+3、あるいは、2+2+3で数える方がずーーっと簡単です。1小節目は2+3+2で取れなくもないですが、5泊目の左手を強拍にする方が分かり良いですし、2小節目に至っては、右手の3つの途中で区切るなどと言うのは譜読み段階では到底無理というものです。

さて、この先18小節目までを第1主題と呼んでおきましょうか、さらにこの主題の前半が繰り返される25節目までの間は、奇数小節は第1小節と、偶数小節は第2小節と全く同じリズムが繰り返されます。4+3に読み替えることだけでリズムが取れるようになり譜読みが始められるようになり・・・この範囲までが学生時代に何とかできた範囲でした。続く26,27小節目はこうなっています。

ここまで2小節一組で進行してきたのに、その後半にあたる偶数小節で外されるのが、昔の私には一段と高いハードルになっていました。この箇所も結局は、多少の不自然は承知で4+3で取るようにして初めて弾けるようになりました。(27小節目の方は、弾けるようになった後では2+3+2で認識し直していますが、)

この先、第29〜31小節、第34〜35小節で同じように揺すぶられながらも、第1出題のリズム基調を維持しながら、第43、44小節に突入します。この2小節のリズムが楽章全体で私には一番取りにくいです。

これ、右手が全部叩きっぱなしなら、4+3にするのは余り難しくないのですが、何ともいやらしいところで上声を外すことになっていて、そのために4+3では私には取れなくなっています。仕方がないので、この2小節ひとかたまりで丸暗記して弾いていますが、45小節目の1泊目= ff が書かれている音=が頭の中では裏拍になってしまっています。

終わり近くの第165小節でも右手が似た音形になりますが、こちらはその2小節前から左手での2+3+2が確立しているので、そのまま弾けます。第43,44小節の左手は2+3+2では私には取れそうにありません。

第45小節から第1主題が三度目の開始をしかけてから間も無く、49小節目の6拍目から突然中間部に移行します。

この中間部は音形は色々に変わりますがリズムとしては”いかにも”の2+3+2で一貫していて、その通りに理解するしかないのですが、4+3より明らかに難しくなります。昔は弾き続けられなかったところ、今では出来るようになったのですが、どうやって克服したのか、自分でもよく分からないので、細かい説明もできません。

126小節目からの再現部は、冒頭と同じ4+3で取れるリズムパターンが維持され、163小節目から2+3+2に移行して最後の177小節目に至ります。再現部にはリズムの難しさはありません。でも、ここが一番難しいのです。(ここまで14.12.28)

 

・ポジション

基本的にポジションはシンプルで、上段は右手、下段は左手、でいいです。私は35小節目と38小節目で下段の音を右手で取っていますが小さい問題でしょう。もう少し大きい問題が2つありまして、その一つがこちら。

譜例は56小節目と57小節目で、似た音形がもう2回、計3回出てきます。57小節目では右手を広げている幅の中で左手がスタッカーティシモを弾かねばなりません。これ、譜読み段階では左手を右手の下(というか中)で弾いていたのですが、スピードを上げていくと、左手が右手の掌に衝突してどちらの手も乱れます。一方、youtubeで見た範囲のプロは皆左手が上から右手の隙間をついて弾いています。で、私もそれに倣おうとしているのですが、右手の5拍目の下の音(57小節だとFes)を2の指で取ることにしたせいか、特にこの57小節目で上からの隙間が狭くなっていて、まだ移行し切れていません。が、何とかして移行しないといけないのでしょう。

もう一つ、再現部の跳躍をどう取るか、です。

146小節目を先頭に6箇所、上のCisの音を右手で取れ、との指示(譜例のm.d.、私が持っているMCAの楽譜でも表記は違いますが同じ意味の指示)があります。これが作曲者の指示なのか校訂者の親切(おせっかい?)なのかは存じません。指示通りだと両手とも微妙に忙しくなります。左手で取ってしまうと、高速での幅の広い跳躍にはなります。youtubeでプロの演奏を見てみると、どちらもありました。うんと速い人は右手なのでしょうか。私は指示どおりから始めましたが、すぐに左手に変えました。この方が頭の中がラクと思えた、のが主な理由ですが、ベートーヴェンの「ハンマークラヴィ−ア」の冒頭でもそうですが、左手オクターブの高速大跳躍を敢えて採用すると独特の凄みが出てくる、とも思っているのです。(ここまで15.01.06)

 

・メトロノーム

順番としては、まず全177小節の7拍子をそれなりに取れること、が最初に来ます。
で、譜読みができるようになって、7拍子を保ったまま最後までゆっくり弾けるようになる、その頃までには一見クラスターに近く見える和音も意外と種類が少ないことも分かる、という段階が来ます。
楽譜を見てどのパターンの和音なのか、記憶の中から選んで弾ける位になると、メトロノームを付けて弾けるようになります。

一番最初には 8分音符=100 で付けてみましたが、幾らなんでもこれは遅すぎたので、事実上のスタートは120になりました。これでも、プロの演奏が3分台に集中しているところ10分を超える、という観点では、猛烈に遅いとも言えますが、7拍子から呪術的怪しさがにじみ出てきて、これはこれで音楽になります。その後速くしたり遅くしたりを繰り返しながら、最近は遅い方で140、速い方で210で弾いています。

180辺りまで来ると、それなりに速いので、Precipitato(イタリア語で”性急に”)に当てはまらなくもないような気もするのですが、これでようやく7分を切った所、平均的プロの半分の速さということになります。将来的には平均的プロ並とは言わないまでも、それに準じる速さ、まあ300位にしたくなるのかな、と思っているのです(これでも4分を超える計算です)が、手持ちの電子式メトロノームの上限は250なのです。

メトロノームの下限は30なので、8分音符=210 を 1小節=30 に読み替えることで、速い方は対応できるはず・・・なのですが、これはかなり難しいです。1小節=30 は一度試してみましたが、8分音符=210とは全然違う難しさでした。250で弾けるようになるまでは、8分音符で合わせて、そこまで出来たら、その時にあらためて1小節で合わせる練習に取り組むことにします。(ここまで15.01.18)

 

・2015年8月近況

子供に行かせているピアノ教室の発表会が12月20日に決まりました。今回も弾かせてもらうのですが、大分時間が押してくるので、6分以内の曲で、と言われています。そうなると、この曲も候補には入るのですが、筆頭候補の、バッハ=ラフマニノフ「無伴奏ヴァイオリンパルティータ第3番よりプレリュード」が最後まで行くでしょうから、今回は出番なしだと思います。それはともかく、
春の「東海自然歩道歩き」の季節でも、この曲は少しずつでも練習していましたが、その間に上のほうで書いたことを色々覆しています。

最近はリズムを一貫して2+3+2で取っています(一部怪しいですが)。7拍子が数えられるようになるまでは主部だけでも4+3で取った方が楽、という意見は引っ込めませんが、一旦取れるようになってから数え方を変えることはそんなに難しいことではありません。最初から最後まで同じ数え方にした方がテンポを一定に保ちやすくなる、とも考えています。

再現部の跳躍も、テンポを上げるのに障害になってきたので、上のCisを右手で取り始めました。まだ時々左手を飛ばしてしまいますけど。

メトロノームは、まだ250までも行けませんが、それはともかく、1拍を分割する機能があることに気づきました。2拍で割れば、ピッピッの音が2種類交互に鳴りますが、これなら十分使えます。これで500までカバーできることになります。勿論この楽章ではそんな高速は不要です。8分音符=300 を目標にしたいと考えています。(ここまで15.08.02)

 

 

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