愛知県碧南市 貝塚ある「入海神社」 知多新四国8番札所「傳宗院」を訪れる

旅する大浜街道

第19回 入海神社と傳宗院

貝塚でた入海神社の場所 弘法さん参りの宿と参道には葡萄の傳宗院

入海神社拝殿で拝む人

<鬱蒼と緑生い茂る階段を行けば、「夜啼き石」の水鉢。緒川城にて夜ごと犬の遠吠えを発した怪異も、寛延2年(1749)に水鉢として入海神社に奉納された以後は静かになる。拝殿には切に願う参拝者。境内は国指定史跡「入海貝塚」があり、歴史在る土地であったことを物語る> 緒川の台地端を抜けていく街道を北上する。尾張藩の漢学者「永井星渚」の墓がある「了願寺」を高台に見、さらに先を行くと赤い欄干と御神燈が見えてくる。 遠い昔、弟橘媛命の櫛が紅葉川に流れ着いたことから、御神体として祀ったという「入海神社」である。 鬱蒼とする参道階段を行くと、右手に奇妙な水鉢。近くにある立て札には「夜なき石 この石当里にあり怪異伝わりて取る者無し 神に奉りて水鉢となす 一七四九年」と記されていた。 もとは緒川城に在り、夜になると犬の遠吠えに似た音を発したという。 見渡せる神社境内に入れば、静かだけれども人の賑わい。参拝する人々がポツリポツリとやって来る。 拝殿前で皆真剣に手を合わせ、じっと拝む姿。入海神社の境内からは縄文初期の「入海貝塚」があり、土器や人骨が出土したとある。 遙か遠い昔より、人の営む地で在ったことが伺える。そんな場所に祀られる神様、きっと素晴らしい御利益を与えてくれるのだろう。

<「新四国8番札所」として白装束の巡礼者が集う曹洞宗「上世山・傳宗院」。昔は弘法宿が門前に存在した。33年毎に開帳される十一面観世音菩薩が安置される弘法堂。見応えある堂内と心地良い靴音。見知らぬ私に差し出された「一房の葡萄」は、緒川の人情を暖かく伝えてきた> 入海神社をあとにし、さらに街道を北上すると道端に小さな石標が現れた。示す方向を振り向けば、「新四国第8番弘法大師 西国二十九番観世音」と刻まれた新たな石標。 街道から外れて石標の示す方角へ足を運ぶ。緩やかな坂道を行けば、タマネギのぶら下がる軒先を見つける。 日焼けた簾の奥では自家製野菜や果物を売る光景もあり、のどかな生活の営みを垣間見せる。 視界が開けてくると、白装束に笠を被る巡礼姿の人々が目に留まる。「新四国第8番札所」である「傳宗院」に到着した。 先客である巡礼者のあとについて本堂東の「弘法堂(観音堂)」に参拝する。多くの参拝者を物語るように御札や供物で賑やかな堂内。 天井に目を向ければ、格子に人頭鳥身の姿、極楽浄土に棲む鳥で美しい声を持つとされる「迦陵頻伽(かりょうびんが)」が描かれているではないか。 コツコツとした靴音を響かせる堂内の心地良さ、懐古主義的な仏教好きには堪らない弘法堂につい長居してしまう。 外の観音さんをお世話していた老婆が私に近づいてくる。「これ、あげるわ、食べて」と、懐かしい藁半紙に包まれた一房の葡萄を差し出す。 緒川を含む東浦は、葡萄の名産地。緒川の優しい人情に心暖かくなる。

ヘボト自画像ヘボトの”ここもぜひ見ておきましょう”コーナー

「緒川を旅する人」 入海神社から傳宗院のある一帯は旧家が多く、懐かしい黒板塀の民家を見ることが出来ます。 軒の間に通る路地も実に狭く、クルマの往来も少ないために安心して散策を楽しめます。 たとえ道に迷おうとも、緒川の人々は温かい人情の持ち主ばかりで、優しく道を教えてくれる。 街道を旅した時代の緩やかな時間が未だ存在する雰囲気に、つい長居してしまう心地良さ。お勧めです。

二宮金次郎さんの陰知っていると便利、勉強しましょう!

傳宗院 天文年間(1532~1555)に「松隠珠厳」を開山として、水野対馬守与次右衛門によって創建された。 曹洞宗、本尊は延命地蔵菩薩。知多四国8番札所として多くの参拝者が訪れる。

次回予告です、お楽しみに!

大浜街道沿いに蓮華経庵

第20回 「岡田川のちいさな橋」

「傳宗院」へ至る参道から大浜街道へと戻り、街道巡りの旅を再び始める。進む度に大浜街道は離合の困難な程に幅員の狭い道へと姿を変える。心落ち着かせるせせらぎの音が聞こえてきた。 小ガモが親ガモの後を水面を撫でるように泳ぐ光景に目を細める。のどかな雰囲気の「岡田川」だ。 大浜街道は、岡田川としばらく平行して進んでいく。 緑の間から蓮華経庵という尼寺が見えた。美しい本堂のシルエットは、往昔の山里を思わせる情景をつくる。喧噪とはかけ離れた世界に、人の心も和むのか、話しかけてくる人がいた。やさしそうなお婆ちゃんである。 ■ 第20回 「岡田川のちいさな橋」 へ

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